猛暑に“自腹”で備え、ファン付きウェアの購入などで「1万円以上」負担した現場労働者も…企業の熱中症対策「義務化」の中、8割が“不十分”回答
全国的に猛烈な暑さが続いている。兵庫県丹波市で7月30日、国内観測史上最高気温となる41.2度を記録し話題となったが、6日後の今月5日にはそれを上回る41.8度を群馬県伊勢崎市で観測した。
気象庁によれば、この暑さは9月以降まで続く見通しで、特に8月上旬は平年より気温が高くなる予報だという。
屋外での作業を余儀なくされる労働者にとって、熱中症対策は差し迫った課題だ。
今年6月には「改正労働安全衛生規則」が施行され、事業者には職場における熱中症対策の強化が義務付けられた。
しかし、暑熱環境下で働く労働者のうち、会社の熱中症対策について「十分実施している」と答えた人はおよそ2割にとどまることが民間調査で明らかになった。

暑さによる「仕事中の体調不良」およそ3人に1人が経験

調査を行ったのは、整形外科向け医療機器やスポーツ用サポーターの製造・販売を手がける日本シグマックス。
全国の建設・製造・運送・鉄鋼・電気通信・電気・ガス・水道などの業務に従事する25~55歳の男女2208人のうち、企業に勤め、屋内外を問わず夏期または年間を通じて暑い環境で働く機会があると回答した283人を抽出・分析した(調査期間:2025年7月8日~10日/調査方法:インターネット調査)。
同調査によれば、暑さによって仕事の効率に影響が「ある」と回答した人の割合は81.3%。
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さらに、「仕事中の体調不良(熱中症や脱水症状など)(29.6%)」「暑さが原因の体調不良による欠勤(17.4%)」を経験している人も少なくないことがわかった。
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およそ8割の労働者が企業の熱中症対策に「不十分」

企業が行っている暑さ・熱中症対策としては、「エアコンの設置」の回答が50.7%ともっとも多く、次いで「飲料(経口補水液等)の支給(36.2%)」「食品(塩飴、サプリメント等)の支給(33.5%)」が挙げられた。
また、「会社が直近で取り入れた暑さ対策」の回答として多かったのは「ファン付きウェア(空調服など)の支給(20.4%)」「冷却グッズ(ネッククーラー、冷感タオル他)の支給(17.6%)」だった。
猛暑に“自腹”で備え、ファン付きウェアの購入などで「1万円以上」負担した現場労働者も…企業の熱中症対策「義務化」の中、8割が“不十分”回答
しかし前述の通り、会社が暑さ・熱中症対策を「十分実施している」と答えた労働者はおよそ2割にとどまり、「実施していない(25.4%)」「実施しているが不十分(52.7%)」との回答が8割を占める結果となった。
猛暑に“自腹”で備え、ファン付きウェアの購入などで「1万円以上」負担した現場労働者も…企業の熱中症対策「義務化」の中、8割が“不十分”回答
またこうした企業の不十分な対応を補うように、6割以上の人が自己負担で暑さ対策を行っている実態も明らかになった。
その内容として特に多く挙げられたのは、「涼しい下着・インナー」「飲料」「汗拭きシート・制汗剤スプレー」などの購入。「ファン付きウェア」「身体冷却服」の購入などで、1万円以上を自己負担していた人も4割以上いた。

猛暑に“自腹”で備え、ファン付きウェアの購入などで「1万円以上」負担した現場労働者も…企業の熱中症対策「義務化」の中、8割が“不十分”回答

義務化されても進まない…企業による「熱中症対策」

日本シグマックスは2年前にも「職場での暑さ対策に関する実態調査」を実施。今回の結果は、いずれも2年前と同水準だったという。
今年6月1日からは職場における熱中症対策が罰則付き(※)で義務付けられている。本調査が実施されたのは7月だったが、依然として企業での対策が十分に改善されていない実態が伺い知れる。
※適正に対策を行わなかった場合に、労働安全衛生法第119条にもとづき6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される
日本シグマックスのウェルネス事業部・宮地早紀氏は、「本来職場環境の安全確保は事業者の責任であるにもかかわらず、実に4割以上の方が暑さ対策のために『1万円以上』を自己負担するなど、従業員任せになっている現実が浮き彫りになりました」と調査結果を振り返る。
その上で「従業員に安心して安全に働いてもらうために、企業は職場ごとの暑熱環境の特徴や従業員のニーズを把握し、それに合った暑さ対策をする必要があります」と指摘した。


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