「国分太一は一体、何をしたの?」
日本テレビの福田博之社長により6月20日に突如、発表された人気アイドルグループ「TOKIO」の国分太一(50)の番組降板、そしてその5日後に発表されたTOKIOの解散に多くの人がモヤモヤを抱えたままだ。(敬称略)
福田社長は会見で、1995年から続いていたTOKIOの人気番組『ザ!鉄腕!DASH!!』から、国分を降板させた理由について、「複数のコンプライアンス違反」を挙げたが、その具体的な内容は「プライバシーの保護」を理由に明かさなかった。

会見では多くの記者が繰り返し質問したが、「被害者がいるかどうかについても申し上げられない」として、「ご理解いただきたい」の一点張り。ただ、「刑事告訴事案ではないので(刑事告訴は)考えていない」と答えていた。
「コンプラ違反」とはどういうものなのか。われわれ一般人が仕事をする上で、あるいは日常生活で、どのようなことに気を付けるべきなのか。(中原慶一)

真相は「ブラックボックス」のまま“幕引き”か

31年間続いた国民的人気グループが一瞬にして解散し、本人も問答無用で活動休止に追い込まれる事案とは一体何なのか。
国分自身は「長年の活動において自分自身が置かれている立場への自覚不足、考えの甘さや慢心、行動の至らなさが全ての原因」と謝罪のコメントを出したが、「コンプラ違反」の具体的中身への言及はない。
その後25日にはTOKIOは解散を発表し、国分は活動休止を明らかに。27日にはメンバーの松岡昌宏(48)が、囲み取材に応じたが、こちらもコンプライアンス違反の中身については「城島も自分も知りません」と、かたくなに明かさなかった。
この一連の流れについて、ワイドショー関係者がこう話す。
「『複数のコンプライアンス違反』という一言のみで、全く理由がわからないまままの降板劇です。その理由は『パワハラ』や『セクハラ』の“セ・パ両リーグ制覇”などと報じたメデイアもあります。他にも多くのメディアが臆測も含めて報じていますが、どれも決定的なことは不明で、真相はいまだにわかりません」

「カネ」と「セクハラ」で会社を追われた“3つの実例”

われわれ一般人としては、国分の事案を邪推することはさておき、国分のように「コンプラ違反で一発退場」という事態は、ぜひとも避けておきたいもの。
筆者は、複数の企業の人事担当者に「コンプラ違反で一発退場」の具体的な事例についてヒアリングをし、3人から生々しい話を聞くことができた。いずれのケースも、結果的に職場を離れざるを得なくなっている。

まずは「カネ」の話。
「もともと遠方の県から新幹線通勤していて、都内に引っ越したのにもかからず、複数年にわたり意図的に申告せず、交通費の差額を領得していた例がありました。家のローンの支払いに充てていたようです。この人は差額を自主的に返還しましたが、諭旨解雇(※)となりました。懲戒解雇ではないので、退職金は支給されました」(IT関連業・東京・上場)
※退職勧告を受け、自主的に退職する形をとるもの
「営業マンが、営業成績のチェック体制の不備を突いて複数年にわたり売上を架空計上していました。インセンティブやボーナスもそれを前提に計算され、受け取っていました。のちにチェック体制が強化されると営業成績が急降下。発覚を恐れ、逃げ切りを図ろうと退職届を提出し、受理された直後、クライアントからの問い合わせをきっかけとして不正が発覚。
退職が決定した後だったので会社側は『けん責』処分(※)にとどめました。ただし、1000万円を超える賠償金を会社に支払うことになり、その旨の公正証書が作成され、毎月、数十万円ずつ支払いを続けています。1回でも支払いを怠ったら、差押えと刑事告訴をする取り決めになっているようです」(金融業・東京・非上場)
※会社が従業員に対して始末書の提出を求めるもの
なんともセコい話だが、会社をだましてカネを得たのであり、詐欺罪が成立し得る。刑事告訴を免れただけでもラッキーかもしれない。

次に、「セクハラ」の事例。
「忘年会の二次会の後に、酔った女性社員をタクシーで家まで連れて行った上司が、家に上がり込んで、弱って抵抗できない状態にあるのをいいことに、わいせつな行為をしました。
後に女性が体調不良を理由に出社してこなくなり、親しかった同僚が心配して連絡したところ事情を打ち明け、その同僚のすすめで人事に通報して会社に発覚。上司も事実を認め、即日出勤停止、のちに懲戒解雇となりました。その上司には妻と子がおり、その後どうなったかは知りませんが、家庭は地獄でしょう」(調査業・愛知・非上場)
これらはいずれもダイレクトな犯罪行為であり、懲戒の対象となるのも納得するしかない。

弁護士に聞く…一般人が注意すべき「コンプライアンス」とは?

われわれ一般サラリーマンが注意しなければならない「コンプライアンス」とはどのようなものか。
労働事件や企業法務の対応も多い杉山大介弁護士に聞いてみると……。
「そもそも『コンプライアンス』という概念自体が純粋な意味での『法律』に限定されているわけではなく、社会規範も含めた広範でソフトなルールの遵守も含むものです。
『コンプラアンス違反』と言われただけでは、その内容を特定することはできません」
つまり、社内・社外を問わず、あるいは法律・道徳を問わず、さまざまな「規範」が問題となり得るというのだ。
会社勤めをしているごく普通のビジネスパーソンにとって、特にまずいのが、いわば国分のような「懲戒解雇」だ。これを避けるためには、どうすればいいのか。杉山弁護士は「そもそも優れた人事労務をしているところは、うかつに懲戒を振り回したりしません」と断ったうえで、次のように説明した。

「懲戒解雇までを当然に肯定できる事例というのは、容易に挙げられるものではありません。たとえば、会社の金を横領しているなど、直接的な損害を業務の中で故意に生じさせて、かつ、直ちに会社からパージしないと会社に新たな損害が生じうる事案なら、段階を踏まない懲戒解雇も肯定されやすいでしょう。
ただし、その場合でも、懲戒解雇ではなく、より広い要素も組み込んでの『普通解雇』のほうが手続的には有効になりやすいでしょう」
企業からの相談を受けた場合、「懲戒」という手段は推奨しないという。
「懲戒が適法と認められるハードルは、世間で思っているより高いのです。解雇だけでなく出勤停止も、うかつにやって良いものではありません。
ただ、それを知ったうえで、『嫌がらせ』レベルの懲戒を行うような企業も見かけます」
企業にとって、解雇はおろか懲戒処分自体、「そう簡単にできるものではない」というわけだが、処分に至らないまでも、日ごろから注意しておくべき「コンプラ」とは何なのか。
「コンプライアンス違反ということで言えば、やはり“性的な距離感の関係”と“SNS上”で起きやすい問題だとは思います」
結局、ビジネスパーソンが普段の業務の中で、気をつけておくべき「コンプライアンス」とは、やはり「セクハラ」、「パワハラ」、「カネ」といったところと言えそうだ。


■ 中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。


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