22日20時頃、JR長野駅善光寺口のバスロータリー付近で、バスを待っていた男女3人が刃物で刺され、40代の男性1人が死亡、他の2人も重軽傷を負った事件で、長野県警察本部は23日午前に事件に関わったとみられる人物の防犯カメラ画像を公開した。
報道によれば、犯人は3人の胸や背中を次々に刺した後、長野駅の南西方面に徒歩で逃走したという。
刃物のようなものは所持したままとみられ、不安が広がっている。
県警察は長野中央警察署に捜査本部を設置し、約220人体制で捜査にあたっている。

判明している“犯人像”

逃走した男について現在わかっている情報は、「20~40代くらい」「やせ形」「身長170cm前後」「頭に白い布のようなものを巻いている」「メガネを着用」「ジャンパーに長ズボン」という特徴だ。
防犯カメラの画像は3種類が公開されており、そのうち1枚は、男の右手に何かが握られているような姿もとらえている。
警察は画像公開によって早期の犯人確保につなげたい構えだが、事件発生後の防犯カメラ情報の公開をめぐっては、昨年12月に北九州市で発生した中学生殺傷事件でも大きな話題となった。
北九州市の事件では被疑者の身柄確保まで防犯カメラの情報は公開されず、SNSなどでは「なぜ公開しないのか」という疑問の声も多く見られた。福岡県警察はその理由について、逮捕後に「捜査状況を知った被疑者が逃走することを防ぐためだった」と明かしている。

防犯カメラの情報が公開される“基準”は?

では今回はなぜ、防犯カメラの情報が早々に公開されたのか。刑事事件の対応も多い杉山大介弁護士は「あくまで推測になりますが…」とした上で、「公開するメリットとデメリットが事案によって異なるのではないか」と指摘する。
「まず、防犯カメラの画像・映像には犯人の顔や服装といった事件解決に役立つ情報が多く含まれています。これを公開することで、犯人に関する情報が集まりやすくなるというメリットがあります。
一方のデメリットですが、犯人が逃走するリスクについては、殺人の疑いで一度逃げている犯人が多かれ少なかれ逃げ続けようと考えるのは当たり前なので、公開による影響はそこまで大きくないように思います。
むしろ臆測を呼ぶことで、不正確な情報が入ったり、犯人の特徴と似ている人を疑ったりするといったデメリットのほうが大きいのではないでしょうか」
その上で、北九州市の事件と今回の事件とで防犯カメラの情報公開をめぐり対応が異なったことについて、次のように説明する。
「一連の報道から、北九州市の事件では捜査機関が当初、犯人や犯行を正確にとらえた映像を持てずにいたことが伺えます。
不確かな情報を公開しても、臆測によって誤った情報や無関係な情報が増えて、事件の解決が遅れたり、間違った人を犯人にしてしまう可能性も否定できません。
一方で今回は、一応は犯人像に結び付きやすい防犯カメラの映像(画像)が取得できています。そのため、それを一般に公開することによって迅速に情報を集め、捜査を加速させることも期待できると考えます」(杉山弁護士)

そもそも公開には“慎重さ”が求められる

ただし杉山弁護士は、今回の事件について以下の懸念も表す。
「23日に公開された画像にも犯人の顔や背格好は写っていますが、メガネや服装は誰でもまねできるため、これだけで識別が可能かといえば、かなり微妙なところがあります。画像から導かれる『似ている』という情報について、捜査機関は十分に検証する必要があるでしょう。
防犯カメラや監視カメラというのは、一般的に抱かれる印象ほど決定的な証拠にはならず、他の情報を組み合わせなければ犯人を特定できるものではありません。そもそも、犯人像として公開するには、ある程度の慎重さが求められるものだと思っていただくのが適切だと思います」
捜査本部のある長野中央警察署には専用のフリーダイヤル(0120-007-285 ※24時間受付)が設置され、情報提供を呼びかけている。


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