【不意に舞い込んだ契約選手としてのオファー】

 世界最高峰のバレーボールリーグ、イタリア・セリエAのミラノは、2020-21~2023-24シーズンに石川祐希が在籍していた。さらに、2023-24シーズンには練習生として麻野堅斗(現・早稲田大学3年)が参加し、2024-25シーズンからは大塚達宣がプレーするなど、日本代表に名を連ねる面々にとって馴染みのあるクラブだ。

 そして2025-26シーズンは、また新たに日本人選手が加わった。専修大学1年のマサジェディ翔蓮(かれん)である。

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 父は、男子日本代表でコーチを務めた経歴を持つアーマツ・マサジェディ氏。息子のマサジェディ翔蓮は、学生時代から大型アタッカーとして名を馳せ(現在の身長は205cm)、昨年の「2025男子U19世界選手権大会」では男子U19日本代表のキャプテンを担った。

 大学進学にあたって、海外リーグに参加すること自体は視野にあったそうだが、今回は契約選手、つまり登録メンバー入りを果たして公式戦に出場するというものだった。本人は振り返る。

「まったく想像もしていませんでした。当初は、練習生のような形でチームに加わると聞いていたんです。ですが、ミラノにケガ人が相次ぎ、チーム内練習もままならないということで、急きょ契約選手としてでも加入してほしいという話になったようです」

 話が決まったのは、昨年末の全日本インカレが終わってから1週間後で、「イタリア行きの気持ちを作る余裕もなかった」と笑うほど。そうしてチームに合流するや否や、さっそく実戦形式のメニューに参加した。

「すぐにBチームに入ることになり、『大丈夫かな......』と不安を覚えながら練習を始めました。Aチームには大塚選手がいましたが、しっかりと集中してもらいたかったですし、そうやすやすと聞きにいける状況でもなかったです。

 最初にびっくりしたのは、海外選手たちの感情表現です。初めて参加したゲーム形式の練習で、僕がブロックで空けたコースを抜けたボールを、後衛にいたリベロが正面で捕ることができず、ひとりで叫んでいたんです。あとから聞くと、それはミスをした時に気持ちを切り替えるためのアンガーコントロールのようなもので、海外選手たちにとっては日常茶飯事。ですが、そんなこととはわからなかったので、『今のは自分が悪かったのかな......』とドギマギしました」

【大塚の支えもあって環境に適応】

 会話も、英語は「日常生活程度なら大丈夫」だが、イタリア語はまるで初めて。チームメイトがどんな性格なのかを知るのも苦労した。それでも練習を重ねていくうちに、コミュニケーションの問題も次第に解消された。

「最初は周りの感情表現を前に、自分の思うようなプレーを発揮することができませんでした。ですが、ひとりひとりの人柄を理解していくと同時に、チームの決まりごとのなかでどういうミスをしたら自分の責任になるかもつかめた。今はもう、この環境にも慣れてきました」

 レギュラーシーズンも大詰めを迎えた2月中旬、背番号「6」をつけたマサジェディはそう語った。そういった環境への適応という点で、やはり大塚という日本人チームメイトの存在は精神的にもプラスに働いたという。

「ミラノと聞いて、『大塚選手がいるな』と思ったのは事実です。自分も手助けもしてもらえるし、同じ日本人選手として、僕も少しでも心の支えになれたらと思いました。大塚選手からも『翔蓮がいるおかげで、日本語が話せるから頼もしい』と言ってもらい、うれしかったです」

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チームメイトである大塚(左)も大きな支えに

 マサジェディが合流した時期、大塚は腹筋を痛め戦線を離脱していた。

そこで大塚はマサジェディに対して、「言葉はもちろん、コート内外でのチームのルールや若手の仕事などをまずはアドバイスできればと考えていました」という。しかし同時に、あえて距離をとることもあった。大塚はその意図をこう明かす。

「やはり彼自身の口で、英語やイタリア語を使ってチームメイトとコミュニケーションをとってほしいんです。初めはミーティングの内容や練習メニューなどもひとつひとつ説明していましたが、自分が話す割合をどんどん減らして、翔蓮のなかで理解できるようになってほしかった。それは本人にも伝えていました」

 大塚自身も単身でイタリアに渡り、通訳やオンラインレッスンなどを介さずに言語の習得に勤しんだからこそ、今がある。もっとも大塚は、「イタリア語から日本語に直して説明することも自分のなかで新しい学び、勉強になっています」と、どこか誇らしげでもあった。

【アウトサイドヒッターへのこだわり】

 そしてコミュニケーションだけでなく、マサジェディにとって大塚の存在はプレーヤーとしてもお手本になった。

「大塚選手のプレーを盗めるかな、とミラノに来ましたが、間近で見るとディグ(スパイクレシーブ)がものすごい。『そこに位置取るんだ』と思う場面が何度もあります。やはり日本が世界と戦う上で、ディグやサーブレシーブといった守備面はとても大事になってきますし、自分がシニアの日本代表に選ばれたいと願うのであれば、そこは欠かせません。実際に大塚選手のプレーから盗んで、自分も徐々に結果が出ているのでとてもありがたいです」

 日本人選手のなかでは比較的大柄な体格なだけに、代表に入った場合もオポジットに就くことは十分に考えられる。

それでも、マサジェディ本人はこう言う。

「日本代表に選ばれたい思いを持っている以上、アウトサイドヒッターで勝負したいと考えています。確かにSNS上では『マサジェディはオポジットだ』『レフト(アウトサイドヒッター)は厳しい』といった意見を目にしますが、そこは自分の人生ですから。全日本インカレでは4年生同士がエース対角を組んだので、自分がオポジットに回りましたが、今後はずっとアウトサイドヒッターでプレーしたい思いがあります」

 今回、初めて海外のリーグに身を投じてマサジェディが感じたのは、自分のサイズですら、世界のアウトサイドヒッターとしては"標準装備"だということ。

「みんな体が大きくてもサーブレシーブができるし、ジャンプも高いし、しっかりと打つことができる。『やはり世界は違うんだな』と衝撃を受けました。

 ミラノでは当初、アウトサイドヒッターかオポジットのどちらかで起用されるという話でしたが、今はアウトサイドヒッターに専念しています。サーブレシーブも頑張っていますし、セッターのフェルナンド・クレリング選手(ブラジル)のトスがいいのか、スパイクのクオリティも上がってきました。

 それに、アウトサイドヒッターでは大塚選手だけでなく、フランチェスコ・レチネ選手やトンマーゾ・イキーノ選手(ともにイタリア)から盗みたいポイントがたくさん。ハイボール(二段トス)の打ち方もよくなってきたと感じています。それは日本に帰ってからも実践したい。大学ではハイボールを託してもらえるような、その上でしっかり決められるエースになりたいです」

 異国の地で得た学びを胸に、今春から大学生活2年目が始まる。

将来の日本代表入りへの思いを強くさせながら、その歩みを止めることはない。

【プロフィール】

マサジェディ翔蓮(まさじぇでぃ・かれん)

2007年1月28日生まれ、長野県出身。専修大学1年生。身長205㎝。アウトサイドヒッター、オポジット。元男子日本代表コーチのアーマツ・マサジェディを父に持ち、「2025男子U19世界選手権大会」では男子U19日本代表のキャプテンを務めた。福岡大学附属大濠高校から進学した専修大学では1年目からレギュラー入りを果たすと、昨年末の全日本インカレでは甲斐優斗(4年生・大阪ブルテオン)とともに戦った。その後、イタリア・セリエAのパワーバレー・ミラノに契約選手として入団。

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