『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(31)

岡山シーガルズ 中本柚朱 前編

【女子バレー】ベテランが抜けて苦しんだ岡山シーガルズ エース...の画像はこちら >>

【"新しいチーム"ゆえの試練】

「『日本代表に入りたい』よりも『シーガルズのバレーができたら』という思いでプレーしてます。だからこそ、このチームに来ました。そこはずっと変わっていません」

 岡山シーガルズの中本柚朱(23歳)は毅然として言う。

拾って、つないで、長いラリーを制する。中本は、粘りのバレーのフィニッシャーという自負がある。

「自分が決めきらないと勝てない、というのは承知しています。最後にトスを託されるポジションなので。例えば2連戦の1日目、私と対角の選手が30点くらい取って勝っても、2日目に対策されると苦しくなるので......」

 中本は悔しげな表情を浮かべた。2025-26のレギュラーシーズンは、チームトップの538得点、日本人6位と数字は悪くない。しかし彼女にとっては、シーガルズの勝利が優先なのだろう。エースとして、チームを背負う覚悟だ。

 今シーズン、岡山は12位と苦しい戦いを強いられた。古豪としては忸怩(じくじ)たる思いがあるだろう。要因は、多くのベテラン選手がチームを離れたことや、他チームが有力な外国人選手を次々に獲得していることなどが挙げられる。

「ベテランの方々がごっそりいなくなって、チームが若くなったこともあって、苦しい場面になった時に安定したプレーができる選手が少なくなりました。

それが、勝てるはずの試合で勝ちきれないことにつながっているんですが、"新しいチーム"なので、乗り越えないといけませんね」

 中本は冷静に言いながら、自責の念も強めた。

「自分も含め、レギュラーの選手たちがチームの核となり、戦い方を安定させていく必要があると思っています。コートに入ったら、年齢は関係ない。私は、みんながつないだボールを決めきらないといけませんが、力が足りないと思っています。もっと練習して個人的な実力を上げながら、チームの結束力も高めてシーガルズのバレーで勝てるようになりたいです」

 見上げるように身長が高い外国人選手への対策としては、ブロックアウトを磨いている。自分たちのバレーの形に引きずり込めたら、必ず活路はあるはずだ。

【徐々に見えてきたシーガルズのバレー】

 彼女自身、ずっとギリギリの戦いのなかで生きてきた。時代の波に翻弄されたこともあった。大阪国際滝井高校時代には、コロナ禍によって日々の練習だけでなく、実戦の機会も奪われた。

「高3の時は体育館が使えなかったですし、6、7月までは学校にも行けませんでした。何もできない、という感じです。マスクをして外をずっと走って、ボールに触れられるのは少しだけ。

 それでも、寮生と足湯しながらいろんな話をしていたんですが......アニメの『サザエさん』を見ている時に、ニュース速報で『インターハイ中止』というテロップが出たんです。

 中止になったインターハイに関わる高校生のために、back numberさんが『水平線』という歌を作ってくれたんですが、当時はそれをよく聴きました。春高バレーは開催されましたが、無観客。決勝まで勝ち進んだんですけど、大きい体育館で練習試合をしているみたいでした(苦笑)」

 それを経て入団した岡山には、大阪国際高校から入った先輩や後輩が多い。

「今のシーガルズは若いチームで、成長段階。監督も『3年~5年で優勝を狙えるチームになろう』と話しているので、それを信じています。できることを毎日積み重ねるだけです」

 中本は静かな声で言う。

「リーグが終盤になるにつれ、シーガルズのバレーができる時間が長くなってきているのは感じていました。やりたいバレーができつつあると。しんどい時間を我慢できれば、相手のミスを誘うことができます。来シーズン以降を見据えて、自分たちのバレーを磨いていきたいです」

 彼女が思い描く、至高の風景がある。何度も拾い、攻め直し、リバウンドを拾い、再び攻める。

その応酬のなかで、わずかな隙をついたスパイクが、相手の希望を砕く。それで一気に流れを引き寄せることだ。

「ひとりで決めきれなくても、みんなで決められたらいい。6対6の実戦形式で、"戦う力"を鍛えています。自分自身も、成長を続けるのみです」

 中本の思いは、いつかきっと結実する。

(後編:【ハイキュー‼×SVリーグ】 中本柚朱のベストメンバーは"つなぐ"チーム 音駒好きとしては、孤爪研磨が苦しむ一戦が推し>>)

【プロフィール】

中本柚朱(なかもと・ゆず)

所属:岡山シーガルズ

2002年11月13日生まれ、広島県出身。178cm・アウトサイドヒッター。6歳でバレーを始め、中学2年には大阪府の大阪国際大和田中学校(現・大阪国際中学校)に転校。大阪北選抜代表として全国都道府県対抗中学バレーボール大会で優勝した。大阪国際滝井高校(現・大阪国際高校)では春高バレーで準優勝を経験した。2021年に岡山シーガルズに入団した。

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