『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(29)

ヴォレアス北海道 中道優斗 前編

バレーボール一家ゆえの葛藤】

 バレーボール一家に生まれて――。

 それが、SVリーグ1年目から試合出場機会を増やすヴォレアス北海道のアウトサイドヒッター、中道優斗(23歳)の人生タイトルになっている。

【男子バレー】ヴォレアス北海道の中道優斗の道標は、春高バレー...の画像はこちら >>

 父はバレー名門校と大学で活躍し、母はVリーグの選手としてプレー。

兄は大学でバレーをやめたが、常に全国大会の決勝の舞台に立つような春高のスター選手だった。

「家族4人ともJOC(ジュニアオリンピックカップ、将来の日本代表選手を都道府県別に発掘・育成する、中学生年代トップの全国大会)の東京選抜になっているんです。これはちょっと自慢ですね」

 中道は家族を誇るように言った。バレーでつながった家族愛は人一倍。彼の最大の活力だ。

 中道がバレーをすることは、ほぼ宿命だった。物心ついた頃、父や母がコートに立っていて、兄も才能の兆しを見せていた。小学校に入学すると同時に、4歳上の兄と同じクラブチームに入ったが、自分はバレーをやるものだと、ずっとうずうずしていたという。

「バレーの何が面白いかはわからなかったですが、『家族がやっているし、やりたい』と思っていました」と中道は言う。「弟としては、『お兄ちゃん、カッコいいな。追いつきたいな』って感じで。なんでもマネしていました」

 クラブチームは東京で常にベスト4に入り、全国大会に出場する強豪チームだった。

その一員として、中学に進んだ兄の後を継ぐようにプレーした。しかし小学校5年生の頃に「バレーをやめたい」と思ったことがあったという。

「バレーを嫌いになりかけました。強いチームだったし、それなりに怒られるのは当たり前だったんですけど、自分はバレーがヘタでセンスがなくて、一番怒られていたんですよ。コーチは父だったんですが、帰りの車でも怒られて、家に帰っても怒られて。母が試合を観に来た時も、『あの態度、何?』って怒られる。ずっと怒られているのが嫌になったんです」

 中道はそう言って苦笑いを浮かべたが、自分と向き合う強さがあった。

「両親や兄には相談しなかったですね。『どうせやめられねぇ』って思ったし、『やめたい』と言いたくもなかったです。友達には『バレーが嫌い』と愚痴っていて、祖母は怒られる姿を見て『優斗は優斗なんだから、やめてもいいんだよ』と言ってくれたんですけど、実際にやめようと思ったところで意地が出たんです。『ここで終わるのか』って。兄貴も通ったサレジオ中(東京)に行きたかったはずだと」

【先輩たちの後押しでSVリーグへ】

 兄がサレジオ中で全国大会の決勝の舞台に立つ姿を見た時、弟は『すごく楽しそう!』と心が躍った。自由にバレーをする姿に憧れた。

そして、自身もサレジオ中に進むことになる。

「サレジオは"自分で考えてやる"というのが基本で、自由にやらせてくれたんです。それで楽しさに気づくことができて、バレーが大好きになりました」

 その後も、兄の後を追い続けた。高校も同じ東亜学園(東京)に入学。春高の決勝で戦った兄が道標だった。

「兄のおかげで、『このレベルでこうやれば、そこにたどり着ける』という確信が持てました。兄が全国で決勝に行った試合は、めちゃくちゃカッコよかったですよ。中学、高校とも同じ相手(駿台学園)に決勝で負けたので、家族のなかでは『打倒、駿台』が合言葉みたいになっていましたね」

 春高に出場も果たすなど、夢中で駆け抜けた。ひとつ上の学年は髙橋藍、水町泰杜といったスターが揃った世代。中道は「仲間たちと『俺らの世代、マジで騒がれなかったよな』って、世代の代表ヅラして言っています」とおどけるが、お互いが負けず嫌いで、世代を引っ張ってきたことも自負している。

「東海大学では、主力選手はVリーガーになるのが当たり前でした。山本龍さん(2025-26シーズンはイタリアセリエA2でプレー。

今年1月に退団)にお世話になったんですが、意識が高い先輩の影響を受けましたし、『お前もなれよ』と言ってもらえたんです。

 リベロの高木啓士郎さん(広島サンダーズ)とは何をするのも一緒だったんですが、広島に決まった時には『お前も絶対にやれよ』と。それで『トップのリーグでプレーしたい』と思うようになり、4年時にヴォレアスから声をかけていただいた。迷わずに『行きます』と言いました」

【兄にはまだ勝てていない】

 1年目のSVリーグでは、「レセプションができないと使い物にならない」と感じているという。守備型のサイドとしては、そこに生きる道がある。大学時代、何度もリベロ賞を受賞していた高木の横で磨いたレシーブが土台だ。

「よくやめなかったな、と思います」

 中道はバレーを続けてきた自分に胸を張った。

「やめたら家族の一員じゃないというか......。今でもシーズンが終わって実家に帰ると、リビングで何気なくバレーを観ながら、ああでもない、こうでもないと夜中まで話していられる家族です」

彼はバレー一家の一員であることを呪いにせず、祝福に変えたのだ。

「兄にはまだ勝てていないと思っています。身近でセンスの高さを見てきたし、ずっと『お前の兄貴、すごいよ』と言われてきましたから。自分より、兄のほうがSVリーガーになるべき人でしたし、両親もそうなってほしかったんじゃないかと思います。

兄は春高で一度やりきった感じで、大学は2部のチームに入って1部昇格を果たしましたが、自分には『1部のチームに行けよ』と言ってくれました。それで今の自分があるので、中道家の代表として、兄のぶんもSVリーグでやっていきたいと思います!」

 弟らしい気丈さで、彼は朗らかな声で言った。

(後編:【ハイキュー‼×SVリーグ】中道優斗が選んだベストメンバーは、星海光来など「勝手に楽しくやってくれそうな選手たち」>>)

【プロフィール】

中道優斗(なかみち・まなと)

所属:ヴォレアス北海道

2002年10月2日生まれ、東京都出身。183cm・アウトサイドヒッター。小学1年時に、兄が入っていたクラブチームでバレーを始めた。東亜学園高校では春高バレーに出場するなど、全国大会でも活躍。東海大学では4年時に主将を務め、全日本インカレに出場した。2025年、ヴォレアス北海道に入団した。

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