アニメ『五等分の花嫁』や『PSYCHO-PASS』などでも活躍する人気声優とその所属事務所に対しインターネットの掲示板上で「放火する」「殺します」などと書き込み、事務所の業務を妨害したとして威力業務妨害の罪に問われている被告人(女・20代)の裁判が現在、東京地方裁判所(薄井真由子裁判長)で開かれている。
起訴状などによると、被告人は2023年8月ごろ、茨城県内の自宅からスマートフォンでインターネット上の匿名掲示板に、特定の声優とその所属事務所を名指しし、「放火するから覚悟しろ。
そして○○○○を殺します(○○部分は声優の名前)」などと書き込んだ。放火の日時も予告したといい、この書き込みを受けて声優の所属事務所は警備体制を強化するなど対応を余儀なくされ、警察に通報した。
裁判で被告人は「けんかしないようにしていましたが、我慢ができなかった」と掲示板に書き込んだ事実を認め、「私のことをバカにすることは許せない」などと動機について語った。

脅迫行為は「ナメクジ人間のせい」主張

1月10日は、被告人質問が行われた。ノート2冊を持った手で顔を隠して入廷した被告人は、白の上着に黒のスカートといういでたちで、黒のタイツには白の靴下を重ねていた。
掲示板に「殺す」などと書き込みをした理由について、被告人は「最初はできるだけ、けんかをしないようにしていました。でも、ナメクジ人間の存在を否定されたり、『ブス』や『ババア』などと言われて、我慢ができなくなりました。悪口を先に言ってきたのは向こうです」などと、被害者と言い合いになっていたと主張。
被害者である声優が実際に掲示板上で被告人と言い合いをしていたのか、声優の名前が勝手に使用されていたのか、それとも被告人が言い合いの相手を一方的に声優と思い込んでいたのかについては、言及されなかった。
なお被告人は新体操選手のような体が柔らかい人間を「ナメクジ人間」と呼んでいるようで、「その存在を認めてくれないのがおかしい」と法廷でも持論を展開した。公判前に精神鑑定も行われているが、鑑定医は「責任能力には問題がない」と判断している。
「私の邪魔をする人はナメクジ人間やその支援者が多い。私がしていることを邪魔されていると、いいことか(悪いことか)を考えられる状態ではなくなり、自分でも抑えられない」などと書き込んだ際の自身の状態についても語った被告人。
主治医もナメクジ人間の存在を否定しているというが、被告人は「ファンタジーではないと思う。体の柔らかい人間はナメクジ人間というか、そういう生き物。医学的にあり得ないと言われても困ります。医学ではわからないが、いるものはいるんです」と強調した。

「病気の程度はもっと重いと思います」

検察官から「ナメクジ人間がいると(被害者に)わかってほしかったのか?」と聞かれた被告人は、「この世に(ナメクジ人間が)存在してはいけないとわかってほしかった。(やりとりしていた相手に)認めてもらえず、けんかになった。向こうも私のことをひどい言葉で言っていた」と答えた。
さらに、「他人から『殺します』と言われたら、どう思うか?」と聞かれると、「腹がたつけど、殺せるものなら殺してみろ、って思います。私自身も掲示板で『殺してやる』と言われたけれど、実際にはそうなっていない」と述べた。
裁判官からの被告人質問の場面では、会話が微妙にかみ合っていない様子も見られ、傍聴席には戸惑いの空気が流れた。
たとえば裁判官が「ナメクジ人間のことを(被害者から)否定されたのですか?」と尋ねると、被告人は「(否定するのは)おかしいと思う。ちゃんと話を聞いてほしい」と訴えた。

また、「掲示板に書いても解決にならないのでは?」という問いには、「(ナメクジ人間の話を聞いてくれない主治医のもとから)転院したかった。しかし、主治医に聞いても、曖昧できちんと教えてくれなかった」などと話した。
冒頭でも述べた通り、精神鑑定の結果「責任能力には問題がない」と判断されている被告人だが、この判断にも異議があるようだった。
「病気と事件と関係がないと言っていたのはおかしい。病気の程度はもっと重いと思います。あの鑑定医はナメクジ人間を擁護する気持ち悪いオタクであって、絶対に許せない。そのキャラクターの存在を受け入れてほしかった」(被告人)
裁判は2月14日に結審し、その後判決がでる予定だ。


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