ホンダにとって、今週末の日本GPがラクなものにならないことは、間違いないだろう。
2026年シーズンの開幕から2戦、アストンマーティン・ホンダはいまだ完走すらできていない。
その状況が打破できるのかどうか──。頂点を目指すべきホンダにとっては屈辱であり、恥ずべき週末だろう。
開幕前テストから問題が続発したバッテリーに関しては、振動によるダメージはもう起きないように、すでに対策が施されている。ホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネジャーはこう語る。
「アストンマーティンと協力して開幕戦に大きなアップデートを投入し、サーキットで計測機器をつけて確認したところ、大きな改善が果たせました。開幕戦から中国GPにかけても、さらにアップデートを入れて改善することができました。中国GPを終えた段階で、バッテリーとしてはレースを走りきれる信頼性があると自信を持っています」
第2戦の中国GPではランス・ストロールのマシンが10周でシャットダウンするトラブルに見舞われた。だが、これは振動問題とは別のトラブルで、事象はすでに究明済みで対策を施したという。バッテリーの通信系トラブルは、他メーカーでも散発している問題だ。
「HRC Sakuraに持ち帰ってこの2週間で分析をして、何が起きたのかは完全に把握できています。その対策も施して今、週末に臨んでいます。
それに加えて、アストンマーティン・ホンダが直面しているのがドライバーへの振動問題だ。中国GPではフェルナンド・アロンソが「手脚の感覚がなくなった」として32周でリタイアを選んだ。
現状、ドライバーが感じる振動が通常よりも大きいのは確かなのだろう。そして、それが神経系にダメージを及ぼすといった深刻な被害をもたらすものではないことも、また確かだ。
【そもそもの問題はパフォーマンス不足】
問題は何よりも、上位争いどころかポイント争いすらできないというパフォーマンスのほうにある。チーフトラックサイドオフィサー(CTO)のマイク・クラックは、そう語る。
「彼(アロンソ)が快適性に問題があると訴えたのであれば、ドライバーを信頼しなければならないし、『ノー』『お前の言うことは信じない、走り続けろ』と言うことはできない。これはリスペクトと信頼の問題だ。
ドライバーがそう言うのであれば、そうする必要がある。快適にドライブできない状況だった。もちろん優勝争いがかかっている状況なら彼も走ると言うだろうけど、今の我々はそういう状況ではないからね。上海でも話したように、その決断を下すのは難しくはなかったよ」
FIAが調査に乗り出すといった報道もあったが、クラックはこれを否定し、チームで独自の対策を進めていると明かした。
「大前提として、まず我々自身がその問題を改善したいと思っている。
中国GPのあともデータを見直して分析し、技術面だけでなく、運営面に関してもこの問題に対処できるかを検討してきた。それを受けて、今週末には対策を講じている。それがうまく機能してくれることを願っているよ」
そもそもの問題は、パフォーマンスが足りないということである。
パワーユニットとしては、信頼性向上のための仕様変更は申請すれば認められるが、性能を向上させるような仕様変更は認められない。第6戦目までの性能をもとに特別許可を出すADUO(追加開発機会)の適用を受けてからになる。
であれば、車体側のパフォーマンスを上げることが、まずは最初にできることだ。
「今の我々は、信頼性の確立に集中しなければならない状況なのは事実だが、十分な速さがないのもまた事実だ。完走してもポイントが獲れる状況ではない。
パワーユニット側としても、レギュレーションの制約でいつでもアップデートが投入できるわけではないから、待つ必要がある。同時に車体側も、速くするために全開で開発している。今週末も見た目でわかるものも、わからないものも含めて、いくつかアップデートを投入する。
ホンダ側もHRC Sakuraで懸命に開発を進めている。前述のとおり、性能向上についてはすぐに投入ができないものの、信頼性向上のための対策については「常に入れられるものを入れていきたいと思っています」と折原GMは言う。
【我々が見せたかったホンダの姿ではない】
鈴鹿サーキットは長い全開区間が3本続き、スロットル全開率も高いため、エネルギー的には非常に厳しいサーキットだ。
エネルギーマネジメントが重要になるため、その部分がまだまだ熟成不足のホンダとしては、さらなる改修が必要だ。
「中国GPで膨大なデータを収集できたので、それを分析してエネルギーマネジメント面の改善を果たしています。それが今週末のレースでも生かせると考えています」(折原GM)
それでも、苦戦が続くことは想像に難くない。
アロンソは個人的な理由のため、日本への到着が遅れる。FP1はルーキー枠でリザーブドライバーのジャック・クロフォードがステアリングを握るだけに、レース週末でパフォーマンスを最大限に引き出すことは容易ではないだろう。
しかし、開幕2戦のような、そもそもレースをしないという姿勢は、なんとしても避けてもらいたい。
「中国GPでは(開幕戦オーストラリアGPよりも)少し前進することができたが、十分ではなかった。今週末の目標は、2台ともにレースをフィニッシュすることだ」(クラックCTO)
「今年は残念ながら、我々が望んでいた場所にはいません。ただ、最大限の性能を引き出し、レースを完走できるようにしたいと思っています。
我々が見せたかったホンダの姿ではないですが、それでも我々にできる精一杯のことをやって鈴鹿に臨んでいきますので、我々がもがき苦しみながらも全力でがんばっている姿を見て、少しでも応援してもらえればと思います」(折原GM)
全力で戦って壊れるのなら、それも実力。全力で戦ってもポイントに届かないのなら、それも実力。しかし、全力で戦わずして戦列を去るのは、実力を発揮する以前の問題だ。
そんなチームやドライバーを、どう応援しろというのか?
日本GPこそは、2台ともに真の意味でレースを戦ってもらいたい。



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