自転車の傘差し運転「反則金5000円」は来春からだが…悩ましい“梅雨シーズン”の移動、ペナルティー受けないための知恵と備え
一部エリアを除き、全国的に傘が必需品の梅雨シーズン真っただ中。自転車が生活の一部となっている人にとって、悩ましい季節だ。

現在も取り締まり対象の自転車での「傘差し運転」は、2026年4月から道路交通法(道交法)の改正で反則金の対象となる。
いわゆる「青切符」での取り締まりとなり、より厳しくなる中で、うかつにペナルティーを受けないためには、いまのうちから抜かりなく準備しておくのが賢明だ。

自転車の傘差し運転はなぜ罰則対象なのか

まず大原則として押さえておくべきは、自転車を含め車両等の運転者には「安全運転の義務」(道交法70条)があるということ。
具体的には「ハンドル・ブレーキ・その他の装置を確実に操作し、かつ、道路・交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められている。
この条文にある「ハンドル・ブレーキその他の装置を確実に操作」するうえで、片手では十分といえない。傘を差しながら自転車に乗れば、当然、片手運転を強いられ、走行に支障をきたす可能性があり、違反となる。
罰則は同法119条1項14号の規定により、3月以下の拘禁または5万円以下の罰金だ。
片手では不安定なため、傘のグリップ部分を握りつつ、ハンドルも握り、雨中の自転車走行をしている人も見かけるが、これもアウトだ。
また、道交法は「運転者の遵守事項」として「道路または交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」を遵守する義務があることを定めている(71条6号)。
ここでいう「公安委員会が定めた事項」は、各都道府県の公安委員会が「道路交通法施行細則」などによって定めた事項を指す。
たとえば、東京都道路交通規則には、「傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、又は安定を失うおそれのある方法で、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと」(8条3号)と明記されている。なお、他の道府県でも、多くは同様の定めがおかれている(以下同じ)。
これにあてはめれば、傘をさして自転車に乗っている時点で、安定を失うおそれがあり、交通違反ということになる。
従って、‟両手”でも違反となる。

器具で傘を固定して自転車を運転するのはOK?

では、傘を自転車に器具で固定し、傘を差した状態でハンドルを両手で握って自転車を運転することは問題ないのか。
結論からいえばこれもNGである。
なぜなら、前述の東京都道路交通規則8条3号は、傘を差して運転すること自体を禁じており、器具で固定しているか否かは関係ない。
また、自転車に傘を固定すると「積載物」にあたるが、自転車の横幅+0.3mを超える積載物は禁止されているため(同規則10条3号イ)、多くの場合、開いた傘の横幅がこの制限に抵触するとみられる。

来春から青切符導入で反則は5000円に

このように、自転車での傘差し運転は安定を失うおそれがある方法であるばかりではなく、法令等で禁止された行為であり、アウトと認識しておいた方がいい。
そうした中で、2026年4月からは自転車の違反にも青切符が適用される。道交法違反に対し、反則金を支払うことで刑事罰を科さない制度で、警察庁は113の具体例と、それぞれの反則金を発表している。傘差しもその対象となっており、反則金は5000円だ。
同制度の適用により、刑事罰が科されない選択肢ができた反面、ペナルティーを受けやすくなったともいえる。自転車ユーザーは、これまで以上に交通ルールを意識して運転することが求められる。
この制度適用にあたり、警察庁は指導取り締まりの基本的な考え方を公開している。簡単にいえば、取り締まりのボーダーラインだ。
それによれば「悪質性・危険性が高くないケースは引き続き、指導警告」であり、「悪質性・危険性の高いケースでは取り締まり」の対象になる。

傘差しのケースでは、具体例として傘を差しながら一時停止を怠った場合は、悪質・危険と判断し、取り締まるとしている。
雨と傘で視界が不良になり、ハンドル操作も不安定になる自転車の傘差し運転。今後、警察の目がより厳しくなることは認識しておいた方がいいだろう。

雨中の自転車のもう一つの選択肢

雨の日の自転車利用には、レインウエア着用という選択肢もある。もちろん、傘差し運転のように規制がかかることはないが、注意点がある。
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レインウエアは法的問題はないが、物理的問題も(ringoame / PIXTA)

国民生活センターの調査では、レインウエアでの自転車運転時に危険を感じた人は36.4%だったと報告されている。その理由として「周りがみえなかった」「雨具が巻き込まれそうになった」などが挙げられている。
そこで同センターは、消費者へのアドバイスとして、レインウエアの裾や、レインスーツのドローコードが駆動部と接触していないか確認すること、フードの調整装備を正しく使用することなどをアドバイスしている。
雨中の自転車移動は路面状態が悪く、視界が狭くなるなど、運転者が注意したとしてもそもそもリスクが高い。自動車では事故件数が4倍になるとのデータもある。
できることなら、雨天時は自転車移動はあきらめ、電車やバスなど代替の交通手段に切り替える。
自転車の傘差し運転に関連するさまざまなリスクを考慮すれば、そうした想定をしておいても、メリットこそあれ、不利益を被ることはないだろう。



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