
古着や靴、本などを買い取ってくれるリサイクルショップが隆盛だ。ところが、こうした便利な仕組みがあると、「悪用できる」と匂いを嗅ぎつけるのが詐欺師たち。
「最初は穏やかでも、次第に豹変し押し買いに。押し売りのリバースです」。詐欺集団のやり口をこう明かす、詐欺の手口に詳しいルポライターの多田文明氏。高齢者を中心に、被害が拡大している押し売りの「リバーシブル戦略」について、同氏が解説する。
※この記事は悪質商法コラムニスト・多田文明氏の書籍『最新の手口から紐解く 詐欺師の「罠」の見抜き方 悪党に騙されない40の心得』(CLAP)より一部抜粋・再構成しています。
具体的に見てみよう。
いきなり家に押し掛けてきて、いくら断っても居座って帰ろうとしない。そして、最後には「買えよ!」と脅すような口調で迫ってくる。
断れば何をされるかわからない恐怖心から、家人は怖くなってしまい、相手の差し出す商品を言い値で購入してしまう。
こういった「押し売り」による被害は後を絶たない。
そこで、こんな注意喚起が周知されることになる。
「『買えよ!』と、強気に売りつけてくるのが、悪質業者です。押し売りには気をつけましょう」。すると、悪質業者は、まったく逆方向からやってくる。
女性の声で、電話がかかってくる。
「こちらは、リサイクルショップですが、古着や靴、本など余っていませんか? 何でも買い取ります」
電話を受けた中年女性は「ちょうど、捨てようと思っていたものがあったから、ぜひ来てください」と答える。
翌日、業者の男が来訪し、難なく家に入り込む。女性は、玄関前に、家の奥から着なくなった衣類や鞄などを出してくる。
業者の男は衣類などを見ていく。
「こちらはご主人のものですか」
「ええ、もう着られなくなったものですから」
何気ない会話をしながら、業者は査定結果を口にする。
「これはどれも値段が付きませんね。もう少し価値のあるものはないですか? せっかく来たのですから、お値段がつくものをよろしくお願いします」
「そうですねえ」
と考え込む女性に対して、「たとえば、宝石や貴金属などのアクセサリーはないでしょうか? 見せてくれるだけでいいんですよ」と重ねる。
「これだけ立派な家に住んでいるんだから、何かあるはずでしょう。
「ご主人がいるんだから、結婚指輪もあるでしょう。見せてくださいよ」
しつこく迫ってくる。
女性が「貴金属類はないので帰ってください」と言えば、だんだん男はすごみをきかせ、「いいから、金の指輪や宝石を出せよ」と脅すような口調になる。
ついには、女性が着けている指輪や腕時計を見て、「それを見せてくれよ。それを売ってくれよ」とまで言い出す。
まさに、押し売りのリバース、「押し買い」を始めてくるのだ。
家人が根負けして宝石を出すと、高価なものにもかかわらず、「デザインが古いので価値がありません」「これは偽物ですね」と嘘をついて二束三文の値段をつけて買い取っていく。
もし相手に宝石を渡してしまい、不安になって「やはり、返してください」と言っても、男は、「一度、売ることに同意して渡したものは、戻せません」などと言って、家を出ていってしまう。
だが、これは嘘だということを知っておいてほしい。
クーリング・オフを記載した書面を交付することを義務付けられているのはもちろんだが、業者と商品を売却する契約をしたとしても8日間は、業者へ商品をすぐに渡さず、手元に保管しておけるのだ。
もし、業者から、金銭的な価値がないと査定されても、一方からの話だけでは判断せず、自らが実際に買い取りの店舗に赴くなどして、査定額を比較検討できる。
当然、クーリング・オフの期間であれば、無条件で契約を解除できる。
くれぐれも、買い取りの契約をしたからといって、安易に商品を相手に引き渡してはいけない。
中には、後から商品を取り戻そうとして、業者に電話をかけるも、連絡がつかないケースもあるからだ。
「商品を売りつける」のが悪質商法と思っていると、不用品がお金になるかもしれないという気持ちにつけ込み、今度は、リバーシブルして「買い取る」という手段でやってくるのだ。
常に相手の裏をかき、わずかな隙間に入り込んでいくのが、詐欺師たちの戦略なのだ。
高齢者をターゲットに増加傾向の「押し買い」(国民生活センターWEBサイトより)
かつて「押し売り」が問題になったが、詐欺集団は、ならばと自宅等に「買い取ります」と忍び寄ってくる。
「最初は穏やかでも、次第に豹変し押し買いに。押し売りのリバースです」。詐欺集団のやり口をこう明かす、詐欺の手口に詳しいルポライターの多田文明氏。高齢者を中心に、被害が拡大している押し売りの「リバーシブル戦略」について、同氏が解説する。
※この記事は悪質商法コラムニスト・多田文明氏の書籍『最新の手口から紐解く 詐欺師の「罠」の見抜き方 悪党に騙されない40の心得』(CLAP)より一部抜粋・再構成しています。
「思惑の裏を突く」のが詐欺師の常套手段
詐欺集団の発想には、「私たちの思惑の裏を突く」というものがある。具体的に見てみよう。
いきなり家に押し掛けてきて、いくら断っても居座って帰ろうとしない。そして、最後には「買えよ!」と脅すような口調で迫ってくる。
断れば何をされるかわからない恐怖心から、家人は怖くなってしまい、相手の差し出す商品を言い値で購入してしまう。
こういった「押し売り」による被害は後を絶たない。
そこで、こんな注意喚起が周知されることになる。
「『買えよ!』と、強気に売りつけてくるのが、悪質業者です。押し売りには気をつけましょう」。すると、悪質業者は、まったく逆方向からやってくる。
女性の声で、電話がかかってくる。
「こちらは、リサイクルショップですが、古着や靴、本など余っていませんか? 何でも買い取ります」
電話を受けた中年女性は「ちょうど、捨てようと思っていたものがあったから、ぜひ来てください」と答える。
翌日、業者の男が来訪し、難なく家に入り込む。女性は、玄関前に、家の奥から着なくなった衣類や鞄などを出してくる。
業者の男は衣類などを見ていく。
「こちらはご主人のものですか」
「ええ、もう着られなくなったものですから」
何気ない会話をしながら、業者は査定結果を口にする。
「これはどれも値段が付きませんね。もう少し価値のあるものはないですか? せっかく来たのですから、お値段がつくものをよろしくお願いします」
「そうですねえ」
と考え込む女性に対して、「たとえば、宝石や貴金属などのアクセサリーはないでしょうか? 見せてくれるだけでいいんですよ」と重ねる。
断ると態度を豹変させる悪徳業者
これで素直に出してくれる家人であればいいが、「家には高価な宝石はありません」と言おうものなら、男の態度は一変する。「これだけ立派な家に住んでいるんだから、何かあるはずでしょう。
嘘はつかないでくださいよ」
「ご主人がいるんだから、結婚指輪もあるでしょう。見せてくださいよ」
しつこく迫ってくる。
女性が「貴金属類はないので帰ってください」と言えば、だんだん男はすごみをきかせ、「いいから、金の指輪や宝石を出せよ」と脅すような口調になる。
ついには、女性が着けている指輪や腕時計を見て、「それを見せてくれよ。それを売ってくれよ」とまで言い出す。
まさに、押し売りのリバース、「押し買い」を始めてくるのだ。
家人が根負けして宝石を出すと、高価なものにもかかわらず、「デザインが古いので価値がありません」「これは偽物ですね」と嘘をついて二束三文の値段をつけて買い取っていく。
もし相手に宝石を渡してしまい、不安になって「やはり、返してください」と言っても、男は、「一度、売ることに同意して渡したものは、戻せません」などと言って、家を出ていってしまう。
だが、これは嘘だということを知っておいてほしい。
「クーリング・オフ」を最大限に活用する
訪問購入では、「クーリング・オフ」というものが法律で定められている。クーリング・オフを記載した書面を交付することを義務付けられているのはもちろんだが、業者と商品を売却する契約をしたとしても8日間は、業者へ商品をすぐに渡さず、手元に保管しておけるのだ。
もし、業者から、金銭的な価値がないと査定されても、一方からの話だけでは判断せず、自らが実際に買い取りの店舗に赴くなどして、査定額を比較検討できる。
当然、クーリング・オフの期間であれば、無条件で契約を解除できる。
くれぐれも、買い取りの契約をしたからといって、安易に商品を相手に引き渡してはいけない。
中には、後から商品を取り戻そうとして、業者に電話をかけるも、連絡がつかないケースもあるからだ。
「商品を売りつける」のが悪質商法と思っていると、不用品がお金になるかもしれないという気持ちにつけ込み、今度は、リバーシブルして「買い取る」という手段でやってくるのだ。
常に相手の裏をかき、わずかな隙間に入り込んでいくのが、詐欺師たちの戦略なのだ。
高齢者をターゲットに増加傾向の「押し買い」(国民生活センターWEBサイトより)
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