23日、週刊文春電子版が俳優・アーティストの三山凌輝(みやまりょうき)さんをめぐる婚約破棄トラブルを報じた。
三山さんは人気ボーイズグループ「BE:FIRST」のメンバー(アーティスト名義は「RYOKI」)で、俳優としては昨年のNHK連続テレビ小説「虎に翼」や、現在放送中の連続ドラマ「イグナイト -法の無法者-」(TBS系、金曜午後10時)に出演。

幅広い世代から人気を集めていただけに、世の中に衝撃と大きな波紋が広がっている。

両親へのあいさつも済ませていたが…

文春の報道によれば、三山さんは人気YouTuberでアパレル会社経営者のRちゃん(大野茜里さん)と2021年冬に交際を始め、ほどなくしてRちゃんの家で同棲。2022年末に婚約し、両親へのあいさつも済ませていたという。
また、三山さんはRちゃんから高級外車、高級時計、月200万円の小遣いなど、総額1億円以上の経済的支援を受けていたとされている。
しかし、2024年1月に三山さんの不貞行為が発覚。三山さんは涙ながらに謝り、その後、Rちゃん側が用意した「正式に婚約を証するため」の誓約書にサインした。
ところが、それからわずか5日後に再びケンカとなり、三山さんがRちゃんと同棲していた家を出ていく形で音信不通に。婚約は事実上破棄されたという。
これに対し、三山さんの所属事務所「BMSG」と俳優業の所属事務所「Flash Up etoile」は文春の報道があった23日夜、連名で声明を発表。Rちゃんとの交際と婚約の事実やプレゼントのやりとりを認めつつも、「法令に違反していることがないことを確認」していると釈明した。また、婚約は最終的に双方合意のもとで解消されたとしている。
一方のRちゃんも同日中にインスタグラムのストーリーズを更新し「ご心配をおかけしてしまい、大変申し訳ございません」「私はこれからも前に進みます。通常通り活動させて頂きますので引き続きどうぞよろしくお願い致します」とつづった。

一方的な「婚約破棄」法律上は原則として許されない

一般的に、婚約破棄の法的責任は重く受け止められる。その理由について、離婚・男女問題への対応も多い杉山大介弁護士は次のように説明する。
「婚約は、法律上、当事者間の合意によって成立する『契約』と捉えられます。したがって、いったん成立した婚約は、正当な理由なく一方的に破棄することは原則として許されません。
もし、一方的な婚約破棄によって相手方が損害を被った場合、破棄した側は、その損害を賠償する責任を負うことになります」
損害の種類は、主にふたつに分類されるという。
「ひとつは、精神的な苦痛に対する賠償である慰謝料。もうひとつは、婚姻を前提として支出した費用や、婚約によって失われた機会など、『婚姻を前提として失ったもの』に対する損害賠償です」(同前)
婚約が成立していたかを判断する上で重要な要素はさまざまあるが、今回のケースに照らせば、婚約を証明する書面(誓約書)の存在や、相手方の家族との接触といった事実が該当する。これらの事実は、当事者間に結婚の約束があったことを示す有力な証拠となり得るという。

不貞行為があれば「慰謝料の金額」高くなる

婚約が存在し、それを正当な理由なく破棄した場合、「慰謝料は原則として発生すると考えられる」として、杉山弁護士は次のように続ける。
「慰謝料の金額を算定する上で特に重要な要素となるのは、婚約破棄の原因となった不貞行為の有無です。不貞行為があった場合には、慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。
一方で、今回のケースのように婚約に際して特別な誓約を交わしていた事実や、相手の親と会っていたという事実も慰謝料の算定に影響を与える可能性はありますが、不貞行為ほど大きな要因とは言えません。
また、慰謝料は悪質なケースであっても、100万円から200万円程度の範囲で変動はしますが、その金額が悪質さに比例して大きく跳ね上がるわけではなく、一定の上限が存在します」
次に「婚姻を前提として失ったもの」について、杉山弁護士は「人によっては大きな損害となる可能性がある」という。
「今回の報道で言及されているようなケースでは、仮に訴訟が行われた場合、この点が最終的な結論にもっとも大きな影響を与えるでしょう。

『婚姻を前提として失ったもの』とは、一般的には結婚式場の予約金などが該当します。ただし、式場確保のように結婚との結びつきが明確な費用とは異なり、『結婚すると思ったからこれを支払った』というような支出については、『婚姻を前提とした行為であったか』という点で法的な議論が生じやすい側面があります」(同前)
このように、法律問題においては、それぞれの段階で考慮すべき論点が存在し、個々の事実が持つ意味合いや重要度も、問題のどの段階にあるかによって異なってくる。
一般的なケースに当てはめれば、最初の課題として「婚約が法的に成立していたことを立証できるか」がネックになりがちだと、杉山弁護士は補足した。

「誓約書」の存在が与える影響は?

男女問題において誓約書が交わされる場面は多く、今回のケースも例外ではない。文春の報道によれば、この誓約書は「正式に婚約を証するため」のものだったようだが、サインした状況で音信不通になった場合、何らかのペナルティーはないのだろうか。
杉山弁護士は「刑法のように公的機関がペナルティーを科してくれることはない」とした上で、「ただ…」と言葉を続ける。
「民事の観点からは、誓約書の存在によって慰謝料を請求しやすくなる効果が考えられます。たとえば、不貞行為による婚約破綻と、その後の音信不通という婚約破棄に関する事後的対応の悪さそれぞれについて不法行為が成立すると主張することで、より多くの慰謝料算定を目指すといった工夫が考えられます」

「法令違反はない」所属事務所が釈明も…法的には誤り?

先にも触れたように、所属事務所は三山さんについて「法令に違反していることがないことを確認」とコメントしている。しかし杉山弁護士は、「報道の内容を見る限り法的には誤り」であると指摘する。
「刑法に触れる犯罪ではないものの、法律に違反する行為として、ハラスメントや個人情報の拡散、性的な内容ではない盗撮などが挙げられます。これらは『不法行為』とされ、被害者には民事上の損害賠償が認められる場合があります。
不貞行為による婚約破棄も同様に『契約の債務不履行』や『不法行為』であり、民法という法令に反する行為として法的責任が認められるものです」


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