逮捕されたのは、40代と20代の男。
騒ぎを受け、教職員5人が負傷。児童にけがはなかったが、立川市教育委員会は心理的ケアのため、スクールカウンセラーや市の心理士によるメンタルケアを行っていくとしている。
事件の背景には、この学校に通う児童の母親の存在があるという。
母親は同日午前、児童間のトラブルに関して担任教諭と約1時間面談したが、話がまとまらなかったため、いったん学校外に出た。その後、知人である逮捕された男2人を連れて再び学校に戻り、今回の事件に至ったとみられている。
男らを“連れてきた”母親は「共犯」か?
本件では、現場となった小学校の敷地内に男2人を招いた母親の責任を問う声も少なくない。男2人は「暴行罪」(刑法208条)の疑いで逮捕されているが、暴行行為自体を行っていない母親に同罪の共同正犯(刑法60条)が成立するには、男2人が教職員に暴行を加えることに母親が合意していたか、単に学校に来てほしいと頼んだだけでなく「暴れてもいい」「脅してほしい」など、具体的な暴行の示唆や合意があったかどうかがポイントになる。
刑事事件に多く対応する杉山大介弁護士は「男性2人が暴行行為におよぶことの認識までは問えない可能性がある」とする。ただし、「男性2人の行為は建造物侵入罪にも該当すると思われる」として、以下の見解を示す。
「報道によると、母親は一度学校を出た後、男性2人と再び学校の敷地内へ入っており、この侵入について認識を共有していた可能性が高いと考えられます。
したがって、母親には、暴行行為への認識まではいかずとも、建造物侵入罪の共同正犯が成立する可能性はあるのではないでしょうか」
実際に建造物侵入罪の共犯が成立するかどうかは「母親がどこまで男性2人と行動を共にしていたかが重要になる」という。
「もし学校に入る場面まで一緒にいたのであれば、その時点での男性2人の行動は、基本的に母親も認識し、容認していたと捉えられる可能性が高く、共同正犯が成立すると思われます」(同前)
学校側の対応に不満…“実力行使”の前にやるべきこと
立川市教育委員会によれば、母親はこの日、児童間のトラブルについて相談するため面談に訪れていたという(相談内容の事実関係については調査中)。仮に、いじめなどをめぐって保護者が学校側の対応に不満を持った場合、実力行使や感情的な行動に出る前に、どのような段階を踏んで学校と話し合うべきなのだろうか。
杉山弁護士は「あくまで一般論ですが…」とした上で、次のように続ける。
「学校は警察ではないため、いじめなどの問題を認識したとしても、対応できる範囲には限界があります。できないことを求めても、ただやきもきするだけなので、まずは保護者の要望が学校の権限で解決可能かどうかを正確に判断することが重要です。
その上で、私自身の弁護士としての経験からお話しすると、学校側が行えるはずの対応をしないなどの問題がある場合、学校側との交渉を通じて必要な措置を調整することがあります。
学校問題は、法律を単純に当てはめて解決できるものではなく、問題の状況を踏まえた柔軟な対応が必要です」
そして、本件についてはこう評価した。
「今回の事件の所業は悪辣(あくらつ)極まりない犯罪行為であり、論外です。学校という、あくまで平時の対応をする機関のキャパシティーを超えています。学校側は、このような保護者が現れたときは、迷わず警察を呼ぶなどしてください」