富士登山“外国人”2人相次ぎ遭難「サンダル履きの人も…」 登頂7度のベテランも警告、山頂を目指すなら知っておくべき“厳しさ”とは
富士山(標高3776メートル)の静岡県側が10日に山開き(~9月10日)する。一足早い1日に山開きした山梨県側(吉田ルート)は昨年から通行料・入山料を徴収しているが、2025年からは静岡県側(富士宮、御殿場、須走)でも1人4000円が求められる。

通行料・入山料が必要となるのは、富士山の4つのルートの各5合目以降の登山者。山梨県側の富士山5合目にある駐車場は「天地の境」と呼ばれ、森林限界線となっている。
ここまでは車でいけることなどもあり、観光気分でも楽しめるが、5合目以降は頂上に近づくほどに気温変化や強風など、自然の脅威が厳しくなり、本格的に山に登る装備なしでは無謀といえる。

入山規制導入の背景

ところが、ここ数年、山小屋での休息も挟まず、かつ軽装でご来光を目当てに一気に山頂へ駆け登る「弾丸登山」が横行するなど、リスクを顧みない登山者が目立ち始め、とうとう入山規制導入に至る。それに伴い、まず山梨県側で2024年から2000円(今年から4000円に)の通行料が徴収されることになった。
その内容は、富士山吉田口(山梨県側)登下山道で14時~翌3時までの間、5合目の登山道入口ゲートを閉鎖し、通行を規制。さらに1日の登山者が4000人に達した場合、通行を規制するというもの(※山小屋に宿泊を予約している登山者は、規制中も通行が許されている)。
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富士登山全ルートの共通ルール(富士登山オフィシャルサイトより)

静岡県側も同様だが、1日あたりの登山者数の上限は設定されていない。
こうした規制により、弾丸登山を実質的に禁止し、山頂付近の混雑を緩和。登山者の出入りを厳格に管理することで、富士登山の秩序と安全を維持しようというのが、ルール大改正の狙いだ。

早くも遭難者、ともに外国人は偶然?必然?

昨年は山開き前後あたりから両県側で遭難者が確認されるなど、不穏なスタートとなった富士山。今年もすでに4日、60代のアメリカ人男性が富士宮新7合目付近でテントを張り、体調不良になり救助。5日には外国人とみられる女性が富士山宝永火口付近で遭難した。
昨年から規制が導入され、富士登山へのリスク意識が高まりつつある中、遭難者に対してはネット上でも厳しい声が並んだ。

「富士登山は申請制にして救助必要になったら実費負担、何なら外国人は登山料高くしても良い」
「もう、登山道の一部を県有地か市有地にして、許可ない立ち入りは刑事事件として立件するくらいの姿勢にしないと、こういう事件事故はきりなく発生するだろな」
「万が一救助が必要になったら救助費用を負担しますという同意書にサインしてもらって、サインが無い人は同意しないという意思表示とかにしないとならないと思います」
遭難した2人の外国人が無謀な登山者だったかどうかはわからない。しかし、少なくとも、観光気分でふらりと訪れた人が、登山にふさわしくない服装、装備で山頂を目指してしまうとなると、遭難リスクが高まるのは当然だ。

数字が示す訪日外国人の遭難の実状

警察庁が6月に発表した「令和6年における山岳遭難の概況等」によると、山岳遭難の発生件数は2946件(前年対比マイナス180件)、遭難者3357件(前年対比マイナス211人)。死者・行方不明者は300人、負傷者は1390人となっている。
そのうち、訪日外国人の山岳遭難は発生件数99件、遭難者数135人で、統計開始以来、2番目に多かった。
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山岳遭難の訪日外国人に関するデータ(警察庁「令和6年における山岳非難の概況等」より)

山岳遭難状況を富士山に絞ると、遭難者は83人(5年平均(2019~23年の5年間の平均)比62%増)となっており、すでに外国人で2人の遭難者が出ている事実は、両県側で規制が導入されたタイミングを踏まえても看過できない状況といえる。
テレビ朝日の報道によれば、山梨県側の山開き後初めての週末だった先週末、装備の不足を理由に入山を拒否される外国人観光客が相次いだという。
また、現に、富士山山頂に過去7度登っているというAさんは「Tシャツ、短パンにサンダルで山頂へ向かう外国人とすれ違ったことは何度もあります。正直、命知らずだなと。会社のレクリエーションで富士登山を企画した時は、初心者のために1年前から準備をして本番に備えました。それでも高山病にかかる者が出ましたからね」とその厳しさを説明する。
外国人に対しては周知が行き届きづらいという側面もあるだろう。
だが、環境省、山梨県、静岡県らで運営する「富士登山オフィシャルサイト」は英語、中国語、韓国語に対応し、日本人向けと同様のテキスト、動画などで富士登山のルールや手続きなどについて詳細に示している。
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公式サイトは主要外国語に対応している(富士登山オフィシャルサイトより)

その中には、開山期間中の「混雑予想」や「今日の富士山」もあり、たとえ観光気分でも事前にチェックしておくべき情報も含まれている。
もっとも、そうした事前準備をする人なら、そもそも無謀なことはしないといえばそれまでかもしれないが、最低限、世界遺産でもある富士山に対し、「美しい、でも恐ろしい」という認識くらいは持っておいてもらいたいところだ。


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