F1第10戦ベルギーGPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 ファクトリーではアップデートパッケージの開発に専念し、レース現場では待望のアップデートパッケージが投入される時に備えて進めてきた6カ月間──。

 その長いトンネルは、ようやく終わりを迎えた。

【F1】アストンマーティンとホンダの絆はより強くなった 開幕...の画像はこちら >>
 7月19日にスパ・フランコルシャンで行なわれた第10戦ベルギーGP決勝。最後尾でチェッカーフラッグを受けた瞬間、アロンソは何度も激しくバーンアウトを繰り返してみせた。ずっと抑え続けたフラストレーションを解放し、新たなチャプターの始まりを喜ぶように。

 最後に大きく立ち塞がっていたスパの難コースを乗り越えたアストンマーティン・ホンダのスタッフたちからは、安堵の様子が漂っていた。

 もちろん、ハンガリーGPに投入されるアップデートが、すべてを変えるわけではない。

 いきなり上位争いができるようになるわけでもなければ、Q3進出や入賞争いができるようになるわけでもない。

 アストンマーティンの現場を取り仕切るチーフトラックサイドオフィサー(CTO)のマイク・クラックは、アップデートがもたらす効果についてこう語る。

「ようやくアップデートが投入できることを、とてもうれしく思っている。それがどのくらいのアップデートになるのか、みなさんも興味津々だと思うが、それは我々も同じだ。

 ただし、我々にとって最も大切なのは、『レースに戻ること』。ここ数戦はまったく戦えていなかったし、中団グループについていくのにも、かなり苦労していた。だから、アップデートの内容がどんなものであれ、再びライバルたちとレースができるようになることが大切だと考えている」

 入賞争いに加わるには、中団グループのトップに並ぶ必要があり、その差は3秒以上。

Q1突破を果たすにも、中団グループ下位を上回る必要があり、その差は2秒以上。1.5秒のタイムアップを果たして、ようやく目の前を走るキャデラックを打ち負かすことができる。

 少なくとも、ハンガリーGPに投入される車体側のアップデートだけで2秒以上のタイム短縮を果たせると考えるのは、いささか楽観的すぎるだろう。

 それがクラックCTOの言う「レースに戻ること」だ。

【ハンガリーGP開幕の直前まで開発】

 戦う相手が自分たちから、キャデラックになるのか、それとも中団グループ下位のウイリアムズやハースになるのか。現時点で、それはまだわからない。

 現場のレースチームがスパ・フランコルシャンで戦っているその瞬間も、シルバーストンのファクトリーではパーツ製造が続けられていた。

 ギリギリまで開発が続けられたパーツのすべてがハンガリーGPに間に合うのか、それともいくつか間に合わないものが出てくるのか。今もまだ、せめぎ合いは続いている。

「かなり広範囲にわたるアップデートで、空力面と重量削減がメインとなる。そのためにさまざまな要素が必要だったが、それらすべては達成できた。

 まずは実際に、どんなアップデートが投入できるかを待つ必要がある。これから(車体とパワーユニットで)何段階かに分けて、改善を進めていくことになるだろう」(クラックCTO)

 予定していたパッケージのすべてが揃うのか、万一のダメージに備えたスペアパーツも含めて用意できるのか、それとも一部は旧型のまま走らざるを得ないのか。

それはハンガリーGPの金曜になるまでわからない。いや、場合によっては自前の航空機でブダペストまで運び、土曜の予選に間に合わせるということだって可能だ。

「1月(シェイクダウン)からの6カ月間は、誰にとっても本当につらい日々だった。しかし、自分たちのやるべきことに集中し、粘り強く戦い続けてきたHRC Sakura、シルバーストンのみんな、そしてドライバーたちのプロ意識には感服している。そのことはみなさんにもしっかりと理解していただきたい」(クラックCTO)

 アストンマーティンとホンダは真偽不明の噂さえ流れる開幕前の不穏な状況から、あえてオープンに実状を披瀝し、メディアに対してもイメージ先行の批判ではなく、事実ベースの話が語られるようにうながしてきた。

 だからこそ、見た目は進歩がないように見えても裏側で着々と飛躍に向けた準備を進めていること、ドライバーや現場のスタッフたちが長いトンネルの出口を探りながら戦いに専念していることが世間に広く知られるところとなり、こうして出口へと辿り着くことができた。

【出口の先に何が待っているのか】

 一度は関係がこじれそうになったアストンマーティンとホンダが、力を合わせて戦ってきた。困難を乗り越えたことで、両者の絆はより深く、強くなった。

「誰かを責めるのは簡単だし、このような状況で力を合わせて戦っていくのは簡単なことではない。しかし我々は、パートナーであるホンダとひざを突き合わせて話し合い、この苦しい状況に力を合わせて立ち向かい、努力し、苦境を乗り越えようと誓い合ったんだ。一度ではなく何度も話し合いを重ねてきた。それが、我々の関係を強くしたんだと思う」(クラックCTO)

 長く暗いトンネルだったが、全員で手を取り合い、出口がどこにあるのかを見失うことなく、まっすぐ歩いてきた。

 ようやく辿り着いた出口の先に何が待っているのか、その答えはもうすぐわかる。

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