連載:NEXT STAGE~トップアスリートのセカンドキャリア
小林大悟インタビュー(前編)
「モノを売るのって、こんなに大変なんだなって痛感しています」
そう苦笑するのは、元サッカー日本代表MF小林大悟だ。2021年限りで現役を退いたいまは、解説やサッカースクール(DAIGO FOOTBALL SCHOOL)の活動と並行して、自身が2022年に立ち上げた会社の代表としてアミノ酸サプリの販売代理業に携わっている。
「僕、よく寡黙でサッカーだけやっていた"サッカー小僧"のようなイメージを持たれているみたいですが、現役時代からビジネスに興味があったんです。現役最後の9年間はアメリカでプレーしましたが、ロッカールームではビジネスや不動産、仮想通貨の投資話が出るのが普通でした。
サッカー選手を引退したあとも人生は続く。そう考えると、サッカーだけで人生が終わるのはもったいないじゃないですか。僕はJリーグでプレーしていた頃から飲食店のフランチャイズへの出資をしていましたし、アメリカにいた頃は時間があればビジネス系のYouTubeを見たり、本を読んだりしてサッカー以外のことにも積極的に触れてきました。
現役時代にノルウェーに行ったりアメリカに行ったり、人と違ったキャリアを歩んできたこともあり、今後のキャリアでもいろんな可能性を探りたいし、示したい。ただ、解説やスクールもそうですが、ビジネスも、考えていたことと実際やってみるのとでは全然違う。やっぱり仕事はナメちゃいけないなってことを日々、身に染みて感じています」
会社を立ち上げてからは、とにかく人に会った。食事会にゴルフ、まずは人に会わないと始まらないと、機会があれば知人や友人のツテをたどって交流の輪を広げていった。「若い頃は面識のない方と会うのは苦手だったのに、最初に刷った名刺500枚なんてあっという間になくなりました。モノを売る以上、まずは人に会って、どういう商品か知ってもらわないことには先に進まないですから。ただ、一度食事に行き、『次はゴルフでも』という流れになって、ゴルフ場に行ったら、最初に食事をした方以外は全員初対面だったり。
とはいえ、こうした経験は現役時代にもあった。
【人間関係の構築から始まる】
「僕は、海外を含め多くの移籍を経験してきましたが、移籍すると人間関係の構築から始まります。新しいチームに行けば、自分の力を発揮するためにも、まずはチームメートに自分を知ってもらうことが大事ですから。そういう意味で、仲間とうまくやらないと成功するのが難しいという点は、サッカーもビジネスも似ている気がします」
会社を起業してから約4年。仕事には慣れてきたが「思うように事が運ばないことが難しさであり、面白さかもしれない」と小林は話す。
小林が販売するアミノ酸サプリ「Dr.Amino'S POWER VITAL」は、東京大学大学院特任教授などを歴任したアミノ酸研究の第一人者として知られる大谷勝氏が研究・開発した商品。一般的に市販されている類似品と比較しても、トップアスリートの使用も視野に入れたサプリだという。ただ、そのぶん価格は決して安くはなく、販売に苦戦しているとこぼす。
「プロとしてサッカーにこだわってきた身からすると、サプリのエビデンスや効果はすごく重要です。ただ、いい商品が必ずしも売れるとは限らないのが世の中というか。それはサッカーでも、いい選手が必ずしもスタメンになるわけではないのと似ているかもしれません。監督の好みや時代のトレンドもありますからね。
もちろん、本当に誰もが認める選手ならどんな状況でも使われる。
それでも小林は、自身の選手時代の経験を踏まえ、サプリや体づくりの重要性をあらためて伝えたいと語る。
2006年に日本代表入りした当時を振り返ると、体の線が細く、所属の大宮アルディージャと代表の両方で万全の状態を保つ難しさを感じていたという。
「大宮は強豪チームではなかったので、代表に選ばれた頃は常に100%か120%の頑張りでやっていて、体への負担も大きかった。自由にやらせてもらっていたぶん、特に攻撃時には数的不利な場面でも強引にドリブルで仕掛けなければならないシーンもあったり。もともと腰が悪かったこともあって、代表に行ったときにはもう体がボロボロで......。だからこそ、選手にはできる限りいいコンディションでプレーしてほしいという思いはあります」
【向いてないことをやると成長できる】
アミノ酸はタンパク質の材料となるもので、体づくりの土台になる栄養素だ。ただ、必要量を日々の食事だけで補うのは簡単ではない。
「現役時代の僕も、そこまで深く考えられていたかというと、正直そうではなかった。でも、いま思えばもっと体のケアに意識を向けられていたら、違った結果もあったのかなと思ったりしています」
プロとして20年以上サッカーをやってきたとはいえ、試合解説やスクールでの指導も、仕事となれば楽ではない。サッカーと関係のない仕事となれば、なおさら大変なのは当然かもしれない。
「たとえば解説は『試合を見ながら、なんとなく自分のサッカー観を話せばいい』くらいに思っていましたが、いざやるとなると、どういう選手がいて、チーム状況はどうかなど、それなりの情報収集や勉強をしなければ仕事にするのは難しい。
それが、いままで一度も経験したことのないモノの販売だったら、なおのこと。しかも僕は解説やスクールコーチをやりながらアミノ酸を売ってるわけですから。相当努力をしなければならないのは当たり前ですね」
解説の仕事が自身に向いている感覚はないと話す。ただ現役時代、感覚でプレーしてきた小林にとっては、サッカーを見てそれを言語化する作業は、難しい一方、新鮮なのだろう。
「自分に向いている感触はないです。ただ向いてないことをやると、人って成長できる気はしているんです」
2023年から2年間はフランスの名門「パリ・サンジェルマン(PSG)アカデミーJAPAN」のテクニカルディレクターを務めた。現在、多くの若手選手を輩出し、世界トップともされるフランス式のアカデミー年代のコーチング法を学び、あらためてサッカーの本質を考えさせられたとも続けた。
「解説同様、プロで長くやってきたのだから、指導も簡単にできると思っていましたが、自分でプレーするのと教えるのはまったくの別物です。たとえばフランスではアカデミー年代でもウォーミングアップから戦術的に入り、サッカーとは何かというところから本質的に教えて、技術や体は後からついてくるという発想でした。
日本にはまだ馴染みはないですが、そうしたメソッドを育成年代のコーチたちに指導していくことも大切ですし、改革の必要性を感じた部分もありました。まあ僕自身がコーチライセンスをまったく持っていないし、何十年も指導者をやってきている方々には、『少しPSGで学んだからって偉そうなことを言うな』と怒られそうな気もしますけどね(笑)」
(つづく)
小林大悟
1983年、静岡県生まれ。清水商業高校卒業後、東京ヴェルディ入団。

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