中居正広氏の女性トラブルをきっかけにフジテレビに設置された「第三者委員会」の調査結果が、今月末に公表されると見られている。
一連の騒動をめぐっては、テレビ局で「女子アナ接待」が横行していたのではないかとの疑惑が世間の耳目を集めた。

先月14日には、日本テレビが〈制作現場などを中心に「性的接触を伴う不適切な会食」に関するヒアリング、アンケートを行いましたが、今回は該当するような不適切な会食はありませんでした〉と発表したが、「会食の場で露骨にそんなことにはならないでしょ」「“ありました”と申告するわけない笑」などツッコミが殺到。
報道によれば、同17日の定例社長会見で同社は「緊急性もあったので、人数を制限してヒアリングを行った。その結果、性的接待を伴う会食はなかった」「(今後は)匿名でやろうと思っている」などと改めて説明したという。

性接待は「特殊なケース」だが…

テレビ局の女性アナウンサーは会社員でありながら、これまでタレントのような立ち振る舞いが求められてきたことは否定しようのない事実だ。民放キー局のプロデューサーは、彼女たちの接待事情について次のように明かす。
「性接待までは特殊なケースだと思いますが、クライアントの横に座ってお酌するくらいは日常的に行われています。局側も、相手の大きさや立場によって出す“カード”、つまり女子アナのランクや接待のレベルを変えるということはやっています」
会食で女性アナウンサーがセクハラを受けないよう、会社として気をつけていることはあるのか。
「基本的にないですね…。さすがに、会食の場で『脱げ』などと強要されることはありませんが、腰に手を回したり、多少触るくらいのことは大目に見ている(見て見ないふりをする)というのが実態です。女子アナ側も『仕事のうち』と捉えている人が多いのではないでしょうか」(同前)
なお、“特殊なケース”だという性接待については「しょっちゅう行われているわけでないと思う」とした上で、次のように話す。
「基本的には会社が『二次会に行くように』と直接的な言葉で指示することはしませんが、かといって女子アナは『じゃあ(一次会で)帰ります』とも言えないと思います。二次会以降は、『あとはプライベートとしてどうぞ』という“テイ”で会社はノータッチになるので、性的接触が実際にどの程度あるのかはわかりません。
ただクライアント受けの良い女子アナは、たとえば冠番組を任されるなど出世しやすい傾向にあると思います。
ゆえに接待は、性的接触の有無にかかわらず、“のし上がっていく”ための手段のひとつだとも言えるでしょう」(同前)

“女子アナ接待”会社側が責任を負うケースとは

単なる会食であれば一般的な企業でも行われており、たとえ業務に直接関係のない相手への接待であっても「同席させることで会社側が刑事責任を問われる可能性は低い」と、刑事事件の対応も多い早矢仕麻友弁護士は言う。
「ただし同席させた従業員に対して、接待の流れでクライアントなど相手方との性行為を強要すれば、強要した人はもちろん、不同意性交が行われることを知りながら従業員を同席させた人も、不同意性交等罪の共犯者として処罰されるおそれがあります」(同前)
たとえ直接的な言葉での指示がなかったとしても、前出のプロデューサーが話したように「あとはプライベートとしてどうぞ」という“テイ”であれば、会社側は責任を逃れることになるのか。
「不同意わいせつおよび不同意性交等罪は、『経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることまたはそれを憂慮していること』などにより、同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせまたはその状態にあることに乗じて、わいせつまたは性交等を行った場合に適用するとの規定になっています(刑法176条1項8号、刑法177条1項)。
番組の出演者を決定できる立場にあるプロデューサーからの暗黙の指示という状況であれば、上記に該当するとしてそのような状況を作り出した会社側の人間が処罰されることもあり得るでしょう」(早矢仕弁護士)

「同意」の上で参加した場合、事後に「被害」を訴えることはできる?

前述のように、性的接触の有無にかかわらず、女子アナにとって接待はのし上がっていくための手段という側面もあるようだ。仮に従業員が、性的接触のあるかもしれない接待に同意の上で参加したものの、意にそぐわない行為があったとして後から“被害”を訴えた場合、責任の所在はどうなるのだろうか。
「接待に参加した従業員の『同意』が形式的ではなく、客観的にも真に『同意』していたのかという点が問題になり得ると思います。
また、仮に真に『同意』していたとしても、その範囲、たとえばわいせつ行為までは同意していたが、性行為は同意していないなどのケースも考えられるため、その場合には接待を受けた相手や会社側の人間に不同意わいせつや不同意性交などの犯罪が成立する余地はあるのではないでしょうか」(早矢仕弁護士)
また、刑事事件とは別に「民事事件として不法行為に基づく損害賠償請求を接待相手または会社側の人間に対して請求するということも可能」(早矢仕弁護士)だという。
接待は本来、良好な関係構築のために行われるものだ。もてなす側も受ける側も、お互いの気持ちを尊重していれば、そもそもトラブルは発生しないのだろう。


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