16日になって、駐日リトアニア大使がSNS上で窃盗被害に遭ったことを報告。
防犯カメラには、女性とみられる2人組が周りを見渡しながらパビリオンの入り口に置かれた50センチほどのミャクミャクを手に取り、体で隠すようにしながらカバンの中に入れ、立ち去る様子が映されていた。
とても寂しいことに、大阪万博のバルト館で一生懸命に仕事をしていた❤️ミャクミャクは突然消えてしまいました#防犯カメラありがとう動画を見た人からは「ミャクミャクがかわいそう」「日本人なら恥ずかしい」といった声や、「警察に届けましょう」と大使に勧める声も上がっている。
️どこへいらっしゃっているのでしょうか?
皆さん、見つかったら教えてください pic.twitter.com/YJemWTFLLU
駐日リトアニア大使Aurelijus Zykas オーレリウス・ジーカス (@AurelijusZykas) May 16, 2025
一方でバルト館の担当者は報道に対し、「警察には相談したが、大きな問題にしたくないから被害届は出さない」などと話したという。
捜査の可能性「限りなく低い」ワケ
被害届が出ていなくとも、駐日大使が公開した防犯カメラには犯行の様子がバッチリ写っている。犯人らが特定されれば、逮捕・送検される可能性があるのではないか。刑事弁護を多く担当する伊﨑竜也弁護士は「窃盗罪は親告罪ではない=被害者の告訴が必須ではないため、警察が捜査を進め、被疑者が逮捕・送検される可能性はゼロではありません」と話す。
しかし、「現実問題としては、警察が捜査を進める可能性は“限りなく低い”」とも指摘。その理由を次のように説明する。
「警察や検察といった捜査機関は、被疑者・被告人を起訴し有罪判決を得るために捜査をします。
有罪判決を得るには、有罪を立証できるだけの証拠を集める必要があります。窃盗事件の場合、被害があったことを立証するために、被害届や被害者の供述が重要な証拠となります。
逆に言えば、被害者が被害届を出さない場合や、警察への被害申告をしない場合、捜査機関は有罪を立証するための重要な証拠を得られないということです。
出頭しても“自首”は成立しない?
しかし、窃盗は法的にれっきとした犯罪であり、犯人が置かれている状況は決して軽くない。伊﨑弁護士はその例として、刑の減軽を受けられる可能性がある「自首」を挙げる。自首は、捜査機関に発覚する前でなければ成立しない(刑法42条)。
「『捜査機関に発覚する前』とは、犯罪の発覚前か、犯人が誰であるかが発覚する前を指します。
犯罪があったことと犯人が誰であるかは分かっているものの、犯人の所在だけが判明していない場合については、『捜査機関に発覚する前』にあたらず、自首に含まれないと考えられています(最高裁昭和24年(1949年)5月14日判決)。
本件では窃盗被害があったこと、その様子が防犯カメラに写っていることから、犯罪と犯人は発覚しており、ただ犯人の所在が不明なだけですので、自首は成立しないと思います」(伊﨑弁護士)
ただし、犯人が自身で警察に連絡・出頭した場合などには、法律上の自首は成立しないものの「反省の意を表明している」と判断され、処罰が軽くなる可能性はあるという。
「また、初犯で被害弁償や示談をしている場合は、そもそも起訴されず、不起訴処分で終わる可能性が高いでしょう」(同上)
弁護士「できる限り早く謝罪を」
その上で伊﨑弁護士は、犯人らに対し「被害届が出されれば、たとえ被害額が少額であったとしても、警察が捜査を進める可能性が高いです」と忠告する。「そうなると、逮捕されてしまったり、最悪の場合は有罪判決が確定し前科がついてしまうなど、法的リスクはかなり高い状態にあるといえます。
一方で、先述した通り、被害届が出されなければ、警察が捜査を進める可能性は低いです。被害届を提出されないよう、できる限り早く被害者に謝罪、被害弁償をすることが重要だと思います」
バルト館では、窃盗被害に遭ったことを投稿して以来、訪れた来場者からぬいぐるみの寄贈が相次いでいるという。バルト館の担当者は報道に対し、寄贈に感謝しつつ「(盗まれたぬいぐるみが)返ってくること、まだちょっとだけ待ってます」と語っている。