東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第49回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。同連載では、その育成の秘密に迫っていく――。

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 東京ヴェルディのユースチームは2025年、11年ぶりとなる高円宮杯U-18プレミアリーグEAST(以下、プレミアリーグ)を戦った。最終順位は12チーム中8位。前半戦こそ上位に食らいついていたが、徐々に順位を落とした結果である。

 キャプテンの仲山獅恩が、「自分たちは下(高円宮杯U-18プリンスリーグ関東)から上がってきましたけど、優勝はもちろん狙っていました」と語るように、選手にとって満足できる成績ではなかっただろう。

 だが、ヴェルディユースは2026年もまた、プレミアリーグで戦えることが決まり、「優勝争いを目指していたので、必然的に残留はできましたけど、まだまだこんなチームじゃない」と仲山。気の強い仲間をまとめてきたキャプテンは、「自分たちのサッカーができれば、どの相手とやったとしても勝てるよっていうのがわかったと思うので、来年はそれを生かして頑張ってほしい」と後輩にエールを送り、自らはトップチームでプロの道を歩み始める。

「プロとしてやっていくので、責任だったり、自覚だったり、行動、プレーもそうですけど、大人になれればいい。すべての面でレベルアップして活躍したいと思います」

 こうしてトップに昇格する選手がいる一方で、谷口栄斗(→川崎フロンターレ)のようにヴェルディを去るアカデミー出身者もいる。せっかく自前で育てた中心選手がクラブから離れることには寂しさもあるが、裏を返せば、それだけ彼らが他クラブからも高い評価を受けていることの証でもあるだろう。

 なぜ東京ヴェルディのアカデミーは、これほどまでにプロの世界で通用する選手を輩出し続けられるのか。

 その問いに対し、選手と指導者、両方の立場でヴェルディのアカデミーを知る冨樫剛一(現横浜F・マリノスユース監督)は、「言い方にすごく気をつけないといけないなと思っているんですけど」と前置きしたうえで、こう答える。

「誤解を恐れずに言えば、他が"サッカーカンパニー"であるなかで、ヴェルディは"サッカークラブ"だからだと思います」

 冨樫は、ヴェルディで2014年途中から2016年シーズンまでトップチームの監督を務めたあと、2017年から2018年にかけての1シーズン、レアル・ソシエダで育成指導者向けの研修を経験した。

日本では久保建英が所属することで有名なかのクラブは、スペイン有数の育成に優れたクラブとして知られる。

 冨樫は言う。

「ヴェルディは、育成だろうが、トップだろうが、全員が同じ空間のなかで、目的も含めて同じものを共有していて、全員がクラブの一員として認識されて切磋琢磨している。僕がそれをすごく正しいことだとあらためて認識できたのは、ソシエダにいた1年間があったからなんです」

 冨樫は、レアル・ソシエダのクラブハウス内にある育成ダイレクターの部屋に、いつもホワイトボードが置かれていたことを、強く印象に残している。そこに掲げられていたのは、"未来の布陣図"。2018年当時の未来、つまりは「今のソシエダがあの時、すでに描かれていたんですよね」と、冨樫は振り返る。

「今から7、8年前なので、(アンデル・)バレネチェアや(ベニャト・)トゥリエンテスが15、16歳くらいだったんですけれど、『誰々が(他クラブに)買われたら、そこには誰々が入って、こっちのポジションには何年生まれの誰々がいる』といった感じで、彼らの名前も盤上にあったんです。(マルティン・)スビメンディ(現アーセナル)も、そこに入っていましたね。

 ダイレクターは、『なあ、トガ。左サイドバックが薄いだろ。だから、ここをどうするかを考えなければいけないんだ』とか言いながら、もう(何年後かの構想が)ホワイトボード上に作られていて、それが選手の成長とともに、また入れ替わっていくんです」

 冨樫は、スペイン屈指の育成型クラブの内側を知り、感銘を受けると同時に、ヴェルディとの共通点を感じてもいた。

「本当にサッカークラブなんですよね、ヴェルディは。

たとえば、僕はトップの監督をしていても、ユースの監督をしていても、ジュニアの子まで全部わかっている。

 だから、森本貴幸は15歳でトップに行きましたよね。もうちょっと(トップ昇格を)我慢したほうがいいんじゃないかっていう話もありましたけど、トップチームが強く望んだこともあり、フィジカル的にもうあそこ(トップで通用するレベル)までいっているのであれば、ということで決まりました。

 三竿健斗(現鹿島アントラーズ)にしても、高3の時には僕が(監督として)トップで使いましたけど、僕がまだユースの監督だった高1、高2の時には、もう上に行かせたいと思っていた。(クラブ全体が)そういう認識で全選手をずっと見ているクラブなので、共通認識は多いと思います」

 冨樫の記憶は、さらにさかのぼる。

「小林祐希(現タンピネス・ローバーズ/シンガポール)たちの代がジュニアユースだった時には、彼らに『2015年にJ1で優勝するために、ここから逆算してやっていくよ』という話をして、トレーニングをスタートしたんです」

 1992年生まれの小林たちの代というのは、高校3年時に2010年日本クラブユース選手権(U-18)を制した世代。小林の他、高木善朗(現パトゥム・ユナイテッドFC/タイ)らがトップチームに昇格した。

「実際に僕が2015年に(トップチームの)監督をやっていた時には、もう全員移籍していましたけどね」

 そう言って苦笑いする冨樫が、「でも」とつないで、続ける。

「その間(2012~2014年途中)に僕が監督をやったヴェルディユースには、中島翔哉(現浦和レッズ)、前田直輝(現サンフレッチェ広島)、吉野恭平(現セレッソ大阪)、安西幸輝(現鹿島アントラーズ)、三竿たちがいて、彼らを上(トップ)に上げて戦っていって、(J1で)優勝を目指すっていう目的があった。

 それがクラブとしての当たり前になっているのは、他ではなかなかないんじゃないかなと思います。外に出てみてそう思いますし、ヴェルディというのは、そういう文化をずっと作ってきたクラブなんだなって、あらためて思います」

(文中敬称略/つづく)◆東京Vアカデミーで受け継がれてきたもの、さらに求められるもの>>

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