「ソープランド」や「ストリップ劇場」摘発されるケースとは? “違法”に近い状態で営業…「性風俗関連特殊営業」の微妙過ぎるポジション
風俗店営業には「許可制」と「届出制」の2種類がある。より厳しいのは前者だ。
国や行政が‟お墨付き”を与えることになるからだ。
いわゆる、フーゾク、「性風俗関連特殊営業」は届出制となっている。その理由について、警察庁の資料には「性を売り物にする本質的に不健全な営業であり、届出制でその実態を把握し、規制を課して取り締まる対象」と記されている。
フーゾク営業は‟お墨付き”とは真逆といえる扱いなのだ。それでいて禁止はしない。まさにグレーゾーンに位置するのが「性風俗関連特殊営業」といえる。
今回は「届出」だけで営業できる性風俗営業について、若林翔弁護士が詳しく解説する。
※この記事は若林翔弁護士の書籍『歌舞伎町弁護士』(小学館新書)より一部抜粋・再構成しています。

届出だけで営業できるカテゴリー

これから述べる業種では、すべて「届出」だけで営業を開始することが可能になる。
まずは「深夜酒類飲食店営業」。「接待」を提供できない代わりに、24時間にわたって飲食を提供できる。この「届出」を悪用して、実質的なキャバクラ状態を提供している一部のガールズバーやコンカフェも多い。
そして、「風俗営業」、「特定遊興飲食店営業」。
最後はいわゆるフーゾク、「性風俗関連特殊営業」というカテゴリーについて解説する。

5つに区分されるフーゾク業態

このカテゴリーは、大きく5つに区分されている。
  • 店舗型性風俗特殊営業(6種類の届出)
  • 無店舗型性風俗特殊営業(2種類の届出)
  • 映像送信型風俗特殊営業(1種類の届出)
  • 店舗型電話異性紹介営業(1種類の届出)
  • 無店舗型電話異性紹介営業(1種類の届出)
店舗型性風俗特殊営業の1号が想定しているのは、ソープランドだ。浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業をいう。
風俗営業の1号許可と同じく営業時間は午前0時まで(午前0時~午前6時の時間帯は不可)で、風営法上では「異性の客に接触する役務を提供する営業」が認められている。この「客に接触する役務」は、広く客の身体に接触する役務のすべてが該当する。
2号はソープランド以外の個室型の風俗店、具体的に言えば、ファッションヘルス(箱ヘル)やイメクラ、性感マッサージなどが対象だ。個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業を行うとされている。
ソープランドと異なり、「異性の客の性的好奇心に応じて」という性風俗店らしい文言が追加されている。1号にこの文言がないのは、浴場では脱衣性が想定されるから、売春などが行われるおそれが高く、対象を限定していないのが理由だそうだ。

メンズエステは‟違法”なのか

では昨今、歌舞伎町を含む繁華街で猛威を振るっているメンズエステ(以下、メンエス)はどうだろうか。
メンエスの中には、アロマテラピーや凝りをほぐすオイルマッサージなどだけを行う純然たるエステがある一方、女性セラピストがマイクロビキニなどを着用し、本番行為(売春)や手コキなどの射精サービスを提供するものも多数存在している。そういった店は、店舗型の性風俗店の制限をすり抜けて営業している。

メンエスが摘発されるのはどんな時?(Ushico / PIXTA)※画像はイメージ

風営法は、店舗型の性風俗店について「異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」と定めている。
その定めからすれば、前述したような性的なサービスはもちろん、露出度の高い過激な衣装などを着用し、男性客の鼠蹊(そけい)部などをマッサージするような店も、「性的好奇心に応じてその客に接触する役務」を提供していると判断されるだろう。
風俗的な行為(つまりエロい行為)をしない健全なエステという建前で営業している以上、そういった行為をした場合には、「店舗型の性風俗店の営業ができない地域で営業した」として「禁止区域営業」で逮捕・摘発される。
近年、メンエスの摘発が増えており、風営法の改正後に罰則が強化されたのは、そのような背景からだ。メンエスでも無許可営業の罰金は最大3億円になる。
なお、メンエスを謳っていても、無店舗型であり、「無店舗型性風俗特殊営業」の届出をして営業するいわゆる「風エス(風俗エステ)」は適法だ。

ストリップ劇場は絶滅危惧種?

店舗型性風俗特殊営業の1号(ソープランド)、2号(箱ヘルなど)は新規開業を強く制限されているが、同様に、3号もまた絶滅危惧種のような存在である。
<専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場として政令で定めるものを経営する営業>
これが3号の定義なので、ビジネスの様式としてはストリップ劇場や覗き部屋などが対象となる。
不思議なのは、風営法上、ストリップ劇場は「全裸または半裸等社会通念上公衆面前で人が着用するべき服を脱いだ肢体」を見せることを想定しているはずなのに、時折、劇場の経営者やダンサーたちが「公然わいせつ罪」で検挙されてしまうことがある。
かつてのストリップ劇場には男女のダンサーが本番を見せる「白黒ショー」や、踊り子と客が舞台上で本番に及ぶ「生板ショー」といった明確な「違法行為=本番」が存在したが、そうでなくても、たとえばストリップ劇場内で全裸になり、性器を露出したりすれば、 公然わいせつ罪に該当し違法とされかねない。
風営法の届出を出したストリップ劇場だからといって公然わいせつ罪にならないというわけではないのだ。だとすれば、そもそもストリップ劇場は「違法な存在」ということになってしまうのだが……。
【若林翔】 グラディアトル法律事務所入所後、2013年から代表弁護士を務める。
ナイトビジネスのトラブル相談の豊富な経験を生かし初の著書『歌舞伎町弁護士』を出版。


編集部おすすめ