中居正広氏(52)の元女性アナウンサーAさんへの性加害問題をめぐって、フジテレビの親会社のフジ・メディア・ホールディングスは5日、フジテレビの港浩一前代表取締役社長(73)と大多亮前専務取締役(66)を提訴すると発表した。
同社の元ツートップに対して、トラブル発生時の不適切な対応により会社に多大な損害を生じさせたとして、経営責任を追及し、損害賠償請求を行うという。
(中原慶一)

「株主総会」での“矛先”をかわす目的か

スポーツ誌放送担当記者は、この動きは6月25日のフジ・メディア・ホールディングスの株主総会を見据えてのことではないかと指摘する。
「すでに、日枝久前取締役相談役(87)と港浩一前社長を含む15人は、株主代表訴訟を起こされています。今回のふたりの提訴は、株主の同社に対する批判の矛先をかわす目的があるという見方が強い。
実際、ホールディングス全体で、2025年3月期連結決算で、純損益201億円の赤字となっており、このふたりの損害賠償請求は数千万から億単位になるのではないかという憶測もあります」
この問題はいよいよ法廷に持ち込まれることになるが、フジテレビの中居氏に対する今後の対応も気になるところ。

関係者への処分は「大甘」?

一方、5日の会見では、第三者委員会が3月31日に公表した調査報告書に名前のあがったフジテレビ社員に対しての処分も発表された。
「会見で最も注目されていたのは、Aさんを中居氏との食事会などにアテンドし、第三者委員会の言う、Aさんに対する“性暴力”に関与したとされる当時編成局長だったB氏(報告書の表記=以下同)への処分です。
3月の会見では、フジテレビの清水賢治社長(64)は『相当、問題のある社員である』と公言していましたから、当然『懲戒解雇』の処分が下されると思われていましたが、結局、4段階の『降格』と1か月の『懲戒休職』のみで、会見を取材していた記者からはどよめきが起こりました」(前出の記者)
しかし、この処分については、別の見方もあるようだ。この記者が続ける。
「B氏は現在、人事局付となっていますが、もし解雇となったら、洗いざらいをぶちまけると周囲に話していたと報じているメディアがあり、これが関係して、大甘処分の温情的措置になったのではないかという見方もあります」
他に処分された社員といえば、トラブルの報告を受けていながら対応をしなかった元編成局長G氏(50%減俸)、当時の編成制作局アナウンス室長E氏(けん責)、当時の報道局長(2か月2週間の懲戒休職)などがいる。
処分を発表した清水社長は、「懲戒処分等の内容を議論する賞罰審査委員会は合計5日間、6回に分けて合計12時間以上の審議を重ねて判断に至った」として、外部の弁護士などにも助言を受けたと説明した。

「懲戒処分」とはどのようなものか?

同社の就業規則によれば、懲戒処分は、重いものから順に、「懲戒解雇」「退職勧告」「降職または役位はく奪」「懲戒休職」「謹慎」「減給」「けん責」「戒告」となっているという。
これらの処分は具体的にどのようなものなのか。同社に限らず一般のサラリーマンにも興味深いところではある。法律事務所関係者が解説する。
「軽いものから順にいくと、『戒告』や『けん責』は、口頭または文書による厳重注意のことです。
一般的に、けん責のほうが始末書や反省文の提出を求められる分、処分として重いと考えられています。
それに続くのが『減給』、これは賃金から一定額を差し引くものです。ただし、労働基準法(91条)により制限が設けられています。減給1回当たりの上限は平均賃金の1日分の半額までです。また、数件の懲戒事案について減給処分を科す場合には、その総額の上限は、1賃金支払期(月給の場合は月給)における賃金の総額の10分の1までです。
その次に重いのが、『出勤停止』処分です。フジでいうところの『懲戒休職』や『謹慎』はこれに類するものです。出勤しなければその分だけ給料が削られるので、厳しい処分です。ただし、期間が懲戒事由の重さとの比較で不相当に長期にわたる場合には、無効とされる可能性もあります。
その次が、フジテレビでB氏にも適用された『降格』です。これにより役職手当や仕事上の権限が剝奪され、賃金が下がることが多いです」

懲戒処分としての「解雇」の要件

そして最も厳しいのは解雇、いわゆる“クビ”だ。
「企業が従業員を解雇することは一般的にハードルが高く、これを出すのは相当な理由が必要となります。

まず、『退職勧告』は、情状を考慮し、自分から退職することを促すものです。これを受けて退職した場合は、一般的に『諭旨(ゆし)解雇』とも言われ、自己都合退職扱いになるので退職金が一部または満額支払われるケースもあります。
もし、退職勧告を受けたにもかかわらず退職しない場合には、次に述べる『懲戒解雇』が想定されています。
『懲戒解雇』は、会社が一方的に従業員との雇用契約を打ち切る処分です。ただし、客観的合理的理由と社会通念上の相当性が厳しく問われます。解雇を不服とした労働者側からの申し出により、“不当解雇”のトラブルに発展する場合も少なくありません」
一般的に、企業が「懲戒解雇」の厳罰を出すケースとしては、「業務上横領、たび重なる業務命令の無視、セクハラ・パワハラ、一定期間以上の無断欠勤、重要な経歴の詐称など、重大な問題があるケース」(前出=関係者)だという。
今後、株主総会などで、フジテレビのB氏のケースが、前述の懲戒解雇事由に該当し得るのではないかということが、問題とされる可能性は否定できないだろう。


■ 中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。


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