経営陣よりも「記者」に批判が集まった
会見が長時間となった背景には、同月17日に行われた会見が「閉鎖的」であったとの批判を受け、今回は時間制限を設けずに実施されたことがある。しかし、記者たちは同じ質問の繰り返しや感情的な問い詰めを行い、「演説質問」と揶揄されるような長時間にわたる主観的な主張が見られ、怒声も飛び交う混乱が生じていた。結果として、釈明を行ったフジテレビよりも、会見に参加した記者らの方が批判される状況となり、当日、Xでは「フジテレビかわいそう」がトレンド入り。漫画家の倉田真由美氏も「『フジテレビかわいそう』がトレンドになっていて空いた口塞がらない。」と驚きを示していた。
「フジテレビかわいそう」がトレンドになっていて空いた口塞がらない。長時間の会見を行い、厳しい質問に耐え抜く姿が公開されることで、SNS上では「誠実な対応だ」などと評価する声も上がった。ビデオジャーナリストの神保哲生氏は、朝日新聞の取材の中で「会見の運営自体にフジテレビ側の『ダメージコントロール』の意図があったのではないか」と指摘している。
倉田真由美 (@kuratamagohan) January 28, 2025
そして「記者の追及は行き過ぎだった」との声も上がっているが、コンプライアンスに詳しい杉山大介弁護士は「その指摘も変な話だと思っています」と語る。
「スポンサー離れ」はまだ続いている
「記者会見とは、あくまで話を聞いてもらいたい側(今回の場合はフジテレビ)による主導で開かれて、ルールも会見を開く側が決められます。休憩をはさんでもよいし、弁護士の助言を受けてもよい。ただし、会見をどう評価するかは、見ている人たちや聞いている人たちに委ねられます。
1回目(17日)の会見があまりに都合よくコントロールされたものであったため、フジテレビが批判を受けたのは事実です。だからといって、2回目の会見は外部から強制されたものではなく、フジテレビが自主的に行いました」(杉山弁護士)
また、フジテレビ側に同情を誘う「ダメージコントロール」の意図があったのではないかという指摘にも、疑問を感じるという。
「1回目で批判を受けたから2回目は制限のない会見を開いたというだけであり、そこまで戦略的意図があったとも思えません。
記者会見を経て、フジテレビへの批判が和らいだわけでもなく、『スポンサー離れ』という実害は続いています。
また、厳しく質問する記者に対して視聴者の風当たりが強いのは、いまに始まったことではありません。そして、フジテレビは、記者と人気勝負をしているわけではないのです」(杉山弁護士)
世間は記者たちの言葉をどう受け止めたか
フジテレビ側の意図はともかく、会見の結果、経営陣に対する同情の声が上がったことは否めない。杉山弁護士は「この手の同情リアクションが生まれるのは、日本において『あるある』だと思いました」と所感を述べる。
「情報とは、受け手によって怠惰に消費されがちなものです。
多くの人は、情報が発信される場面を『瞬間』としてしか捉えません。強い言葉が使われる理由を考え、その背景を丁寧に確認するような真面目な人は、少数です」(杉山弁護士)
また、記者会見でも見られたような強い言葉や批判を見聞きした時には、働いている職場でクレームを受けた場合など、自分が批判されているかのような連想をする人が多いという。
「自分が言われたくない言葉」「自分が出会いたくない場面」と受け止めて、嫌悪感や忌避感を抱く一方で、なぜ強い批判がなされているのかは考えない、ということだ。
「こういったリアクションは、確かに存在すると思っています。民主主義国家の主権者として、あまりに甘ったれた思考なのですが…」(杉山弁護士)
一方で、優しく丁寧な対応が、世間から評価されるとも限らない。強い言葉でウソやデタラメを述べる相手のことを、何も考えずに「正しそうだ」と信じる人は一定数いる。さらに、優しく丁寧に応じている相手に対し、「この人には攻撃しても反撃されなさそうだ」と考える人もいるという。
杉山弁護士は、フジテレビが行った2回目の記者会見について「別に成功していない」と総括する。
「記者への批判なんて、ネットで瞬間的に消費される、どうでもいい要素でしかないんじゃないでしょうか。たぶん、数日後にはみんな忘れていますよ」(杉山弁護士)