「ボロ雑巾でも捨てるかのよう」合理的根拠ない事業所閉鎖により“解雇”通知 非正規労働者らが「抗議のストライキ」決行
5月29日、東京新宿区の(株)スリーエスコーポレーション東京支社前に、同社の非正規雇用労働者の労働組合(日本労働評議会スリーエス分会)員約30人が集結。同社が宇都宮営業所を合理的理由なく閉鎖し、非正規雇用労働者を不当に解雇したとして、ストライキで抗議行動を実施した。

解雇の理由は、労働者が東京支社への異動を拒否したことにある。
「会社は昨年10月に突然、宇都宮営業所を閉鎖し、勤務していた労働者に対して東京支社へ異動させると言い出しました。閉鎖理由は赤字と、現場件数の減少とのことで、東京支社及び神奈川支店から出動して仕事をこなし、残りは外注業者に依頼するという方針を述べてきました。
しかし、宇都宮営業所は3人のアルバイト労働者が在籍し、10年以上の勤続を誇り、仕事の能力も高く重要な戦力として機能していました。
会社側から引っ越し費用の提示などもありましたが、3人とも宇都宮で家族を持ち、東京に異動することは無理でした。なによりも宇都宮営業所をいますぐ閉鎖する理由が不明でした」
抗議行動に参加した同労組のひとりはこう明かし、会社側の対応に不信感をあらわにした。

営業所閉鎖の合理的な理由の説明はなし

同営業所については、確かに仕事は減っていたものの、年間で500件以上の受注があり、赤字でもなく、その維持に多大な費用が掛かるわけでもないという。
むしろ、北関東エリアの工事拠点として、同営業所がある方が仕事をこなすうえで機動性が発揮できるというのが労組側の言い分だ。
労組側は営業所閉鎖の撤回を求め、粘り強く団体交渉を重ねたが、平行線をたどり、結局、合理的な理由が説明されることのないまま、「決めたことだからやる」という結論に至ったという。
そうしたなか、同営業所労働者3人のうち2人は非組合員でもあり、諦めて退職。そして今年4月末、会社側は閉鎖を強行。閉鎖反対で闘っていた宇都宮勤務の組合員に対し、東京勤務を拒否したことなどを理由に5月末日での解雇を通知したという。
労組側は、当該職員が直行直帰で対応するなどの妥協案も提示。
会社側も当初は前向きだったというが、最終的には「前例がない」などの理由で認められず、この日を迎えることとなった。
内装リフォーム全般を手掛けるスリーエスコーポレーション社は1992年の創業。京都に本社を構え、東京支社、神奈川支店、名古屋支店、福岡支店など全国に拠点を持つ。
施工現場には正社員もいるが、約8割が非正規のアルバイト労働者や外注の作業員らという。10年以上非正規として現場作業に従事するひとりも「仕事内容はほぼ同じで、正社員との差は明確でなかった」と明かす。

抗議活動は2度目

同労組がこの場所で抗議活動をするのは、実は2度目だ。2022年にも、組合員であることを理由に「愛社精神がない」として、会社側が正社員化を拒んだことに対し、ストライキを決行している。
「ボロ雑巾でも捨てるかのよう」合理的根拠ない事業所閉鎖により...の画像はこちら >>

情宣活動を行うなど組合員は精力的に動き回った(弁護士JPニュース編集部)

この事案については、5月21日に東京都労働委員会(都労委)が不当労働行為と判定し、申立て事実の全部の救済を認める命令を出している。「労使関係において見られた本件組合員らの会社に対する態度や言動を最大の理由として、それ以外の要素は十分に検討せずに本件申入れを拒否したとみるべき」などがその判断理由だ。
それ以前にも同労組は、いわゆる偽装請負からアルバイト雇用への無期転換、時給750円・残業代なしの状況からの脱却など、地道な活動により一歩ずつ労働環境の改善を手繰り寄せ、正社員との待遇差解消に努めてきたという。

極めて自分勝手な暴挙

日本労働評議会の顧問弁護士・指宿(いぶすき)昭一弁護士が力を込める。
「今回の会社の対応は労働者を、とりわけ非正規雇用をまるでボロ雑巾でも捨てるかのように会社の都合だけで簡単に捨て去るものであり、企業として労働者の雇用を守るという重要な社会的責任を放棄した、きわめて自分勝手な暴挙であると認識しています。
したがって、宇都宮営業所の閉鎖撤回と不当な解雇通知の撤回を求めてストライキを決行します。
このストライキ闘争は全国の非正規雇用労働者の共通した不満や怒り、要求を代表する闘いでもあると考えています」
パートや有期雇用労働者の待遇については、公正な待遇実現を目的とする「パートタイム・有期雇用労働法」が2021年4月に全面施行。同一企業内における通常の労働者とパートタイム労働者及び有期雇用労働者間の不合理な待遇差をなくし、いかなる雇用形態でも待遇に納得して働き続けられる、法的な後ろ盾も整備されている。
それでもなお、正規・非正規間の待遇格差は十分に改善されているとはいえない状況が続いている。
事業所閉鎖で解雇を通告された組合員のAさんは、次のように思いを吐露(とろ)した。
「4月30日、メールで5月末で解雇と告げられました。営業所を閉鎖する理由として『ただ将来が不安』とするだけで合理的理由の説明もなく、(異動の命令に従わなかったことを理由に)解雇され、とうてい納得がいきません。
12年間現場を納め、時には夜中まで作業し、会社の売り上げにも貢献してきました。子どももいて、家族や両親とも暮らしており、宇都宮を離れられません。
そのため、せめて正社員が普通に行っている直行直帰で仕事をさせてほしいと要求しましたが、拒否されました。アルバイトですが、正社員と同等に働いてきました。今回の解雇は、雇用義務を放棄し、人の人生をないがしろにし、非正規を使い捨てる行為であり、怒りが収まりません」
本件についてスリーエスコーポレーションにコメントを求めたが、現在まで回答は得られていない(29日18時時点)。


編集部おすすめ