F1第2戦・中国GPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 ICE(内燃機関エンジン)が発する振動は、それ単体では昨年までのICEと比べても大きいわけではない。アストンマーティンのダミーモノコックとギアボックスにつなげたVTT(ベンチテスト)でも問題となるレベルの振動はない。

 ところが、そこにすべてのパーツが装着され、実際にコースを走ると、振動が増幅されてしまう。

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 最初にICEとモノコック直結のバッテリーにダメージが及び、ドライバーも振動を訴えた。信頼性を確保するために「バッテリーへの振動対策」は急いで対策が講じられ、一定の成果を上げた。中国GPでも週末を通して発生したのは、決勝のランス・ストロールの電源トラブルだけだ(現時点で原因は解析中)。

 しかし、車体側の振動を軽減するための対策は行なっていないのだから、依然としてドライバーたちが振動問題に苦しめられるのは当然のことだ。

 ICE自体の振動を抑えるといっても限度があり、前述のとおりそれ自体はもともと通常レベルのものでしかないからだ。もし本当に完走できないほどコクピットの振動がひどいのなら、ICE側の対策に期待しているだけでは根本的解決に至りようがないのは自明だ。

「(アストンマーティンとホンダで)協力して改善作業を進めている。今の問題を抑えるための最適な対策が何なのかという議論を交わし、ともに改善作業を進めているよ。理想を言えば根本から改善することが理想だが、ホンダとともに進めているのは、限られた時間のなかで何ができるかということだ」

 マイク・クラックCTO(チーフトラックサイドオフィサー)はそう語る。

 ただ、車体側としても重量増などのデメリットを考えれば、モノコックやバルクヘッド・マウント部、ギアボックスケーシングなどの増強に消極的になるのも確かだろう。HRC Sakuraでは新たな対策案も見つかっているといい、次の日本GPにそれが投入され、パワーユニット側だけでなく車体側にも好影響をもたらすことを期待したい。

【振動問題が改善できたとしても...】

 その一方で、中国GPで明らかになった懸念が「パフォーマンス面」だ。

 週末を通してトラブルフリーで走ることができたものの、中団グループとの差は縮まらず、中団からこぼれたウイリアムズとさえ0.8秒差。そして後方のキャデラックが0.2秒差まで迫り、ストロールは逆転されてしまった。

「トラブルなく走行できて、やりたかったプログラム自体はすべてこなすことができた。新品ソフトタイヤを3セット使って最適化を進めて、マシンの性能をすべて引き出すこともできたと思う。ただ、単純にパフォーマンスが足りていないだけだ。これがパワーユニットではなく、車体の最大限のポテンシャルだ」(アロンソ)

「マシンバランスに苦しんでいて、アンダーステアとリアのロックアップでマシン挙動が予測できない状態だった。パワーユニットやマシンが抱えている問題の改善を進めていかなければならない。どうすれば改善できるのか、これからデータを分析する必要がある」(ストロール)

 振動問題でセットアップ面の妥協を強いられる部分はわずかにあるものの、それが大きくパフォーマンスを毀損(きそん)しているわけではないとクラックCTOは語る。

「これまでのところ振動は主に信頼性に影響を及ぼしていて、いくつかの点で振動を抑える必要はあるが、ラップタイムを1秒単位でロスするような影響があるわけではない。振動のせいでいくつかセッティング面でコンサバティブにならざるを得ない部分もあったりするが、それがパフォーマンスを大幅に損なうようなことはない。

 もちろん、今後もさらに改善を続けて、パッケージ全体の信頼性をさらに向上させていく必要はある。

だが、それと同時にパフォーマンスを向上させていく必要もある」

 振動でリタイアしたのは、そもそもパフォーマンスが足りていないからだ。振動が改善できても、そこが改善できなければ意味がない。だが、その改善には時間がかかる。

 トラブルなく走れるようになったからこそ、徐々に問題の本質が見え始めてきた。アストンマーティン・ホンダの長いトンネルは、まだ始まってもいなかった。

 長いトンネルは、ここからだ。

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