
大手旅行会社JTBとHISの予約動向によれば、国内旅行の行き先として人気が高かったのは、いずれも沖縄県だった。
両社によると、ホテルのラインナップや現地観光プランが豊富であることに加え、今年7月に新たにオープンしたテーマパーク「ジャングリア沖縄」も沖縄の人気に影響を与えているという。
また、亜熱帯海洋性気候に属する沖縄ではパイナップルやマンゴー、ゴーヤー(にがうり)、紅いもなど、島ごとの土壌や自然環境によってさまざまな農作物が育まれ、観光客にも楽しまれている。
せっかく沖縄に旅行したのだからと、こうした沖縄県産の野菜やくだものをお土産に購入しようと考えている人もいるかもしれない。
しかし、沖縄県の植物の一部は、県外への持ち出しが禁止されていることをご存じだろうか。
ゴーヤー、パパイヤも持ち出しNG!?
県外への移動が規制されている植物には、紅いもやシークワーサーの苗木などがある。また、今年4月からは、ゴーヤーやスイカ、トマト、パパイヤ、ピーマンなども新たに規制対象となった。農林水産省「住民、旅行者の皆様へ~ セグロウリミバエのまん延防止にご協力ください ~」より
こうした規制の目的は、「特殊病害虫」の拡散を防ぐことにある。
昨年、沖縄県ではゴーヤーなどのウリ科に寄生する「セグロウリミバエ」が21年ぶりに発見された。ひとたび寄生された植物は果実が腐敗し、落果してしまうという。
農林水産省と県は発生状況の把握を行うとともに、殺虫剤の散布や寄主植物(害虫が寄生する相手の植物)の除去等の対策を講じてきたが、その後も沖縄本島北部・中部の9市町村で発生が確認された。
「セグロウリミバエ」の寄主植物はウリ科のほか、トウガラシやサヤインゲンなど広範囲にわたる。そのため、根絶および他地域へのまん延防止を目的として、「植物防疫法」に基づく「セグロウリミバエの緊急防除に関する省令」が公布された。
これを受けて今年4月14日からは、従来、別の害虫の発生により県外への移動が規制されている紅いもなどに加え、「セグロウリミバエ」の寄主植物の本島外移動が規制されている。
沖縄の空港や港では、観光客らが誤って規制対象の植物を持ち出さないよう、防疫官による声掛けや巡回、リーフレットの配布、案内板の設置といった啓発活動が行われている。

「セグロウリミバエの緊急防除について」は農水省のホームページ上でも注意喚起されている
規制対象植物をうっかり持ち出してしまった場合は?
では、規制対象の植物をうっかり持ち出してしまった場合、どうなるのか。那覇植物防疫事務所輸出及び国内検疫担当の中谷祐輔検疫主任によれば、沖縄県内の空港や港で植物防疫官らが対象植物を発見した場合には「持ち主に規制内容を説明の上、自主的にその場で放棄いただく」対応をとっているという。
一方で、対象植物を持ち出したことに後から気づいたなど、すでに沖縄県外に持ち込んでいるものについては、「速やかに最寄りの植物防疫所に知らせてほしい」(中谷検疫主任)と話す。
規制を知りながら故意に持ち出したり、隠匿したりするなど悪質性が認められた場合は、植物防疫法40条にもとづき、3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科される可能性もある。
植物を持ち帰りたい人は、出発前に植物防疫所のウェブサイトなどで規制内容を確認しておくことが大切だ。
中谷検疫主任は「持ち帰りたい植物が移動規制の対象かどうか、少しでも判断に迷う場合は、那覇植物防疫事務所(098-868-1679)まで気兼ねなくお問い合せ下さい」と呼びかける。
県外で流通している沖縄野菜は「検査済み」
ちなみに、沖縄県外のスーパーや飲食店などで流通・販売・提供されている規制対象植物については、沖縄県産であっても「すでに植物検疫を経て、病害虫の有無など必要な検査・消毒を終えたものと考えて差し支えない」と中谷検疫主任は説明する。気に入った食材が規制対象植物だった場合は、地元に戻ってから探せば安心・安全に楽しめるということだ。