福田正博 フットボール原論

■イギリス遠征を2連勝で終えたサッカー日本代表。各ポジションで見られたW杯本番に向けた収穫を福田正博氏に聞いた。

>>前編「W杯本番のボランチの顔ぶれを福田正博が考察」

サッカー日本代表はワールドカップに向けて「大きな収穫があった...の画像はこちら >>

【層が厚くなったCB陣】

 センターバック(CB)陣は、スコットランド戦では右から瀬古歩夢、渡辺剛、伊藤洋輝がスタメン。イングランド戦は右から渡辺、谷口彰悟、左は伊藤がつとめたが、この顔ぶれこそが「森保監督らしさ」だろう。

 森保監督はサンフレッチェ広島を率いた頃から、つねに新たな選手を戦力に昇華させてチーム力を高めてきた。新陳代謝を迫られた理由は、主力選手の引き抜きや故障と望んだものではなかったはずだが、そこで培った手腕がいまの日本代表でも生かされている。

 冨安健洋、板倉滉、高井幸大、町田浩樹が故障で離脱し、ベストな布陣が敷けないなかでもほかの選手たちを信頼して我慢強く起用。それによってCBの層が一気に厚みを増したのだ。

 またこの2試合で印象的だったのは、左利きの伊藤を左CBとして2試合連続で先発起用したことだ。左CBには左利きの選手を置きたいという、森保監督のW杯に向けた思惑が働いたのではないかと思う。

 W杯のように対戦相手のレベルが高まると、相手の前線からのプレスは圧力を増す。その時に左CBが右利きだと、ボールを蹴るコースが相手のFWに読まれやすくなるデメリットがある。そうして奪われてしまったたった1本のパスが、90分間の流れを大きく左右しかねない。

 それで左利きの伊藤を試したかったのではないか。もちろん、伊藤が日本代表を長く離れていたため、谷口や渡辺と一緒にプレーする時間を確保したかったというのもあるだろう。

さらに言えば、伊藤不在の日本代表で左CBで頭角を現した鈴木淳之介を、途中出場したケースでの適応力や、イングランド戦で起用したようなウイングバックで試したかったというのもあるはずだ。いずれにせよ森保監督は本番に向けてさまざまな情報を収集した。

【三笘のシャドー成功は大きな成果】

 スコットランド戦に右ウイングバックでプレーした菅原由勢のパフォーマンスは高く評価している。攻守両面で貢献できる選手で間違いないことを改めて示してくれた。

 ただ、彼には「いつ使うか」という問題がある。

 今の日本代表は、守備を固めるだけでなく、自分たちで主導権を握るサッカーを志向している。そのなかウイングバックには堂安律、伊東純也がいるので、菅原は攻守のバランスが取れているだけに、逆に使いどころが難しいのではないかと思うのだ。

 これは菅原自身の問題ではなく、日本代表が持つ強みを生かしながらチーム編成を進めていくと生じる悩ましさだ。この菅原が最終的にW杯メンバーに入るか否かによって、日本代表が想定するW杯の戦い方の一端が垣間見られると思う。森保監督がどういう決断をするのか興味深い。

 攻撃陣に目を向ければ、三笘薫と中村敬斗の共存に成功したのは大きな成果だ。W杯アジア予選でも三笘薫をシャドーで起用したことがあったが、その時は機能したとは言い難い出来だった。

 それが練習を重ねる時間があったわけでもないのに、今回、三笘はシャドーらしいプレーをした。

中村敬斗と自身の持ち味を潰し合うことなく、ふたりとも「らしさ」を発揮した。ポジションを流動的に入れ替えて、相手が捕まえにくい攻撃が生まれた。

 これまでの日本代表では右サイドで久保建英、伊東純也、堂安律が、シャドーとウイングバックのポジションを入れ替わりながら相手を撹乱することはあったが、左サイドでもこれができるようになると、相手DFにとっては厄介になる。南野拓実のケガというダメージは小さくないが、新たな日本代表の武器を見いだせたのは大きな収穫だった。

【存在感抜群だった前と後ろ】

 ワントップでは上田綺世の存在感が抜群だった。イングランド代表に押し込まれても、上田がハーフウェーライン付近でボールを収めて相手を押し返せるポストプレーは、日本代表が長年苦手にしてきたものだ。それを上田がやれることで、日本代表も落ち着いてプレーできていたように映ったし、彼がピッチにいるのといないのとでは日本代表の戦い方が別物になってしまうほどだ。ここからW杯までに故障なくシーズンを終えてくれるのを願ってやまない。

 同じことはGKの鈴木彩艶にも言える。イングランド戦の終盤、強化試合ということもあって日本代表は相手の空中戦に特別な対策を取らなかったが、それでも守りきれたのは最後の防波堤として鈴木彩艶がいたからだった。高ぶることも荒ぶることもなくチームメイトを鼓舞する。2年前のアジアカップで苦悩した姿から大きく成長した鈴木彩艶がいる。

これこそがW杯に挑む日本代表の最大の武器だと改めて感じたほどだった。

 森保ジャパンのイギリス遠征の結果は最良のものになったが、選手たちに浮かれるところがないのがいい。彼らは日常を海外に置いているため、強化試合の意味合いをよく理解しているし、勝利に浮かれる日本の雑音もシャットアウトできる。まずは目の前のシーズンに集中し、コンディションを高めていってもらいたい。

 そして、森保一監督にとっては悩ましい日々がまだまだ続くことになった。今回の遠征で招集していたが、ケガで参加できなくなった安藤智哉や冨安健洋をどうするのか。イギリス遠征に参加したCB陣が役割をきっちりと果たしただけに、難しい決断を迫られるだろう。

 今回のW杯は予備登録が最大55選手で、そこから5月30日までに最大26選手をW杯メンバーに絞らなくてはならない。

 日本代表の次戦は、5月31日のアイスランド戦。W杯に挑む日本代表の壮行試合としての立ち位置になる。この試合に日本代表メンバーとして誰が名を連ねるのか、しっかり見守っていきたい。

編集部おすすめ