「スイッチ2」任天堂が“圧力”もフリマサイトでは出品が相次ぐ… 「高額転売」の“違法化”が必要な理由
6月11日、任天堂は新型ゲーム機「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ2=以下スイッチ2)」について、5日の発売から4日間で世界累計販売台数が350万台を超えたと発表した。この数字は2017年に発売された初代「ニンテンドースイッチ」の約2倍にあたる水準であり、同社のゲーム機としては歴代最高の記録になるという。

スイッチ2の発売にあたっては、「転売」を防ぐため任天堂とメルカリなど大手フリマサイトが協力してスイッチ2の出品を規制する取り組みを行ったことも話題に。
ゲーム機やゲームソフトに限らず、キャラクターグッズやコンサート・公演のチケット、そして日本人の主食である「お米」まで、近年ではさまざまな商品の転売行為が社会問題となっている。
“転売ヤー”に対する批判の目も強くなるなか、転売に対して強硬な姿勢を示した任天堂の取り組みにはネット上でも賛成する意見が目立った。一方、他の商品の転売が依然として野放しにされるなかスイッチ2の出品にのみ規制を実施したフリマサイトに対しては、冷ややかな視線も向けられている。

メルカリ・楽天ではスイッチ2が現在も出品中

5月27日、任天堂は「フリーマーケットサイトを運営する株式会社メルカリ、LINEヤフー株式会社、および楽天グループ株式会社の事業者3社と、2025年6月5日に発売する『Nintendo Switch 2』を含む当社関連の商品の不正な出品行為を防止する取り組みにおいて、協力することに合意しました」と発表。
Yahoo!オークションおよびYahoo!フリマを運営するLINEヤフーは、16日の時点で、スイッチ2の出品禁止を継続している。
一方、メルカリの対応は「悪質な詐欺行為等、利用規約等に抵触する可能性のある出品の削除」やスイッチ2の本体の出品におけるオークション機能の利用停止にとどまった。楽天ラクマを運営する楽天グループも「不正出品を防止する取り組みを行う」と発表したが、スイッチ2の出品を禁止してはいない。

「スイッチ2」任天堂が“圧力”もフリマサイトでは出品が相次ぐ...の画像はこちら >>

16日時点でのメルカリのスイッチ2(日本語・国内専用)の出品状況

スイッチ2の定価は、日本語・国内専用版は約5万円。メルカリと楽天ラクマでは、発売直後には定価の倍にあたる10万円で取引されるケースもあったという。16日の時点では比較的落ち着いているが、それでもメルカリでは定価より高い6万円から7万円での出品が目立つ状況だ。

転売行為は「違法」にならないのか?

転売行為に対する規制を求める声は根強く存在している。しかし、現在の日本では、個人や業者が行うゲーム機やキャラクターグッズ、食料品などの高額転売は違法にならない。
一方、コンサートや舞台、スポーツイベントなどのチケットの転売については2019年から施行された「チケット不正転売禁止法」によって禁止されている。
また、「本来の購入者」のみの利用を想定された商品サービスを、本来の購入者と偽って利用した場合には詐欺罪にあたる。さらに、転売行為を継続的かつ事業的な規模で行う場合には古物営業許可が必要となる。
しかし、一般的な「転売行為」がそのまま犯罪となるわけではない。
法律と市場の関係に詳しい杉山大介弁護士は「いわゆる『高額転売行為』についてであれば、法規制によって違法化・犯罪化することは憲法上許容されるでしょう」と語る。
「商社などの流通行為と、いわゆる『転売ヤー』の行為の違いは、経済学的にも説明が可能です。
一般的な商社などの行為は、ある商品についてエンドユーザーのアクセスの機会を広げることによって、価値を生み出しその対価を得るものです。そのため、経済学的にも正当化される行為です。
対して、転売ヤーの行為とは、あえて一般ユーザーが商品にアクセスする機会を遮断・減少させたうえで、その商品を本来の価値以上の値段で買わせようとする行為です。
たとえると、商社などは道路を作って交通を良くしたうえで手数料をもらっている一方、転売ヤーは道路に障害物を置いて『通りたければ通行料を寄こせ』と迫っているようなものです。
そのため、経済学的にも法的にも、転売ヤーの行為を促進する必要は何一つなく、ただただ有害な存在として排除すべきものと断じられます」(杉山弁護士)
ただし、法技術的には、高額転売行為という有害物だけを対象にした条文を作ることは難しい。それが、現状では転売ヤーに対して抜本的な法的措置ができていない理由だ。
しかし、上記はあくまで技術的な問題であり、法律の理論的には高額転売行為は規制すべきものである、と杉山弁護士は強調する。

任天堂がフリマサイトに“圧力”をかけたのは「良いきっかけ」

5月23日、マクドナルドはハッピーセット「ちいかわ」第2弾の発売を開始。そして日本マクドナルド株式会社は公式サイトで「転売または再販売、その他営利を目的としたご購入はお控えください」と呼びかけていた。
しかし、メルカリなどでは「ちいかわ」の転売が相次ぎ、SNSでは「転売ヤーを放置するフリマサイトはおかしい」などの批判も殺到した。
各フリマサイトがスイッチ2の出品などは規制しながら、他の商品の高額転売は許容し続けるのであれば、商品を販売する企業間で不公平な状況が生じるおそれもある。
マクドナルドは任天堂と同じく大企業であるものの、中小企業にとっては、フリマサイトが企業間で対応に差をつけることは深刻な問題になる可能性もあるだろう。
杉山弁護士も「大手企業が圧力をかけた場合にしかプラットフォーム(フリマサイト)が応じないのであれば、やはり、国家的に、法規制という形でプラットフォームに対して圧を加えていくしかないでしょうね」と語る。
「前述のとおり、マクロな意味での『社会全体の利益』という観点からも、ミクロな意味での『エンドユーザーである消費者の利益』という観点からも、転売行為を放置していわゆる転売ヤーに利益を享受させることには、負の側面しかありません。
個々の行為者だけでなく、プラットフォームも、これまで10年以上、ただただそのような不当な利益の上前をはねて放置してきました」(杉山弁護士)
そして、スイッチ2の転売規制をフリマサイトに呼びかけた任天堂の行動は「良いきっかけ」であったという。
「他の業者も、プラットフォームに圧力をかけるべきです。
そして、それが成就しないのであれば、国民が国に対し、プラットフォーム側をしめあげる法規制の必要性を訴えて圧力をかけていくのが、社会と一般消費者の利益にかなうと思います」(杉山弁護士)


編集部おすすめ