「悪質」について、ポストでは「交通違反に伴う反則金を納付せず、長期にわたり出頭しない違反者等」と説明。
交通違反を犯し「交通反則告知書」(いわゆる青切符)を受け取った場合、「納付書」により反則金を納付すれば刑罰を免れる。
もし、反則金の納付も出頭もせず逃げ続けた場合、どうなるのか。刑事事件に詳しい荒木謙人弁護士に聞いた。
「逃げ得は許さない」発信の狙いは
当庁では6月中、交通違反に伴う反則金を納付せず、長期にわたり出頭しない違反者等237名を逮捕しました。
繰り返しの督促に応じない悪質な未出頭者に対しては、継続的に追跡捜査を実施して逮捕状を執行します。 pic.twitter.com/IGfOMuN7Aj
警視庁交通総務課 (@MPD_kotu) July 3, 2025
今回、警視庁がこういった発信をした意図は何だと推察されますか。
荒木弁護士:反則金の納付は任意である一方、通告を受けても納付しなければ、刑事手続に移行することになります。そのため、「未出頭だと逮捕されることもあり得る」というメッセージを伝えることで、早期に適切な対応を取るよう促す狙いがあると考えられます。「繰り返しの督促に応じない悪質な未出頭者」が逮捕されてしまうのはなぜですか。
荒木弁護士:被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合には、逮捕の必要性ありとして、捜査機関は裁判所に対して、逮捕状を請求することができます。繰り返しの督促に応じない場合、捜査機関としては、被疑者が逃げてしまったり、証拠を隠したりするおそれがあると考えて、逮捕状を請求した結果、逮捕されてしまうことになります。
「反則金は払いたくない」はあり?
「反則金は納得いかなければ払わなくてもいい」と聞いたことがありますが、それは正しいですか。
荒木弁護士:内容としては正しいですが、正確に理解しておく必要があります。このようなことから「納得できなければ払わない=刑事手続の中で争う」という選択肢はあり得ますが、「払わないまま無視し続ける」ことは許されません。
つまり、納付するか、刑事手続で争うかを選ぶことができるという意味であって、無視してよいという意味ではありません。
反則金納付までの手続きの流れを教えてください。
荒木弁護士:まず、警察官による交通違反の告知(交通反則告知書(青切符)交付)があり、指定期日までの反則金納付が求められます。納付がなければ、出頭要請や督促通知が届きます。出頭要請を拒否し続けた場合、悪質だと判断されると、前述した逮捕の必要性(逃亡、罪証隠滅のおそれ)が認められ、逮捕される可能性があります。
逮捕された場合、その後の手続きはどうなるのでしょうか。
荒木弁護士:警察で取調べが行われた後、検察に送致され、略式起訴、公判請求、不起訴のいずれかになります。略式起訴の場合、裁判所は、検察官が提出した書面の審理のみで罰金または科料の刑罰を言い渡します。これにより罰金が科されれば、有罪判決となりますから、「前科」が付きます。
公判請求がなされた場合、刑事裁判が行われ、裁判所により有罪判決が下されれば「前科」になります。
青切符を切られた際の適切な対応とは
最悪の事態を回避するために、青切符を切られた際の適切な対応を助言願います。
荒木弁護士:青切符を切られた際の適切な対応は、状況によって異なります。まず不服の場合(違反を認めたくない場合)について説明します。1 現場での対応
警察官の指示には従いつつも、青切符への署名・押(指)印を拒否することができます。 署名・押(指)印を拒否したからといって、その場で逮捕されることは通常ありません。
違反状況について、ご自身の認識と異なる点があれば、その場で警察官に明確に伝え、メモを取っておいてください。
可能であれば、現場の状況を写真や動画で記録しておくことも有効です。
2 青切符の受け取りと持ち帰り
署名・押(指)印を拒否しても、青切符は受け取ることになります。そこに記載されている情報(違反日時、場所、内容、警察署の連絡先など)はその後の対応に必要です。
3 反則金の納付はしない
不服がある場合は、反則金を納付してはいけません。納付してしまうと、違反を認めたことになり、不服を申し立てる機会が失われます。
4 警察への連絡と説明
青切符に記載されている警察署の交通課などに連絡し、取り締まり内容に不服がある旨を伝え、自身の言い分を説明する機会を求めてください。
必要であれば、証拠となるもの(ドライブレコーダーの映像、目撃者の証言など)を提出することも検討します。
5 刑事手続への移行を待つ
反則金を納付しない場合、事件は刑事手続に移行します。警察や検察庁から連絡がありますので、これらには必ず応じてください。
この段階で、ご自身の主張をしっかりと伝え、不起訴処分を目指すことになります。必要であれば、弁護士に相談し、弁護を依頼することも検討してください。
では違反を認める場合はどうでしょうか。
荒木弁護士:次のような流れになります。1 現場での対応
警察官の指示に従い、青切符に署名・押(指)印をします。不明な点があれば、その場で警察官に質問し、理解を深めておいてください。
2 反則金の納付
青切符に記載された期日までに、指定された銀行、信用金庫または郵便局で反則金を納付します。納付期日を過ぎてしまうと、刑事手続に移行する可能性がありますので、必ず期日を守ってください。
3 免許の点数加算
反則金を納付すると、行政処分として違反点数が加算されます。
最後に、不服でも認める場合でも、こうした場面で注意すべきことがあれば教えてください。
荒木弁護士:共通して重要なのは、警察や検察からの連絡(電話、手紙、出頭要請など)には必ず応じてください。これに応じない場合、今回のケースのように「悪質な未出頭者」と判断され、逮捕される可能性が高まります。警察の対応に納得がいかない、でもどうしたらいいのかわからないという場合もあると思います。
交通違反の対応は専門的な知識が必要となる場合がありますので、そういった場合には、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。