週刊誌報道等では、中居氏とトラブルがあったとされる女性の身元は明かされていないが、元フジテレビアナウンサーであろうことは暗黙の了解となっている。
責任を追及される立場の港浩一社長(当時)が、会見(1回目)から記者クラブ加盟社以外を締め出し、大きな批判を集めた。このような経緯を受け、現在、トヨタ自動車、日本生命など大手スポンサー企業がフジテレビでのCM放送を見合わせている。先月23日には、中居氏が芸能界からの引退を発表。同27日には、フジテレビがオープンな形で改めて記者会見を開き、港社長と嘉納修治会長の辞任と第三者委員会の設置を発表した。
形式的で、後手に回って見えるが、それなりの「対応」は取っているフジテレビ。それでもなぜ、炎上は収まらないのか。フジテレビの対応には何が足りず、今後の信頼回復には何が必要なのか。
フジテレビ“失策”の要因
企業法務に詳しい元特捜検事の日笠真木哉弁護士は、フジテレビの“失策”をこう分析する。「この時代、トラブルが生じた時は100%炎上するという前提に立つべきです。その上で、できる限り“小さい炎上にする”という目標を持って対応に当たる方がいい。しかし、今回のフジテレビの対応は『ダメージをゼロにする』という誤ったゴールを見据えてしまったように感じました」
その顕著な例が、フジテレビが使う「関与していない」「関係ない」という言葉に表れていると日笠弁護士は続ける。
週刊誌報道後、フジテレビの公式サイトには「当該社員(A氏)は会の設定を含め一切関与しておりません」というコメントが掲載されている。
「フジテレビの言い分では、トラブルがあった日にA氏の関与はなかったということですが、A氏の開いた会食がきっかけで女性は中居氏と連絡先を交換したと言われている。どうやらそれがトラブルの出発点になっていそうだ、ということにはあまり争いがなさそうです。そうであれば、A氏はトラブルに全く関係ないとは言えないのではないでしょうか」(日笠弁護士)
責任逃れにもとられかねない「関与していない」「関係ない」という言葉は、炎上対応においては「火に油を注ぐワード」(日笠弁護士)だというが、実はフジテレビは2度目の会見でもこの言葉を使っている。
日枝氏「関係ないから」会見欠席は正しかったのか
それはフジサンケイグループの実権を握るとされる日枝久氏に話題が及んだ時だった。まず、トラブルを日枝氏へ相談していたのか、記者から問われた港社長は「相談はしていない。そもそもの発端が現場周りで起きているので、日枝相談役は関係していない」と述べた。
次に、日枝氏が会見に出席していないことについて問われたフジメディアHDの金光修社長も、「今回の件に関して日枝相談役が、直接関与という意味でここに登壇する必然性はないと思う」と答えている。
この対応について、日笠弁護士は「日枝さんが“直接”事件に関係ないことなんて、皆わかってますよ」と話す。
「それでも従業員が被害に遭って結果的に会社を辞めている訳ですから、企業の実質トップとしてどう責任を取るのかという話です。日枝さんが出てきて『今回の件については全然知らなかった。でも道徳的に、自分の会社で起きたこととして責任は痛切に感じる』、そう一言でも言えば、会見の印象も違ったと思います」(日笠弁護士)
炎上前から「保身」あった可能性
こうしたフジテレビの自己保身傾向は、炎上が起きる前から存在していたのではないかと日笠弁護士は推察する。「フジテレビはこれまでの対応として、従業員のプライバシーを守るために、中居氏に対する調査等をせず黙っていたと言っています。それも一理あり、ウソではないでしょう。
会見で『従業員のプライバシーを守るという理由があったが、保身もあったかもしれない』といった自己反省の弁を述べる必要があったように感じます」
「女性アナウンサーの本分」問い直す機会に
今後、これ以上の“延焼”を防ぎ、事態を収めるためにフジテレビはどう対処していくべきなのか。日笠弁護士は、何を置いても「経営陣の刷新」だと断言する。「まずは日枝さんには役員からも降りてもらい、権限や影響力をなくすことが大切です。その上で、単に年齢の問題というわけではないですが、若くて一般常識を持った経営陣に刷新するべきでしょう」
そして、女性アナウンサーの仕事を改めて考えなおすべき時が来ていると続ける。
「ここ20年くらい、女性アナウンサーがアイドル化し、場合によっては、水着姿でグラビアアイドルのようなこともしている。女性アナウンサーが性の対象として商品化されている土壌があると感じます。
これは私の想像もありますが、他局でも上納とまでは行かなくても、営業のためスポンサーの接待に女性アナウンサーを同行させるというのは、行われていると思います。他方で、企業として人権意識、あるいはコンプライアンス意識はどんどん上がっていて、ミスマッチが起きている。
この機会に、フジテレビに限らずテレビ局、スポンサー、そしてわれわれ視聴者も、『女性アナウンサーの本分(ほんぶん)は何か』という本質的なところに立ち返るべきだと思います」