家賃を下げるならまず、「住んでいる物件の賃料を調べる」が有効…引っ越し先探しで忘れられがちな視点とは
灯台下暗しは、<身近なことには気づきにくい>の意。これを‟家賃値下げ”にあてはめれば、「引っ越しを検討し始めたら住んでいる物件の賃料を調べよう」となる。

どういうことか。「調べるのは自分が住んでいる部屋のことではなく、同じアパート・マンションの他の部屋の賃料です」。こう説明するのは、フリーライターの日向咲嗣氏。
今回は、その理由について同氏が解説する。
※この記事はフリーライター・日向咲嗣氏の書籍『家賃はいますぐ下げれます』(三五館シンシャ)より一部抜粋・再構成しています。

引っ越し検討時に真っ先に居住物件の家賃を調べた方がいい理由

引っ越しを考え始めたら、真っ先に、いま住んでいる物件の家賃を調べよう。
「自分ちの家賃くらいわかっているよ」と思われるかもしれないが、知りたいのはあなたが払っている家賃ではない。同じアパート・マンションのほかの部屋の家賃だ。
向きや階数によって、多少は違ったとしても、どうせ同じなんだから、家賃も大差ないはず、などと思っていたら、同じ間取りの隣の部屋が5000円以上も安かったなんてことも、いまやちっともめずらしくない。
たかが月5000円でも、年間に直すと6万円。それだけソンしていることになるのである。
入居時期によって家賃は異なるものであり、最近入居してきたばかりの人は、5年前から住んでいる人と比べると、1万円単位で家賃が改定されている可能性も十分にある。
では、ほかの部屋の家賃は、どうやって調べればよいのか。

活用したいのが賃貸住宅専門の検索サイト(以下、賃貸サイト) である。

近隣の家賃相場をつかもう

賃貸サイトの物件検索ページに、住みたい地域(または沿線) を指定したうえで、希望条件を入力して検索をクリックすれば、 その条件に合った物件が一瞬にして出てくる。
そうして出た検索結果の一覧を、シンプルに家賃の安い順番に並べてみるのがコツ(「並び替え」→「家賃の安い順」をクリック)。
あなたがいま住んでいるアパート・マンションの空き部屋の募集情報も、その要領で検索すると、意外にあっさりと見つけられるだろう。
「Yahoo!不動産」のように、個々の物件情報に「同じ建物のほかの部屋」という項目がページの最後のほうに掲載されているサイトもあり、そこを見れば、どこの部屋が空いていて、家賃がいくらなのかまでわかるからとても便利だ。

ヤフー不動産では家賃相場も簡単に調べられる(Yahoo!不動産より)

たとえ、自分が住んでいる物件は出ていなくても、同じ地域・条件の物件の家賃がズラリと並んでいる、その検索結果リストをじっくり見ていけば、近隣の家賃相場がどれくらいかはつかめるはずだ。
もし、隣の部屋や近隣の同条件のほうが家賃が安かったら、そのデータをもとに、家賃値下げ交渉を大家さんとするべき。
そして、その交渉が決裂したときのために、近隣でいまよりも安い家賃の部屋にあたりをつけておく必要があるというわけだ。

隣の部屋へ引っ越してみたら?

隣の部屋の家賃が、5000円も安いことがわかったら、もちろんそれを交渉の材料にして、大家さんに家賃の値下げを求めるべきだが、交渉がめんどうなら、思い切って隣に引っ越してしまうのもひとつの方法だろう。
1階に住んでいる人は3階へ、3階以上の人はさらに上層階へ、西向きや東向きに住んでいる人は、日当たりの良い南向きの部屋へ、1LDKから2DKへ、真ん中の部屋から角部屋へなど、もし家賃が同じか安くなるなら、同じ建物内でより条件のいい部屋へ移ればいい。
同じ建物だけにこだわることはない。ほかの部屋のほうが安いのなら、近隣でも安い物件はいくらでも見つかるだろうから、条件のいいところへ引っ越さない手はない。
さらにいえば、ほかの街に引っ越すのも悪くないかもしれない。
本当は、ターミナル駅近くで探したかったが、そこは家賃が高かったために、仕方なくターミナル駅から快速で20分の駅にしたとか、急行停車駅が高かったので、仕方なく各駅停車駅にしたといった人が多いはず。
都市部の私鉄沿線の街は、そういった「仕方なく選んだ人たち」によって、どんどんと外側のドーナツへと広がっていったわけだが、家賃崩壊時代には、都市部でそれとまったく正反対の現象が起きていることを思い出してほしい。
「××は高い」は、あなたが引っ越したときの常識にすぎない。
改めて調べてみたら、かつて住みたいと思っていた駅の物件が驚くほど安い家賃で出ているかもしれない。
いままでは電車で1時間かけて通勤していたが、通勤時間がその半分になる駅の賃貸物件がいまと同じ家賃だったら、それこそ引っ越ししないほうが大損である。
<日向咲嗣 ひゅうが・さくじ>
1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経て、フリーライターに。「転職」「独立」「副業」「失業」問題 など職業生活全般をテーマに著作多数。失業当事者に寄り添っての執筆活動が評価され、2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。本書では、これまで不動産のプロたちが口をつぐんできた聖域、賃貸住宅の家賃に切り込んでいる。


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