7月30日、都内で「共育(トモイク)プロジェクト」によるイベントが開かれた。
同プロジェクトは厚生労働省が共働き・共育ての推進のため7月4日から開始したもので、「共働き、共育ての推進のため、職場や家庭における、いわゆるワンオペの実態を変え、男女ともに、誰もが希望に応じて仕事と家事、育児を両立し、『共育』に取り組める社会を目指す」としている。

男性の育休取得率、過去最高を記録

イベントではまず、厚労省の雇用環境・均等局職業生活両立課の上田真由美課長が、同日厚労省が発表した「令和6年度雇用均等基本調査」の速報値をもとに、育児休業取得率などの現状について報告。
「2024年度の男性の育休取得率は前回調査から10.4%上昇し、過去最高の40.5%を記録しました。
この背景には、2021年以降の育児・介護休業法改正により、育児休業制度の周知や、取得の意向確認実施の義務づけ、産後パパ育休制度の整備などによる効果があるのではないかと考えています」(上田課長)

「若者の6割以上が共育てを希望も、社会や職場の支援が必要」

続いて、この日のイベントに参加した共育プロジェクト座長の羽生祥子氏と、同プロジェクト推進委員の佐藤竜也氏から、15歳から30歳の若年層1万3000人以上を対象にした「若年層の仕事と育児両立に関する意識調査」の結果が発表された。
同調査では、パートナー同士が協力し合って、家事育児に取り組む「共育て(ともそだて)」について、若者層のうち64%が「共育て」を希望しているものの、実現のためには「社会や職場の支援が必要」と回答していたことが分かったという。
また、男女どちらが「家庭より仕事を優先する」もしくは「自分のキャリアより家庭を優先する」べきかを尋ねたところ、「男女は関係ない」という回答がそれぞれ約70%であった。

「男女関係ない価値観、対応できなければ企業にとってリスク」

こうした調査結果から、羽生氏は「妻のワンオペにただ乗りしない、ワンオペを放置しない父親や企業が令和の価値観だ」として次のように述べる。
「仕事やキャリアの面のみならず、子どもの送迎や、掃除、洗濯など家事の面でも、約7割が男女関係なく『手が空いている方がやればいいのではないか』『得意な方がやればいいのではないか』と回答しました。
ですから『子どもの急な発熱時には、母親が対応すべきだ』といった発言や、出張や残業が続いている人に対して『男なんだから』といった発言がポロポロとでてくるような企業・職場は若者の意識とズレていると言えます。
また、約7割の若者がプライベートと仕事の両立を意識しており、さらに『柔軟な働き方が実現した場合には仕事へのモチベーションが上がる』との回答も74%となっています。
ただ、育児・家事と仕事の両立について不安を抱えている人は72%にのぼっており、『理想的な働き方』が実現できていない場合には、『子どもを授かった後に、離職する』という傾向が、その他の人に比べて、24.3%高く、4割近くが離職の意向を示しました。
つまり、こうした点について対策を講じられれば、企業にとって採用面などでメリットになる一方、もし対策を怠ればリスクとなることが浮き彫りになったと言えるのではないでしょうか」

脱ワンオペへ「4つの視点重要」

経営者でかつ、父親でもある佐藤氏は「脱ワンオペを進めていくうえで4つの視点が重要だ」として、こう続けた。
「第一に、これまで母親向けが主に行われてきた育児などに関する教育を、男性であっても若いうちから受けられるよう機会を提供する必要があると思います。
第二に、職場でも1on1や会議を行うように、子育てという重要なプロジェクトでも情報の共有が重要です。

おむつの交換など、日々の子どもに関する業務を共有し、お互いがカバーしあえる環境を作ることが望ましいのではないでしょうか。
第三に、子育てを夫婦間だけでなく社会全体で盛り上げ、称賛しあえる世の中になれば、早く退勤することなどへの抵抗感もなくなると思います。
第四は制度・構造の変化です。個々人の意識改革だけでは限界がありますから、会社や社会の制度・構造は必要不可欠です。
職場も人手不足のところがありますが、家庭でも子育てをするうえでは、夫婦がお互いをカバーする必要があります。ですので、働きやすい環境や、子育てしやすい環境を整え、職場でも家庭でもフォローしあえる状態にしていくことが重要です」(佐藤氏)
また、佐藤氏は個人や企業、社会がこの4つの視点を持つことで、男性の育児参加による「脱ワンオペ」だけでなく「少子化の改善にも影響を与える」とも指摘した。

「『個人の選択』を盾にしてワンオペ見過ごさない姿勢を」

会見の終盤、羽生氏は育児や家事の脱ワンオペのために注意すべき点として、「個人の選択」を盾にして、ワンオペが見過ごされてしまうリスクを挙げた。
「本当に家庭内で話し合ったうえでの選択であれば問題はありません。
ですが、女性に対し『今まではそうだった』『お父さんお母さんは、おばあちゃんおじいちゃんはそうだった』もしくは、『世間の目がそうだから』といった、古い価値観の押しつけが行われれば、やはり、本当の意味での自分の意思による選択はできなくなってしまいます。
ですから夫婦でも企業でも、ワンオペを見過ごさない、もみ消さないという姿勢が、今一番求められる取り組みではないでしょうか」(羽生氏)


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