〈中居正広“性暴力”の全貌が分かった! 通知書に「不同意性交等罪」の文字が〉と題されたその記事では、Xさんの代理人弁護士が、中居氏に内容証明で送ったとされるA4用紙3枚に渡る「通知書」について詳解している。
通知書の日付は2023年11月6日付。発信元は、Xさんの代理人弁護士だ。そこには、同年6月2日の夜、中居氏のマンションでXさんと中居氏の間で起きたことの詳細が記されており、中居氏に損害賠償請求を求める内容だった。(中原慶一)
「不同意性交等罪に該当しうる性暴力」と明記
スポーツ紙芸能記者はこう話す。「『文春』によれば、これはXさんの仕事仲間だった番組スタッフによって編集部に持ち込まれたもので、“あの夜”の全容や、その後約2か月にわたるXさんと中居氏が交わした、計50通以上のショートメールのコピーが記載されていた。
あの雨の夜、中居氏が、部屋でXさんと鍋を食べながらSMAPのビデオを見せ、その後、抵抗するXさんの服を強引に脱がせ、陵辱する様子が子細に書かれていたのです。
通知書では、中居氏の一連の言動を『不同意性交等罪に該当しうる性暴力であり、不法行為』と指摘しています」
この問題を巡っては、3月に公表された「第三者委員会」の調査報告書で、中居氏の言動を、WHOのガイドラインと照らし合わせて、「性暴力」と断定。その後、それを不服とした中居氏サイドとの泥仕合が続いていた。
中居氏側は「守秘義務違反」と反発
中居氏の代理人は、第三者委に対し、「性暴力」という表現の妥当性や証拠の開示など再三の要求をくりかえしていたが、第三委側は、6月3日、「被害者に二次被害を与える危険性を懸念している」として、「今後はやり取りを差し控える」と突き放していた。この頃から、Xさんへの誹謗中傷はさらに激しさを増していたようだ。いずれにせよ、今回の記事によって、元国民的アイドルに初めて「不同意性交等罪」の文字が突き付けられた格好だ。
そのインパクトは大きく、記事が公になると、中居氏の代理人弁護士は、即座に反発。「性暴力という言葉から想起されるような行為ではなく、不同意によるものではなかったと評価している」とのコメントを事務所のサイトで公開。
「相手方女性に対して守秘義務を遵守させるべき立場にありながら、結果として週刊誌等の第三者媒体による情報開示が継続的に発生しておりますことは、極めて遺憾です」などとした。
一方で、Xさんの代理人弁護士は、『朝日新聞』の取材に対し、守秘義務に反する行為は、自身もXさんもこれまでも一切していないとした上で、「(Xさんに対し)事実ではない誹謗中傷・攻撃は絶対にやめてください」と訴えている。
不同意性交等罪とはどんな“犯罪”なのか
事態はさらに混迷を極めたと言わざると得ないが、ここで「不同意性交等罪」について、刑法の条文を確認しておきたい。【刑法177条】
前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する。
冒頭の「前条第1項各号に掲げる行為又は事由」は以下の通りである(刑法176条1項参照)。
1. 暴行もしくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと
2. 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
3. アルコールもしくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
4. 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
5. 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと
6. 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、もしくは驚愕していること
7. 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
8. 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること
「不同意性交等罪」とは、2023年7月の刑法改正によって従来の「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」が統合され、新たに設けられたもので、暴行・脅迫を手段とするものに限らず、被害者の意思に反する類型が広く列挙され、処罰対象となっている。
フジテレビ副会長が発言を「撤回」した理由
これに関係する重要な一幕が、ことし1月27日に行われたフジテレビの“10時間会見”で垣間見えていた。会見に出席した前出の芸能記者が語る。「当初、フジテレビ側は、中居氏とX子さんの間には『認識の違い』があったと強調していましたが、『認識の違いとは具体的に何か』とある記者が執拗(しつよう)に迫ると、フジテレビの遠藤龍之介取締役副会長(当時)が、『ちょっと踏み込んで申し上げることができるとすれば、意思の一致か不一致かということです』と口を滑らせました。
記者が『同意のもとで(性交を)行ったか、不同意だったかという意味だということですね? 被害について同意を得てのものだったと中居氏はフジテレビに説明していたということか』と畳みかけると、『はい、おっしゃる通りです』と答えました」
しかし、その後、スタッフとおぼしき人からメモを受け取った司会者は、慌てて、「先ほどの遠藤の回答についてですが、2人だけの事案であり、プライバシーの関係からお答えできません。訂正させてください」と遠藤氏の発言を撤回した。
これに対し、会場はどよめきが起こり、「さっきは、ハッキリ言ったじゃないか」「同意があったか、なかったか、そこが重要なんだよ!」などと、怒号が飛び交い、会見は、15分近く紛糾した。
「フジとしては、『不同意性交等罪』という犯罪行為を喚起させる、同意・不同意という言葉を避けたかった可能性が考えられます。
その後、約2か月後の『第三者委』の報告では、中居氏の行為をWHOのガイドラインによる『性暴力』だったと断罪していますが、具体的な罪名である『不同意性交等罪』という言葉は使われていません。
WHOの『性暴力』は、言葉は強いものの、その定義が示す範囲は不同意性交等罪に該当する行為よりも広く、より包括的な概念になっています」(前出の記者)
WHOによる「性暴力」の定義は“広い”が…
WHOの定義によれば、性暴力は「強制力を用いて、個人の性的側面に向けられた、あらゆる性的行為、性的行為を得ようとする試み、望まれない性的発言や誘い、性的搾取を目的とした人身取引、その他の行為であって、被害者との関係を問わず、家庭や職場を含むあらゆる場面で、誰によっても行われ得るもの」とされている(※)。※WHO「World report on violence and health」(2002年)P.149参照
これは、不同意性交等罪の条文が行為を限定列挙しているのと異なり、それよりも広い範囲の行為を含む。
しかし、文春の記事の内容が真実ならば、Xさんの代理人弁護士が作成した通知書の中で、“不同意性交等罪に該当しうる”とハッキリと指摘されていたことになる。
法律事務所関係者が説明を加えた。
「一般的に、『不同意性交等罪』は、被害者の証言が重視される一方、密室での出来事であることがほとんどなので、客観的な証拠が不足しがちで、立証が難しいケースが多いのです。
特に『同意の有無』が争点となる場合、当事者間のやり取りや状況がどのようなものだったかについて、客観的な証拠を見つけることが難しいといわれています。
それらのハードルをクリアして不同意性交等罪が成立した場合、その法定刑は『5年以上の有期拘禁刑』であり、執行猶予がつかない限り、実刑判決が下されます。ただし、事件があったとされるのは2023年6月であり、不同意性交等罪は改正刑法が施行された同年7月から適用されるので、中居氏が同罪で処罰されることはありません。だからこそ通知書では『不同意性交等罪に該当しうる』という表現が用いられたと考えられます」
いずれにせよ、今回の事案、現在、中居氏の代理人は、“次の一手”を打ってはいないが、今後はどういう展開を見せるのだろうか。
「中居氏の反論は、フジの損害賠償請求に対するけん制という見方が強かったが、株主総会や検証番組を経て、この事案を早く収束させたいフジの社員からは、中居氏サイドの動きに対して“いい加減にしてくれ”という声も聞こえてきます。
さらにXさんへの誹謗中傷の増加は大問題です。中居氏がこれ以上のアクションを起こすのは、一部の彼のファンを除いては、世間から見て、悪手と見られても仕方ないでしょうね」(前出の芸能記者)
ますます混迷を極めるこの事案、果たして、どういう結末を迎えるのだろうか――。
■ 中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。