N党・立花孝志氏への“刑事告訴”を警視庁が受理 「みんなでつくる党」時代の3.5億円“自己貸付”一部が「横領」か?
政治団体「みんなでつくる党」(大津綾香代表)が、同団体の元代表で現在は政治団体「NHKから国民を守る党」代表の立花孝志氏を、業務上横領罪(刑法253条)の疑いで警視庁に刑事告訴し、27日付けで受理されたことがわかった。
被疑事実は、立花氏がみんなでつくる党の代表だった当時、立花氏個人に対し無利子・無担保で貸付を行ったことが「横領」にあたるというもの。
同団体から立花氏個人への貸付は複数回にわたり、金額は総額3億5000万円にのぼるが、現在に至るまで回収に至っていないとのこと。
告訴の対象はそれらの貸付行為の一部。具体的にそのうちどの貸付が横領に該当するのか、および被害額などの詳細は「捜査に支障があるため」として明らかにされていない。
同日、みんなでつくる党代表の大津綾香氏は記者会見を開き、「私が代表者にならなければ見過ごされてきた問題だと思う。政党に関する法律は『政治活動のため』を言い訳にやりたい放題できることになりかねず、警察もなかなか動かないと感じている。それでも、今回はようやく警察が動くに至る程度の証拠資料を提出できた」と述べた。

問題は「自己貸付が横領行為にあたるか」

業務上横領罪は、「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合に成立する。立花氏は業務上、みんなでつくる党(前身の団体も含む)の資金という「他人の物」を、同団体の代表という「業務」上、管理する立場にあったので、同団体の委託を受けて「占有していた」といえる。
問題は、立花氏による自己貸付が「横領」にあたるか否かである。横領行為は、「不法領得の意思」の発現行為をさす。
そして、不法領得の意思とは、判例によれば「委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」をいう(最高裁昭和24年(1949年)3月8日判決)。
典型的には、団体の資金を管理する権限をもつ者による「権限逸脱行為」がこれに該当するとされている。
立花氏は「みんなでつくる党」(前身も含む)の代表者だったのであり、同団体の資金を管理する権限をもつ立場にあった。
みんなでつくる党の代理人の石森雄一郎弁護士は、立花氏が代表として行った自己貸付が「権限逸脱」に該当する疑いについて、以下のように説明した。
石森弁護士:「国政政党から代表者個人に『自己貸付』を行うことは典型的な『利益相反行為』にあたり、代表者にはそれを行う権限がない。
『特別代理人』を立て、その特別代理人が決裁をしなければならないが、その手続きが行われたことを推認させる事情が見受けられない。
この点については、すでに民事訴訟において立花氏に説明を求めており、立花氏は一定の説明を行ったが、それを裏付ける証拠を出していない」
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みんなでつくる党の代理人・石森雄一郎弁護士(27日 東京都千代田区/弁護士JPニュース編集部)

「不法領得の意思」「動機」を推認させる「私的流用の疑い」も

加えて、「不法領得の意思」を推認させる事情として、自己貸付(業務上横領罪の対象とされる行為)の後に立花氏が借入金を「私的流用」した疑いについても言及した。
石森弁護士:「立花氏は、過去の大津さんとの民事裁判で、自己貸付を受けた額の使い道について一定の説明はしているが、その説明を裏付ける証拠提出というものを全く行っていない。
ただし、裁判所から『本件政党の資金を不正に使用した可能性があるという限度においては立証できている』という判断は得ている」
具体的に私的流用が行われた形跡もあると指摘する。
石森弁護士:「たとえば、立花氏自身が昨年、党の債権者を集めた集会で、借入金のうち1000万円程度を、『ドッグラン付き民泊』を経営するための土地購入資金に充てたという趣旨を述べている動画がある。
この点について、昨年12月(13日)に(ジャーナリストの)選挙ウォッチャーちだい氏が直接立花氏に取材した際、その土地が兵庫県洲本市にあるということを聞き出しており、それに合致する立花氏個人の所有名義の土地を特定できている。
(横領した金銭の)使い道の全体像は分からないが、立花氏の発言から、少なくとも、その土地の購入代金に相当する金額は、自己貸付を受けた額の中から出たものと推測している」

「でたらめな支出の象徴」と指摘

石森弁護士によると、みんなでつくる党の資金はもともと、同団体の前身である「NHKから国民を守る党」のときに立花氏が以下の通り、YouTubeを通じて不特定多数人に呼びかけ、2回にわたり、計13億円、借入をしたものである。
  • 2019年11月、約5億円借入(1口100万円・年利5%)
  • 2021年11月、約8億円借入(1口100万円・年利5%)
いずれも期限の定めのない消費貸借契約(民法591条1項)、すなわち、みんなでつくる党が債権者から返済を求められた場合には、相当期間内に利息とともに返済する義務を負う。
この借入金について、債権者(つまり、前身の「NHKから国民を守る党」の際に同団体に貸付を行った人)が、みんなでつくる党の破産手続きを申し立て、昨年3月に破産開始決定がなされた(負債額は約11億円)。
石森弁護士は、この破産開始決定がなされる過程で、告訴対象となる横領行為を含む、総額約3億5000万円の立花氏への「自己貸付」が大きく影響していると指摘した。
石森弁護士:「みんなでつくる党が立花氏個人に貸し付けた3億5000万円の債権は、党が対外的に保有している最大の債権だ。
したがって、これが立花氏から返済されないことは、破産開始決定に大きく影響している。
そもそも党の借入金債務は、大津さんが代表を引き継いだ時点で約10億5000万円あった。それが返済不能な状態に陥ったことには、立花氏が代表を務めていた期間に党を代表して行ったでたらめな支出が大きく影響していると推認される。
立花氏個人への3億5000万円の自己貸付は、そういったでたらめな支出の象徴だと考えている」


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