日本代表が敵地ウェンブリーに乗り込み、イングランド代表に1-0で勝利した。
相手は19世紀にサッカー協会が誕生し、サッカーの母国として知られる伝統国。
そんな相手を、親善試合とはいえアウェーゲームで下したのだから、歴史的勝利と表現して問題あるまい。
とはいえ、イングランドは大黒柱のハリー・ケインをはじめ、主力選手を何人も欠いていたのは事実である。「前半はピッチを極端に狭めてしまい、サイドバックを思いどおりに使えなかったため、自分たちで苦戦した」
敵将のトーマス・トゥヘル監督が試合後にそう語ったように、イングランドはボール保持率では日本を圧倒的に上回るものの、攻撃が中央に偏り、敵味方ともに密集する狭いエリアに突っ込んでいくシーンが目立った。
守備一辺倒にさせられた日本にとっては、むしろイングランドに助けられた面があったのは確かだろう。
「(日本のような)深い5-4-1(の守備)に対しては、基本的にパスで優位に立つことはできない。1対1で勝てば優位に立てるが、そうでなければ常に同数か、数的不利になってしまう」
トゥヘル監督はそうも話していたが、これだけ日本が相手にボールを保持され続けるなかで、ケインやブカヨ・サカのような、個人での局面打開力に優れた選手がピッチに立っていたら、試合はどうなっていただろうか。
森保一監督が言うように、「(日本の)選手が我慢強く戦いながら、決定機をものにしてくれた」のは事実だが、ベストメンバーのイングランド相手でも、同じ結末を迎えられただろうか。
そんな試合も見てみたかったというのが、多くの人の本音だろう。
ただ、ケガ人が多く、ベストメンバーでなかったのは、日本も同じである。状況はどうあれ、日本がワールドカップで優勝候補と目される強豪国を下した事実は、高く評価されてしかるべきだ。
「イングランドは、ワールドカップ優勝の本命。
イングランド戦前日、森保監督が宣言したその言葉が、あながち大風呂敷ではなかったことを証明した格好だ。
この歴史的勝利を最後に、日本代表は事実上、ワールドカップに臨む選手選考のための活動をすべて終えた。
このところ、日本代表は災禍に見舞われ、主力選手が次々に戦線離脱を強いられているだけに、これから先は負傷者の増加がないことを祈るばかりだ。
日本は前回のワールドカップ後、2度のヨーロッパ遠征を行ない、ドイツ、トルコ、スコットランド、イングランドに4連勝。国内の親善試合では、ブラジルにも勝利した。
今の日本が、世界中のどの相手と対戦しても十分に勝機があることは、結果が証明している。率直に言って、日本は間違いなく強くなっている。
ただし、ひとつの試合でドイツやブラジルに勝てることと、ワールドカップで優勝できることとは、まったく別の話だ。
ワールドカップで優勝するためには、日本は6月14日(現地時間)のグループリーグ初戦から7月19日(同)の決勝まで、1カ月ちょっとの間に8試合を戦わなければならない。
しかも、日本が入るグループFは、オランダ、チュニジア、スウェーデンと粒ぞろい。そのグループリーグを勝ち上がっても、決勝トーナメント初戦(ラウンド32)では、日本の通過順位によるが、ブラジル、モロッコ、フランスあたりが待ち受ける。
それを乗り越えたうえで、さらに4試合もこなさなければならないのである。
選手が試合ごとに疲弊していくことは避けようがなく、いかにチーム全体でコンディションを大きく落とさず、戦い続けられるかが勝負になる。過去の実績にこだわり、ケガ明け間もない選手を無理に招集すれば、マイナスに働くことにもなりかねない。
確かに、このところの日本は選手層が厚くなった。主力に負傷者が続出してもなおイングランドに勝てたことが、その証左である。
だが、森保監督が常々口にする「2チーム分の戦力」を維持できているかと言えば、少なからず疑問が残る。
現時点で証明できたのは、イングランドと1試合を戦うためだけなら、多少のトラブルがあっても勝てるメンバーをそろえられる、というところまでの選手層である。
次に挙げるのは、敗者であるトゥヘル監督の試合後の言葉だが、それは勝者である日本にも通じるものではないだろうか。
「一番大切なのは、この試合から学ぶことだ。この結果が我々を決定づけるわけではないし、まだ(ワールドカップ開幕まで)2カ月あるので、この経験を消化し、学びを生かしてメンバーを選出し、選手たちが健康な状態で復帰できるように準備する。選手たちが健康でいてくれることを願っている。そうすれば我々は万全の選択肢を持ち、6月から夢を追い続けることができる」
1カ月に一度集まって2試合を戦うだけなら、世界トップレベルの強豪相手でも伍することができる。
来るワールドカップを占ううえで、それこそが最大のポイントである。

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