最高裁判決後の動きや今後の活動目標について語った。
国は責任認め謝罪、昨年10月に旧優生保護法補償金等支給法が成立
日本で1948年に制定された「旧優生保護法」。同法は「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的としたものであり、この法律により、障害のある人々を中心に、約2万5000件の強制不妊手術が行われた。1996年、同法は「母体保護法」へと改正され、優生手術に関する条文は削除されたものの、被害者への謝罪と賠償は長年放置されていた。
しかし、昨年7月3日、最高裁は「旧優生保護法」の規定について、憲法13条(個人の尊重)と14条(法の下の平等)に違反していると判断。
当該規定に係る国会議員の立法行為は違法であるとして、不妊手術を受けた、すべての被害者に対する国の損害賠償責任を命じる判決を言い渡していた。
最高裁判決を受け、昨年10月には議員立法により「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律」が成立。
同法の前文には「優生上の見地からの誤った目的に係る施策を推進してきたことについて、悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪する」と、政府・国会としての謝罪の文言が含まれている。
この日会見に出席した、優生保護法東京弁護団団長の関哉直人弁護士は「最高裁判決後、動き出したところもあるが、まだまだあらゆる政策がスタートしたばかりだ」として、こう続ける。
「補償に関する法律ができたことは大きな動きですが、重要なのは、今後、検証作業が着実に進むかどうかです。しっかりとした検証が行われ、あらたな政策や補償につながることを期待しています」
「すべての人に自己決定権があると発信していきたい」
この日会見に出席した、優生連の藤原久美子代表も「歴史的な最高裁判決によって、旧優生保護法の問題は解決したのだと思われがちだが、そうではない」と指摘。「世界中では法の有無に関係なく、旧優生保護法下で行われていた手術と同様の強制不妊手術が行われている国や地域があり、日本でも『障害者は子どもを産まないほうが幸せ』という誤った考え方により、母体保護法への改正後も理不尽な理由で手術を受けさせられた人がいます。
他方で、世界を見渡せば、人工妊娠中絶や、LGBTQが子どもを持とうと望むことに対するバッシングなどが生じています。
日本での優生保護法をめぐる経験を伝え、『障害者であっても、あるいは女性や性的マイノリティーの方であっても、すべての人には自己決定権がある』ということを発信していきたいです」(藤原代表)
6月に国連本部でイベント「日本での成果、しっかり周知」
また、会見では、6月に強制不妊手術の被害者らが、旧優生保護法の経験と教訓を世界に共有するため、国連本部でイベントを実施することが発表された。「依然として、EU諸国等でも、障害のある方に対する強制不妊手術が行われ、補償がなされていない国があるそうです。
国連という場において、日本での成果をしっかり周知することの意義は、とても大きいものだと思います。
この国連でのイベントには優生手術の被害者である北三郎さん(仮名、82歳)も出席を予定している。
北さんは自身への賠償金が支払われた後、「このお金を有効的に使いたい」との思いから、国連本部のあるニューヨークへの旅費など、イベント出席にかかる費用の一部を、その中から捻出することを決めたという。
「やはり差別やいじめをなくしていきたい。そのためにも、世界に対して、日本での出来事を伝えたいと思います」と語る北さん。
初の海外体験となる今回の渡航では、ニューヨークでのイベント後、西海岸に移動し「大谷翔平選手を見たい」というささやかな願いも抱いているという。
3つの作業部会を設置し国と協議
一方、優生保護法被害全国弁護団の共同代表である新里宏二弁護士は国との協議の状況について報告。現在、被害者の被害回復に向けた作業部会を含む3つの作業部会が設置されたと説明した。被害回復に向けた作業部会はすでに動き始めており、「被害に遭われた方の中には、自身が不妊手術を受けさせられた事実を認識されていない方もいらっしゃる可能性があり、二重の被害が生じている場合が考えられる」(新里弁護士)として、障害者手帳を持つ人すべてに告知をすることなどを国側に提案しているという。
なお、日本弁護士連合会・各弁護士会では、昨年の最高裁判決にあわせて、今年7月3日に「全国一斉旧優生保護法相談会」を実施する予定。弁護士に電話で直接相談できるといい、電話での相談が困難な場合はFAXでも対応するという。
電話番号は0120-73-0008で、FAX番号は0120-073-133。10時から16時まで予約不要、通話無料で受け付けるとのことだ。