バババババババババ! 爆音バイクに「ダサすぎ」「この世で一番嫌い」…“不正改造車”自己顕示欲が招く、あまりに大きな代償
バババババババババ! ヴォンヴォンヴォンヴォン! パーン!
東京都内に住むAさんは、夜中に集団でやってくるバイクの音に悩まされている。Aさんの自宅は片側2車線のバス通り沿いにあり、昼間は交通量が多いものの、夜は一転。
ほとんど車両の往来がなくなる。
「道もまっすぐにのびているので、たしかに走るには気持ちのいい場所なのかもしれません。でも、テレビの音をかき消すほどの爆音をとどろかせ、集団でやってくるのはただただ迷惑。本人たちは『かっこいいだろ?』と思っているのかもしれませんが、自己顕示欲のために周りが見えなくなっているなんて『ダサすぎ』のひと言につきます」(Aさん)
SNSにも同様の不満を投稿している人は少なくなく、「この世で一番嫌い」「ゴミ」「駆逐してくれんかな」など辛辣(しんらつ)な声も散見される。

「不正改造」は犯罪

すべてにあてはまるわけではないが、エンジン音が不自然に大きな車両は「不正改造車」にあたる可能性がある。
道路運送車両法は不正改造を禁止しており(99条の2)、これに違反した場合は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科せられる(108条1項)。
法が定める不正改造とは、保安基準に適合しなくなるような自動車(125ccを超えるバイクを含む)の改造、装置の取り付け、取り外し等。国交省は具体例として、次の9項目をあげている。
1.灯火類の灯火の色等
2.運転席および助手席の窓ガラスへの着色フィルムの貼り付け
3.ディーゼル自動車の排出する黒煙
4.タイヤおよびホイールの車体(フェンダー)外へのはみ出し
5.突入防止装置の切断・取り外し 荷台さし枠の取り付け
6.消音器(マフラー)の切断・取り外し
7.前面ガラス等への装飾板の取り付け
8.基準外のウイングの取り付け
9.速度抑制装置(スピードリミッター)の解除・取り外し
冒頭のAさんを悩ませているような大きなエンジン音は、「6.消音器(マフラー)の切断・取り外し」によって発生していると考えられる。
これを禁止とする法的根拠は、国土交通省令「道路運送車両の保安基準」の30条2項(内燃機関を原動機とする自動車には、騒音の発生を有効に抑制することができる消音器を備えなければならない)。
また、国交省はこのような改造を禁じる理由として「基準不適合マフラーの装着や消音器の取り外しにより騒音が増大し、周囲に多大な迷惑を与えることとなるため」と述べている。

事故リスク軽視、罪の意識も希薄?

不正改造は騒音問題だけでなく、事故を引き起こす要因にもなり得る。2023年には、北海道・札幌市の市道で、走行中だった軽自動車から外れたタイヤが当時4歳の女児にぶつかり、重体となる事故が発生。事故を起こした車両は、タイヤ部分が突出するよう不正に改造されていた。

今年4月、札幌地裁は車のドライバーに対し懲役3年・執行猶予5年、車の所有者に対し罰金20万円の判決を言い渡した。事故から2年弱が経つ今も、女児は意識不明の状態が続いている。
ところが、不正改造をしている当事者たちの中には、事故のリスクを軽視し、罪の意識も希薄な者が一定数いるようだ。関西テレビは昨年、警察や国土交通省による取り締まりに密着した動画を配信(2024年7月11日)。
警察に指導された不正改造車の運転手は、記者に話を聞かれると「あー、しんど」「きょう(違反を)直して持っていって、家に帰ってまた元に戻します」と話していた。
国交省では1990年から、毎年6月を「不正改造車を排除する運動」強化月間として啓発活動に取り組んでいる。
公道における街頭検査にも年間を通して力を入れており、検査車両数は増加、それによる不正改造車への整備命令の件数は、【図】にあるもっとも古い平成20年(2008年)の2868件から令和6年(2024年)は902件と3分の1ほどに激減しているものの、いまだ「撲滅」には至っていないのが現状だ。
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【図】街頭検査の結果(国土交通省公式サイトより)

同省の担当者は弁護士JPニュース編集部の取材に対し、「(不正改造は)明らかな犯罪だが、それを認識しながらやっている人がいる。車検のとき一時的に直してすぐ元通りにする人に対しては、街頭検査で抜き打ち的に排除を続けている」と話す。

不正改造車を見つけたら「通報窓口」へ

また国交省では、「不正改造車を排除する運動」の取り組みの一環として「不正改造車・迷惑黒煙車情報提供窓口」を設置。
具体的には、管轄運輸局のURLから通報フォーム(webまたはメール)に必要な情報を送ると、精査の上、当該車両のユーザーに改善・報告を求めるハガキを送付するなど、不正改造車を排除するための活動に役立てるという(詳細は国交省公式サイト「不正改造車・迷惑黒煙車情報提供窓口」で要確認)。
不正改造車による騒音や危険行為は、単なる迷惑を超え、重大な事故につながるリスクもはらんでいる。一時的な自己満足が、一生かかっても取り返しのつかない代償を負うきっかけとなり得る恐ろしさに、当事者たちが目を向ける必要があるだろう。



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