外国人犯罪「ベトナム人」4分の1、警察白書で明らかに 「侵入窃盗」「万引き」が顕著…日本で“盗み”働く理由とは
増加傾向に歯止めがかからない来日外国人(※)による犯罪が、より巧妙かつ多国籍化していることが、29日公表の2025年版「警察白書」(警察庁)で明らかになった。
同白書によれば、来日外国人の犯罪検挙状況は、この10年、減少した年もあるが総じて増加傾向が続いている。

※わが国に存在する外国人のうち、定着居住者(永住者、永住者の配偶者等及び特別永住者)、在日米軍関係者及び在留資格不明者を除いた外国人
なお、来日外国人の中で犯罪を行う者はごく少数であり、近年往々にしてヘイトスピーチの標的とされがちな、日本社会の一員として平穏に市民生活を送る「定着居住者」(永住者、永住者の配偶者等及び特別永住者)の外国人とはまったく異なる存在である。

‟来日外国人”の刑法犯で全体の4分の1を占めるベトナム人

2024年は来日外国人の刑法犯の検挙数が前年の1万40件から1万3405件に増加。警察庁によれば、ベトナム人やカンボジア人による窃盗犯等の増加が要因となっているという。
来日外国人の刑法犯の中でも、ベトナム人は国籍・地域別検挙状況でも検挙人員が24.8%と最多で、目立つ存在となっている。

罪種別の検挙件数では、侵入窃盗の約8割をベトナム人が占める(出典:2025年版「警察白書」)

さらに詳細をみると、ベトナム人による犯罪の特徴が浮き彫りになる。検挙件数のうち、侵入窃盗が78.8%、万引きも47.3%と、盗みに関する犯罪でベトナム人の割合が圧倒的に多くなっているのだ。

Gメンが明かす「外国人万引き」の手口

こうしたデータを裏付ける実態を明かすのは、四半世紀以上にわたり現場で奮闘し、6000人超の万引き犯捕捉の実績があり、いまなお現役で活躍する万引きGメンの伊東ゆう氏だ。
「来日外国人による万引きが目立つのは、彼らが‟仕事”として行っているからです。万引き犯のうち、日本人や定着居住者の外国人の多くが貧困等から日用品等を万引きするのに対し、彼らは換金が目的。はっきりいえば彼らにおいては、万引き常習者というより窃盗団とみるべきなんです」
金を稼ぐために万引きを繰り返す。それも組織的に。伊東氏が続ける。
「彼らの手口は周到です。ターゲットを定めるとまず現場の下見をして、店内の死角をみつけだし、チームを組んで役割を決めます。
実行の際は、死角となるスポットに大量に盗品を詰め込んだバッグを置き、受け取り役が運び出し、さらに店の外で運び役が待機してアジトへ持ち運びます。
大きなトランクやボストンバッグなどを持ち込み、まるでそれが当たり前のように堂々と商品を詰めていく者まで散見されます。店側はそこまでされても声掛けしないことがありますし、仮に声掛けしても彼らは暴れるし、逃走するのが常とう手段。必死にあがき、騒いでなんとかその場を逃れようとします」(伊東氏)

組織的に行われることが特徴

こうした組織的な犯行については、2025年版の警察白書でもデータで裏付けられている。それが、来日外国人による刑法犯の検挙件数に占める共犯事件の割合だ。
日本人12.5%に対し、来日外国人は41.1%と約3.3倍にもなっている。これについて警察庁は「来日外国人による犯罪が日本人に比べ組織的に行われている傾向」と分析している。

ベトナム人の万引きが多い2つの背景

仕事として組織的かつ大胆に‟窃盗”を実行する来日外国人。そのなかでもベトナム人の割合が多い理由について、伊東氏は2つの背景を明かす。
「(いくつかの国を除けば)罪の重さはどの国も大きくは変わりません。ただ、たとえばベトナムなどでは万引きで捕まって入れられる刑務所がとてつもなく過酷なんです。“あんなところには入りたくない”と思うため、彼らも現地ではやりません(※)。店の構造も万引きしづらくなっていますし、入り口には銃を持った警備員もいますから」
※実際には、日本で検挙された場合にベトナムでも処罰される可能性は存在する
こうした環境面での格差に加え、主要なターゲットに日本のドラッグストアが定められる理由があるという。
「東南アジアなどでは日本製の化粧品は高く転売できます。
定価の3~4割増しは堅いですね。換金目的であれば、これほどターゲットとして好条件がそろった場所はないでしょう」(伊東氏)
弁護士JPニュースでも過去に、いくつかの外国人による窃盗事件を取り上げている。上記の化粧品のほか、フルーツ、盆栽、加熱式タバコ、ユニクロ製品など、海外で高額転売できるマーケットがある物品などが狙われ、大きな被害をもたらしている。
いずれのケースでもベトナム人の関与が疑われたり、実際に逮捕されたりしており、小さくない規模の組織による犯行の影が色濃くちらつく。

組織的犯罪にみられる変化

こうした来日外国人による大胆な犯罪が断続的に続くなか、警察庁によれば組織的な犯罪にも変化の傾向がみられるという。
「来日外国人で構成される犯罪組織についてみると、出身国や地域別に組織化されているものがある一方で、より巧妙かつ効率的に犯罪を行うためにさまざまな国籍の構成員が役割を分担するなど、構成員が多国籍化しているものもある。
このほか、面識のない外国人同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら犯行に及んだ例もみられる。
また、近年、他国で行われた詐欺事件による詐取金の入金先口座として日本国内の銀行口座を利用し、詐取金入金後にこれを日本国内で引き出してマネー・ローンダリングを行うといった事例があるなど、犯罪行為や被害の発生場所等の犯行関連場所についても、日本国内にとどまらず複数の国に及ぶものがある」
諸外国に比べれば穏和な国柄といえる日本で繰り返される、来日外国人などによる大量窃盗などの犯罪。実行犯はごく一部の外国人に限られているものの、その大胆さから悪目立ちすることは否めない。
警察庁もこうした国際犯罪を野放しにするつもりはなく、事前旅客情報システム(APIS)等を活用しての水際対策や出入国在留管理庁との連携による、被疑者に国外逃亡の恐れのある場合の手配など、国内関係機関との連携のほか、国際刑事警察機構(ICPO)など外国捜査機関との連携にも力を入れるなど、その対策を強化しているという。


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