たとえば家賃を下げられればその分、毎月の出費を減らせ、生活費の充実に回せる。「家賃はいますぐ下げれます」。そう明言するのはフリーライターの日向咲嗣氏。ここでは、そのための考え方・ノウハウを同氏が伝授する。
※この記事はフリーライター・日向咲嗣氏の書籍『家賃はいますぐ下げれます』(三五館シンシャ)より一部抜粋・再構成しています。
生活コストのカットを実現する行動原則
生活コストのカットは、「比較する」という行動原則によってのみ実現可能である。すなわち、一種類の商品だけをみて決めるのではなく、AとB、 あるいはC、Dと、対象分野における複数候補を比較して、そのなかから一番有利なものを選択することで初めてコストは下がるのである。
一社に工事を依頼して値引きをお願いするよりも、数社に見積もりを出してもらって比較検討したほうが、事業者間の競争原理が働いて、費用は安く済むのと同じ理屈だ。
不動産がコストカットの対象として難しい理由
ところが、不動産の話となると、この「比較する」のが、ことのほか難しくなる。「部屋は新しくてきれいだけど、間取りがいまいち」とか「家賃は安いけれど、駅から遠い」といったふうに、いろいろな要素が複雑にからみあってくるため、比較しても単純に「こっちが有利」とは判定しにくいからだ。
そこで、はっきりさせておきたいのが、評価の基準である。
「とにかく住居費を安くしたい」場合は、ズバリいま住んでいる部屋が絶対的な基準となるわけだから、その条件をまずは整理して書き出しておくのが先決だ。
〇〇線沿線(〇〇県〇〇市)/〇〇駅徒歩8分/マンション/2LDK(40平米)/3階 南西向き/管理人常駐/家賃8万円 (管理費3000円)/敷2礼1
・・・・・・といったふうに書き出しておくと、引っ越し先を探すときには、候補の物件同士を比較するのではなく、常に、いま住んでいる部屋の条件との比較だけで点数を出しやすい。
めざすは、いまと同等もしくはそれ以上の条件でありながらも、 家賃などの費用が確実に安くなる物件である。
5年以上同じ家賃で住み続けている人ならば、いまと同じ家賃で、築年数が新しくなった広い部屋で、なおかつより駅に近いところに住めるだろう。
部屋探しは「急いては事を仕損じる」の典型
たくさんの選択肢のなかから比較したほうが、より安くなるのはわかっていても、それができないこともある。ソンをする行動パターンの最たるものが「急ぐ」ことである。時間をかけてじっくり、あちこち見てから決めれば、より有利な選択ができるのに、選択期限のデッドラインが迫ってから慌てて行動すると、ソンな選択肢に飛びつかざるをえなくなる。
部屋探しでいえば、「もうすぐ更新期限がくるので、急いで次を見つけたい」ようなときには、トクな選択をするのは、かなり難しいだろう。世間の引っ越しシーズン(1~3月)に重なりでもしたら、短期間で安い物件にありつくのはなおさら困難である。
たまの休みに、一日がかりで不動産屋を回ってみても、比較できるのは、営業マンが案内してくれるいくつかの物件のみ。出掛ける前に、散々ネットで検索した激安物件は、駅前の不動産屋では、なぜか案内してくれない。午後から探し始めたりすると、 日が傾いてきたころには、「このへんで決めるしかない」と焦りの気持ちが次第に募ってくる。
たいして比較をしていないのだから、これでは有利な選択ができるわけがない。
焦るならダラダラの方がリスクはほぼゼロ
一番有利なのは、「いつでも、いいところがあったら決めたい」というスタンスで、より長期にわたって情報収集を続けていくことである。「いいところがなければ選択しない」でいい、 つまりいまの部屋に住み続ければいい。
優柔不断でなかなか決められず、ダラダラ探し続ける恐れはあるものの、焦ってソンな選択を強いられるリスクは、ほぼゼロ。
そうして時間をかけているうちに、引っ越しシーズンは終わり、 埋まらなかった部屋の家賃は徐々に下がっていく。
大家さんとすれば、選択してもらわなければ“在庫”を抱えたままで1円にもならないのだから下げざるをえない。賃貸物件も家電製品と同じである。
待ちの姿勢を持てるかどうかで、立場は大きく変わってくる。
「いますぐに決めないといけない」切羽詰まった人には、価格を安くする必要はないからだ。
したがって、引っ越しを決断してから情報を集めるのではなく、 ふだんから常に家賃動向をチェックしておき、もしチャンスがあれば、いつでも動けるように、心の準備だけはしておくことが大切である。(続く)
<日向咲嗣 ひゅうが・さくじ>
1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経て、フリーライターに。「転職」「独立」「副業」「失業」問題 など職業生活全般をテーマに著作多数。失業当事者に寄り添っての執筆活動が評価され、2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。