UEFAチャンピオンズリーグ(CL)は準々決勝が始まる。世界中のサッカーファンの注目が集まるなか、今季頂点に立つのはどこか。
【プラス材料とマイナス材料があるアーセナル】
中山 淳(サッカージャーナリスト)
<優勝予想>
◎本命/バイエルン
〇対抗/アーセナル
△穴/バルセロナ
今シーズンの優勝候補は、アーセナルとバイエルンの2強が本命と対抗を分け合うかたちになる。
アーセナルはリーグフェーズを無傷の8連勝で首位通過。バイエルンも、そのアーセナルとの直接対決で敗れたアウェー戦を除く7試合で勝利を収め、2位の成績でラウンド16に駒を進めた。両チームとも国内リーグで首位を快走しており、実力的に甲乙つけがたい。
アーセナルは就任7年目のミケル・アルテタ監督が、チームを着々と進化させた。これまでの堅守に加えて、攻撃の多彩さも生まれてスケールアップ。セットプレーからの得点も大きな武器で、シーズン後半戦になって昨夏の新戦力ビクトル・ギェケレシュがゴール量産態勢に入ったことも、プラス材料と言えるだろう。
ただし、相変わらず故障者に悩まされており、ここにきてその傾向に拍車がかかっている印象だ。準々決勝以降をベストメンバーで臨めそうにない状況に加え、最近は国内リーグカップ決勝で涙を呑み、FAカップでも準々決勝で2部サウサンプトンに足元をすくわれるなどチームのバイオリズムも下降気味。不安材料が目立ち始めている。
その点、バイエルンの視界は良好だ。今シーズンは開幕から公式戦16連勝というヨーロッパ5大リーグ新記録を樹立するなど、圧倒的な成績を残してきた。
守護神マヌエル・ノイアー、センターバックのヨナタン・ター、ダヨ・ウパメカノを中心とする守備も堅く、安定感はベスト8のなかで随一だ。勝負強さ、CL経験値を含めると、優勝候補の本命と言えるだろう。
その2強を追うのが、準々決勝でアトレティコ・マドリードとの同国対決が予定されているバルセロナだ。負傷を負ったラフィーニャ、フレンキー・デ・ヨングら主軸の復帰時期が行方を左右しそうだが、ハマった時の攻撃力はヨーロッパ屈指のレベルにある。守備はバイエルンやアーセナルよりも脆弱な点は否めないが、ラミン・ヤマルを軸に派手な撃ち合いの試合に持ち込むことができれば、一気に頂点に駆け上がる可能性もあるだろう。
ちなみに、昨シーズンの王者パリ・サンジェルマンの連覇は厳しい状況だ。今シーズンはレギュラー陣が入れ替わり立ち代わりで負傷離脱し、昨シーズン後半戦のように同じメンバーで戦えていない。ウスマン・デンベレの調子が上がってきたことは明るい兆しだが、ローテーションをしながらライバルを打ち負かすだけの力はない、というのが現状だ。
【新機軸の戦いをするバイエルンに注目】
西部謙司(サッカーライター)
<優勝予想>
◎本命/バイエルン
〇対抗/レアル・マドリード
△穴/スポルティング
トーナメントの山に重さの違いがみられる。パリ・サンジェルマン(PSG)、リバプール、レアル・マドリード、バイエルンの山は激戦の連続になりそう。決勝進出までに息切れしそうだが、この山を勝ち上がったチームこそ本命に相応しい。
この4チームのなかではバイエルンが最強なので本命とする。圧倒的な攻撃力は随一。オリーセ、ケイン、セルジュ・ニャブリ、ルイス・ディアスのアタックラインが強烈だ。
強豪チームで標準装備化している構造主義とは違うアプローチも面白い。安定したビルドアップで押し込み、強力なウイングを配したサイドへボールを運び、クロスボールのクリアを拾うか、たとえサイドで失っても即時のプレッシングで回収。ずっと勝ちに近く、負ける危険性を極端に低くする構造を保ってプレーする戦い方が強豪チームに浸透している。
一方、バイエルンはあえてポジションチェンジを多発させるパスワークで、局面をカオス化させる。パス&ムーブでボール周辺を密集化させることで守備の強度を担保。この方法は、選手が監督や戦術の"コマ化"している構造主義とは一線を画し、いつカオスを作り出すかの判断が選手に一任されている点で、主権を選手に戻す試みと言える。自ら構造を壊しているのでカウンターに弱く、PSGにはそこを突かれるだろうが、打ち合いで上回る力を持っている。
対抗は準々決勝でバイエルンと対戦するレアル・マドリード。CLとの相性が異常によく、一発勝負の強さが伝統だ。
穴というより大穴だが、もう一方の山はスポルティングに期待したい。ラウンド16ではボデ・グリムト相手にアウェーで0-3だったのを、ホームの5-0で引っくり返した。準々決勝で対戦するアーセナルとは実力差があるものの、ホームで二度目の奇跡を起こせば波に乗る。
準決勝に進めば対戦するバルセロナかアトレティコ・マドリードは、バイエルンやレアル・マドリード、PSGよりも与(くみ)しやすい。ノックアウトステージなので、実力だけでなく運も必要。わけのわからないパワーを、このタイミングで出力できるチームが勝ち上がる可能性はけっこうある。
リーグフェーズ8戦全勝のアーセナルは堅守に加えてセットプレーの武器があり、最も構造が強固なチームだ。しかしそれだけに対策もされやすく、終盤にきて集団的な疲労感も垣間見える。本来なら本命とすべきだが、パワーダウンしている懸念がある。
【優勝はコツをつかんだパリ・サンジェルマンか】
杉山茂樹(スポーツライター)
<優勝予想>
◎本命/パリ・サンジェルマン
〇対抗/レアル・マドリード
△穴/バルセロナ、アーセナル
アーセナル、バイエルン、パリ・サンジェルマン、バルセロナ、レアル・マドリード、リバプール、アトレティコ・マドリード、スポルティング。
ベスト4にすんなり進出しそうなのは、アーセナルとバルセロナ。両軍はそのまま準決勝で対戦する。有利そうに見えるのはアーセナルだが、サッカーが同系のバルサはやりにくい相手。過去CLで9戦して、勝ったのは1度(1勝2分6敗)だけ。難敵だと見る。2番手のバイエルンにとってもレアル・マドリードは難敵だ。2013-14シーズン以降、決勝トーナメントで4度対戦(計8試合)しているがいずれも勝ち進めず。相性がよくない。
優勝候補の1、2番手がイマイチ信用できないとなると、必然的に3番手のPSGが浮上する。
CLがスタートして33シーズン。連覇を達成したチームはレアル・マドリードのみ。PSGはそれに続く2つ目のクラブになれるか。あるいはアーセナルの初優勝なるかが、今季のCLの焦点となる。
筆者の目に、可能性が高く映るのは前者のほうだ。CLで問われるのはシーズン終盤の調子。序盤から調子のよかったチームは決勝トーナメント終盤で力尽きる。昨季で言えばリバプール。今季で言うならアーセナルがそれに該当する。
一方、ルイス・エンリケ監督率いるPSGは、昨季と同じ流れで終盤を迎えている。優勝するコツをつかんだのか? 決勝トーナメント進出は今季もプレーオフを勝ち抜いた結果だった。リーグフェーズで大苦戦しながら優勝した昨季のPSGと、今季のPSGは重なって見える。
噛み合った時の爆発力はこのチームがいちばんだと見る。多機能型の3トップがその象徴だ。真ん中、左右。どこでもできる自在型の選手と秩序の関係が秀逸。相手はその対処法に苦労する。一発勝負のトーナメントになるとなおさらだ。そこに時代を一歩先に進める先進性を見ることができる。
PSG、アーセナルに競りかけるチームはスペイン勢。レアル・マドリードとバルセロナだ。PSGと準決勝で対戦する可能性があるレアル・マドリードは、ここで勝利すれば、経験値がある分、決勝では強みを発揮しそう。バルサは準決勝でアーセナルと対戦すれば、先述のとおり相性がいい。好勝負必至だ。サッカーファン必見の美しい試合になる。

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