
136件のうち「通話目的」でスマートフォン等を使用したケースは11件にとどまり、125件はゲームや動画、操作など画面を注視する「画像目的」での使用だった。
スマホ使用で死亡事故率3倍以上に
自らも交通事故の被害者遺族である伊藤雄亮弁護士は、ながら運転について「『車を暴走させるタイプ』の違反運転であり、死亡・重度後遺障害など被害結果も重大になることが多いです」と述べ、その危険性を強調する。事実、警察庁のまとめによれば、運転手がスマホ等を使用していた場合、使用していなかった場合と比べ「死亡事故」になる確率が約3.7倍に跳ね上がるという。
ながら運転をめぐっては、2019年12月に道路交通法が改正され、罰則が大幅に強化された。
具体的には、ながら運転により交通の危険を生じさせた場合は、即時免許停止となり、例外なく刑事処分が科せられる。
また、交通の危険を生じさせていないケースでも、違反点数が1点から3点に、反則金は6000円から1万8000円(普通車の場合)に引き上げられた。違反を繰り返すなど悪質な場合には、刑罰も科せられることになっている。
しかしこうした法改正もむなしく、冒頭の通り、ながら運転での死亡・重傷事故は増加している(2020年は新型コロナ感染症の影響で減少)。
法律は違反運転の抑止力になっていない?
行政処分・刑罰の強化が、ながら運転等の違反行為への抑止力につながっていない可能性については、伊藤弁護士も指摘する。「ながら運転により重症・死亡事故を発生させて刑罰を受ける人は増えていますが、そもそも交通事故の加害者に対しては、なかなか実刑判決が出ません。
たとえば、ながら運転でひき逃げまでして被害者を死亡させたのに、執行猶予付き判決だったケースもあります」
さらに、実刑に処された事例を見ても、腑に落ちない時があると伊藤弁護士は続ける。
「居眠り運転で、1人が死亡、もう1人が重傷という被害に遭った事故で、加害者は実刑になりましたが、それでも禁錮2年8か月でした。
少しでも事故の程度が軽ければ実刑が危うくなって、執行猶予に“落ちた”だろうと考えると、法律が悪質な運転に対する抑止力になっているのか疑問に感じるケースも多いのが現状です」
その上で伊藤弁護士は、運転手の「モラル」が問われているとしてドライバーにこう呼び掛けた。
「ながら運転は、法律上は過失犯つまり『不注意』という扱いになります。
ながら運転による悲惨な事故が後を絶たないことは、はっきり言って日本人の運転モラルが決して高くないことを示しています。このことをドライバー一人一人が肝に銘じるべきではないでしょうか」