東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第46回)
番外編:冨樫剛一インタビュー(後編)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。その育成の秘密に迫っていく同連載、今回も前回に続いて同クラブのアカデミーで育ち、後進の育成にも携わった冨樫剛一氏(現横浜F・マリノスユース監督)のインタビューをお送りする。

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第45回◆ヴェルディのアカデミーで育った選手が指導者としての道を歩み始めた経緯>>

――長くアカデミーの指導に携わってきて、大学経由でプロになる道について、どう感じていますか。

冨樫剛一(以下、冨樫)(プロへの)パスウェイの多様さは日本にしかないものだと思うので、これは本当にメリットであるとは思いますし、今大学が持っている役割としてのゲーム環境っていうのは、ものすごく大きい。

 ただ、世界から見ると、4年間は長いと思います。やっぱり20、21歳で、トップリーグに出られるようじゃないと。

――最近の東京ヴェルディで言えば、谷口栄斗選手(→川崎フロンターレ)、深澤大輝選手、綱島悠斗選手(→ロイヤル・アントワープ)が、アカデミーから大学経由でトップチームに加入しています。

冨樫 栄斗、深澤、綱島っていうのは(ポジションが)後ろの選手だったので、すぐに上(トップ)に上げても、ゲームに出られない。彼らは(大学へ進んで)年間60試合、4年間で240試合やれたら全然違うなっていう計算のもとで(大学へ)行かせました。栄斗なんかは、散々迷っていましたけど、「大丈夫、見ているから」って伝えて。

 やっぱりゲームをやるっていうことには、どんな練習をするよりもリアリティがある。だから、ゲーム環境を持てるのであれば、クラブとしても(ユースから直接)上に上げていったほうがいいでしょうけどね。ゲーム環境が、ひとつの大きなキーじゃないかなと思います。

――ポジションによっても、トップ昇格の考え方が変わってくる。

冨樫(ポジションが)前のほうの選手は、多少フィジカル的に劣っていたとしても、ゲームに出すチャンスはある。トップの監督としても思いますけど、やっぱり後ろの選手、特にセンターバックは、なかなか(試合に出すのが)難しい。そこはポジションによって違うかなとは思います。

――とはいえ、どのポジションの選手も"ヴェルディらしさ"とでも言うべき、高い技術を持っているという点で共通していますね。

冨樫 毎年、年末になると、ファミリーサッカー大会といって、クラブのOB、OG、アカデミーの選手やその保護者も集まって、ミニゲームをやるんですけど、それを見ていると、ベレーザだろうが、ヴェルディだろうが、サッカーがうまいっていう基準とともに、これがいいプレーだよねっていうものの共通事項がある。そのことが不思議でしょうがなくて、その実態をどう言葉にしたらいいのかをずっと考えながら、もう1年経つんです(苦笑)。

――ヴェルディに入ると、自然とサッカーがうまくなるのでしょうか。

冨樫 なるんですよ、これが。ただ、このクラブは(選手を)うまくすることはいくらでもできるんだけど、やっぱりトップへ行くと、強くなることが求められる。その時にどうしたらいいんだろうねっていうのは、この間、中村(忠/ヴェルディ・アカデミーのヘッドオブコーチング)とも話をしたんですけどね。

 でもそれは、横浜F・マリノスも同じだと思うんです。うまくすることはできても、強くすることに関しては、どういうアプローチをしたらいいんだろうなって。

しかも、その"うまくする"っていうのは、ヴェルディとはまた基準が違う。そのなかでトップにどうつなげていくかっていうのは、どのクラブでも課題だと思います。

――選手はもちろん、コーチが入れ替わっても、ヴェルディの共通事項は変わらない。

冨樫 自分がスクールを手伝っていた時に、オガちゃん(小笠原資暁/現ヴェルディのトップチームコーチ)はヴェルディに入ってきたし、シュタルフ(悠紀リヒャルト/現SC相模原監督)もそうだし。あのクラブはいろんな人間が(コーチとして)出入りしているんですけど、どんなプレーがいいプレーで、どんな選手がいい選手かっていう基準を、みんなで議論するっていうことが普通にあるので、その共通事項ができている。それは面白いなと思います。

――その基準が確立しているからこそ、ヴェルディのアカデミーで育った選手は、他のクラブでも活躍できる。

冨樫 僕は(ヴェルディユースの監督時代に)自信を持って選手たちに、「(トップで)100試合出られたら、どこに行ってもプレーできるよ」って言っていました。なので、このポジションだったら何を基準にサッカーをしていくのか、ということをしっかり身につけてプレーしている選手は多いと思います。

 ヴェルディは、サッカーがうまい選手を育てているっていうか、サッカーを考えて、それをプレーに表わせる選手を育てている。そこはすごいですよね......、いや、すごいっていう言い方だと、なんか負けている気がするので、嫌だけど(苦笑)。

(つづく)

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