
報道によると男性は自転車乗車中に職務質問を受け、酒気帯び運転として検挙された。その後、車でも交通の危険を生じさせるおそれがあるとして、免停処分になったという。
ネット上では「お門違い」の声も
ネット上のコメントでは「やむなし」と理解を示すコメントが目立った一方、「自転車の飲酒運転で自動車を運転できなくなるのはお門違い」という意見や「免許を持っている人だけが行政処分を受けるのは不公平」といった疑問の声も少なくなかった。こうした声に対し、「車輪のついた乗り物で違反を犯せば、資格を失ってもしかたありません。自転車と自動車で区別するのはナンセンスです」と喝破するのはNPO法人自転車活用推進研究会(自活研)理事長の小林成基氏。自転車青切符導入の検討会メンバーとして、道交法改正にも深く携わっている人物だ。
「運転免許は車という危険なものを扱うことを特に許可するもの。自動車に比べれば安全なはずの自転車で危険な運転をするような人には運転免許を持つ資格はありません。理屈は至ってシンプルです。お門違いとか不公平とかそういう問題ではありません」と小林氏は言う。
そのうえで小林氏は次のように補足する。
「自転車で違反し、その内容が著しく危険な場合に免許取消しというルールは以前からありました。
警察も自転車事故増に危機感を募らせているという(警視庁HPより)
酒気帯び運転とながら運転は昨年11月の道交法改正で新たに罰則付き違反(赤切符)となった。これにより、同違反が「車以外の道交法違反も免停や免許取り消しの対象」に該当することになり、冒頭の事案のように行政処分につながったとみられる。
どんな場合に自転車の酒気帯びで免停になる?
では、自転車の酒気帯び運転もしくはながら運転で免停になってしまうのはどのような場合か。小林氏は「赤切符を切られてしまえばかなりの確率で免停になると思います。酒気帯びやながら運転時に警察に注意されて逃げたり、抵抗したりすると厳しいでしょうね」と指摘する。自転車については道交法改正で、2026年5月までに反則金制度(青切符)の適用も決まっている。自転車に対する規制が着々と原付や自動車に近づいている格好だが、小林氏はその背景を次のように解説する。
「警察が強い危機感を持っています。事故自体の数は落ち着いてきていますが、全事故に占める自転車事故の構成比は2017年以降、年々増加しているんです。われわれとしては自転車の規制が増えるのはいいことではありませんが、この状況にどこかで歯止めをかける必要があるというのは同じ思いです」
自活研が2016年から毎年12月に発表している「自転車10大ニュース」の2024年版でも自転車の規制に関するニュースが多くを占めた。

協会発表の10大ニュースでも自転車の規制関連が多くを占めた(自活研HPより)
「いっそのこと自転車も免許制にすればいいという意見も聞かれますが、短絡的だと思います。それで事故が減るなら、なぜ自動車事故は減らないのでしょうか。大事なことは各自の意識であり教育です。
自転車と運転免許の関係はまだ試行錯誤が続くでしょう。判例を積み重ねる作業に注目したいと思います。
ただ、それ以前に免許の有無ではなく、車輪がついた乗り物に乗る場合には十分にそのリスクを認識し、交通ルールを守る。それが徹底されていれば、車歩道の安全は保たれるはずです」