
バリアフリー法の正式名称は「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」。その名の通り、誰もが都市空間で円滑に移動ができるような設備づくりを促進するのが目的だ。2006年12月20日に施行された。
駅や商業ビル、イベントスペースなどで車いす使用者用のトイレを目にしたことはあるだろう。それらの設置に関係しているのがこの法律だ。
バリアフリー法改正のポイント
今回の改正では、建築物のバリアフリー基準が見直される。改正法施行後に新しく着工される建築物が適合の義務付け対象となる。既存の施設等については、基準に適合するように努力義務が課されている。具体的には次のような基準に改められる。
(1)車いす使用者用トイレの設置数
改正前:建築物に1以上→改正後:原則、各階に1以上
(2)車いす使用者用駐車場施設の設置数
改正前:建築物に1以上→改正後:全体の2%以上(200台以下)、全体の1%+2以上(201台以上)
(3)車いす使用者用客席の設置数
改正前:義務基準なし→改正後:2以上(400席以下)、全体の0.5%以上(401席以上)
今回の改正のポイントとして国土交通省は「建築物のバリアフリー化を一層促進するため」としており、今後、さらに高齢化等が進む社会を見据えての基準見直しとなっている。
多目的トイレの明確化で機能を分散
また、今回の改正で車いす使用者用のトイレが増えることに伴い、設計の考え方も大幅に変更される。具体的には、「車いす使用者用のトイレ」「乳幼児用設備を有するトイレ」「男女共用の広めのトイレ」など、その種類を明確化。機能を分散させることで、特定のトイレに利用者が集中することを回避する。
だれでも利用はできるが目的を考え、配慮は必要( よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)※写真はイメージ
トイレの種類には、「オストメイト用設備を有するトイレ」もある。
このマークのあるトイレはストーマが造設されている人が使用できる。ストーマは人工肛門や人工膀胱(ぼうこう)とも呼ばれ、便や尿などの排せつ物の出口のこと。専用トイレを使うことで、排尿、排便がスムーズに行える。
点字ブロック「線と点」の意味
バリアフリー法が改正され、浸透していく過程で、こうした多様な設備に触れる機会が増えていく。点字ブロックはそうしたなかで、より身近にその存在を感じる設備のひとつだろう。1967年3月に岡山県に世界で初めて敷設されたのが始まりだ。ただ、点字ブロックがどのように機能しているかまでを知っている人は少ないかもしれない。正式名称は「視覚障害者誘導用ブロック」。通路に設置された黄色のデコボコプレート程度にしか認識していない人もいるかもしれない。
実は点字ブロックには2種類ある。「誘導ブロック」と「警告ブロック」だ。
誘導ブロックは線状ブロックとも呼ばれ、進行方向を示す。
視覚障害者はこの突起を足裏や白杖(はくじょう)で確認しながら、安全を確保して移動していく。
こうした役割や機能を正確に理解していれば、点字ブロック上で無用に立ちどまったり、駐車・駐輪したりすることがいかに不親切かがわかるだろう。逆に困っている視覚障害者がいれば、スマートに対応もできる。
真のバリアフリーとは
こうした施設等の適正な利用の推進は、国・地方公共団体、そして国民、施設設置管理者の責務でもある。駅や公共施設などでバリアフリートイレの不必要な使用やエレベーターの優先利用などを示した啓発ポスターを一度は見たことがあるかもしれない。どんなに高齢者や障害者などの円滑移動の設備等が充実しようとも、誰もが相互に理解を深め、サポートしあわなければ、せっかくのハードも十分に機能することが期待できない。
昨年3月には、車イス利用者が映画館の対応についてSNSに投稿し炎上。映画館側が公式に謝罪したことから、両サイドの擁護派がネット上でより激しく意見をぶつけ合う事態にまで発展した事例もあった。
バリアフリーは自分事。関連する法律として「障害者差別解消法」もあるが、どの立場の誰もがそう意識するようになることが、真のバリアフリー社会実現には求められる。