
第一報が報じられると「素晴らしいアイデア!」「選択肢としてこういうサービスがあると非常にありがたい」「コンビニなら急に必要となったものもすぐに入手でき大変便利」といった好意的な声がネット上でも目立った。
同社によれば、サービスは一般社団法人日本RV協会(神奈川県横浜市、会長:荒木 賢治、以下「日本RV協会」)及びグローリー株式会社(本社:兵庫県姫路市、代表取締役社長:原田 明浩)と連携し、千葉県のローソン6店舗の駐車場で車中泊施設「RVパーク」の実証実験として、スタート(14日~)。コンビニでの「RVパーク」導入は初という。
利用料金は2500円~3000円、RVパークの専用サイトから事前予約することでローソンに併設されたRVパークを利用できる。(自動車コラムニスト・山本晋也)
RVパークとは
実証実験実施店舗
そもそも「RVパーク」とは、どんな施設なのだろうか。
簡単に説明すると、キャンピングカーや車中泊ユーザーの利用を想定した有料駐車スペースだ。日本RV協会が「快適に安心して車中泊ができる場所」を提供するため、条件を設定し、それを満たせば認められる。
車中泊といえば、各地のサービスエリア/パーキングエリアや道の駅など、トイレや水道がある場所で一晩を過ごす行為といった認識があるだろう。とはいえ、堂々と「道の駅で車中泊をします!」をいってしまうのはグレーな行為という批判もある。
国土交通省の公式Q&Aページには、道の駅について次のように明記されている。
「道の駅は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。もちろん、道の駅は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません」
建前としては、ドライバーが「疲労により安全な運転が難しいと判断したのでクルマの中で休息する」ことのみが許容されているといえる。
これに対し、RVパークは、グレーゾーンにある車中泊を正式に認め、クリアにするサービスとして、全国的に広がってきている。
24時間利用可能なトイレ、ごみ処理が可能といった条件を満たした箇所が、認定RVパークとなり、提供されている。
車中泊のメリット
一晩の駐車料金としてみれば高価に感じるかもしれないが、ホテルなどの宿泊施設の宿泊費と比べれば確実に安価だ。また、多くのRVパークではキャンピングカーなど外部電源の取り入れ機能に活用できる電源(100V)の提供も行っている。
外部電源によりキャンピングカーに備え付けた家電を使えることは、車中泊の満足度を各段に上げてくれる。最近のキャンピングカーはエアコンを備えていることも多く、夏の夜でも快適に眠れることが期待できる。
ローソンが実証実験を開始する店舗でも、電源ドラムの貸し出しや生ごみの処理(専用のごみ袋1袋まで)を実施するという。
しかも、多くのRVパークは飲料の自販機があるくらいだが、ローソン併設ならいつでも買い物できるという便利さもある。まさに快適な車中泊が楽しめるポテンシャルを感じるサービスが、同社参入で新たに加わったといえる。
新しい需要喚起にもつながる今回の新サービスは、コンビニ側にもメリットがあるだろう。実証実験を行う千葉県の6店舗を選んだ理由として、同社は「駐車場の遊休スペースが多く、夜間の駐車場スペースを有効活用するには最適である」という判断があったという。夜中に“遊んでいる”駐車場を有効活用。加えて、店舗としての売上も見込めるとなれば一石二鳥だ。
周辺住民対策、夜間騒音問題は大丈夫?
気になることといえば、車中泊導入店舗の周辺住民の反応だろう。冒頭のネット上のコメントでも歓迎の一方で、夜中の騒音問題などを不安視する声もあった。この点について同社は、「基本的には周辺に民家が少ない立地を選定しています」としたうえで、「サービスをご利用いただく際にはアイドリング不可としています」といい、実証実験開始に際し、周辺住民への説明等は特に行っていないという。
加えて、ルールを守らない利用者がいた場合、「近隣への迷惑となるような利用が認められた際には、店舗からRVパークのコールセンターに連絡し、コールセンターが状況に応じて適切に対応いたします」とし、状況次第で対応もあり得るとした。
もっとも、個人的に車中泊を楽しんでいる筆者としては、その点はさほど心配いらないと考えている。大半の車中泊ユーザーは、自分たちが楽しめる場所を守るために非常にマナーが良い傾向にあるからだ。もはや駐車時のアイドリング禁止は社会的に認知されたマナーといえる。
アイドリングをせずとも、電源を利用できることで快適性がスポイルされないのはRVパークを利用するインセンティブにもなっている。
コンビニ併設のRVパークで気になること
24時間営業のコンビニにRVパークが併設されることでユーザーとして気になることといえば、店舗の明るさだ。道の駅などは夜には営業していないことが多いので、照明がついているのはトイレくらいだが、コンビニは夜でも店舗照明は煌煌(こうこう)としている。場合によっては看板の明かりもある。安心して眠るために、キャンピングカーなどの窓にはカーテンが備わっているが、あまりに明るい環境だと、安眠できないと感じるかもしれない。逆に、明るい環境であることは安心感につながると評価するユーザーも出てきそうだが、そのあたりの反応も実証実験によって明確になるだろう。
インバウンドやインフレの影響で宿泊費が高騰しているなか、コスパにすぐれる車中泊を楽しむユーザーは増えている。
キャンピングカー販売売上総額累計(出典:日本RV協会 年次報告書2024)
また、ペットといっしょに旅行したいというニーズにもキャンピングカーの旅はマッチしている。
今後どうなるのか
物価高と収入停滞の影響などで余暇に使えるコストを十分に取りづらいなか、リーズナブルに旅ができ、サービス提供側にもメリットがある新たな試み。時流にはうまくはまっており、ニーズは着実に高まっていくと考えられる。実証実験を経て正式導入が決まれば、ローソン店舗に新たな業務が増えることになる。この点に関しては「予約については、RVパークの専用サイトを通じて受け付けており、店舗では予約確認と備品貸し出しなど簡単な手続きのみを行います。
また、トラブル発生の際には、RVパークのコールセンターが緊急度・危険度といった状況判断をして110番通報などを行います」とし、店舗従業員の業務負担は最小限に抑えられるという。
ありそうでなかった「コンビニ+RVパーク」というコスパと利便性にすぐれた新たな車中泊スポット。今後の展開は実証実験の結果次第というが、全国での正式導入が決まれば、キャンピングカー人気をさらに後押しすることになりそうだ。
■山本 晋也
1969年生まれ。編集者を経て、2000年頃よりフリーランスとして活動開始。過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コラムニストとして執筆活動を継続中。二輪と四輪のいずれも愛車とする視点から次世代モビリティを考察するのもライフワークのひとつ。