「大阪・関西万博」“黒字化ライン”到達の影で「万引き」など事件・事故900件報道 現地の“リアルな姿”に来場者は?
大阪・関西万博(正式名称:2025年日本国際博覧会)が閉幕まで残り2か月(~10月13日)となった。開催前はピリピリムードだった会場も、オープンすれば一転、歓喜にあふれた。

酷暑の夏に入ると、来場者の肌をヒリヒリ焼きながら、黒字化も視野に入るほど大勢の来場者が押し寄せる活況だ。「中止せよ」の声も騒がしかった事前のバッシングは結局、なんだったのか…。真夏の現場へ赴いた。

「中止せよ」の主張は「工費未払い問題」へ

「いのちと安全最優先!あらためて大阪・関西万博の中止を求めます」
開幕直前まで、万博会場となる大阪・夢洲の建設現場でのメタンガスの爆発事故を根拠に、そう声を大にして万博の開催中止を訴えていた、共産党大阪府委員会。
開幕すると、熱中症リスク、噴水ショー会場(7月11日から再開)のレジオネラ菌、パビリオンの工費未払い問題についても、批判を続けている。

工費未払いが指摘される館も長蛇の列(弁護士JPニュース編集部)

同委員会によれば、これまでにネパール、アンゴラ、マルタ、中国、ルーマニア、セルビア、アメリカ、インドなどの各館で下請け業者への工事費未払いが発覚しているという。
同委員会は、万博協会がパビリオン建設プロジェクトにおいて、「積極的な受注協力を」と呼び掛けながら、未払いを訴え始めた業者に対し、「当事者間の問題」「民民の問題」と、手のひら返しで救済措置を拒み続けていることを問題視。
被害を訴える業者らは6日、救済を求める約5万の署名を大阪府に提出している。
工費未払いは由々しき問題だが、各パビリオンは開放中。来場者は目の前の展示を満喫していた。
直前までのメタンガスの爆発リスクについては、来場者にとって不安材料だったが、現場でその危険性がアナウンスされることはなかった。

結局アクセス問題はどうなった?

開幕前はアクセス面を心配する声も多かった。「EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト」は会場へのアクセスとして「大阪メトロ中央線と主要鉄道駅からのバス利用」の2つを推奨していたが、「それだけで大丈夫なのか」と不安視された。

夢洲駅改札付近は大きな混雑はなかった(弁護士JPニュース編集部)

しかし、実際には入場段階からかなり厳格な予約制がとられ、会場に一気に人がなだれ込むことは基本なく、記者が訪れた日には大きな混乱はなかった。
一方で、この予約制が来場者に大きな制約を与え、満足度を低下させていたことは否めない。

「予約とれない」問題、解消法

ある親子は「予約制にする必要はあったのだろうか…」と汗だくの幼い子どもと移動しながらぼやいていた。多くのパビリオンが予約なしでは平均30~40分(人気パビリオンは1時間超えも)は並ぶ必要があり、特に真夏は並ぶだけで体力を大幅に消耗する。
事前に予約するにしても2か月前抽選か7日前抽選、空き枠予約は3日前か当日とあるが、ほとんどが埋まっており、かなり早い段階から入念に対応しなければ希望のパビリオンを巡ることは難しいのが実情だ。
展示物のグレードが高いと評判で大人気のイタリア館を見学したという神奈川県在住のAさんは「朝一の来場予約をして、最前列に並び、開幕ダッシュで向かいました」と秘策を教えてくれたが、人気パビリオンに予約なしでたどり着くにはそれくらいの意気込みが求められる。

開幕から折り返しまでに起きた事件・トラブル

6000万人以上が来場した前回1970年の大阪万博が、押し寄せる人並みでトラブルが多発したことと比べれば、今回の大阪万博は人の動きを制御することなどが奏功してか、騒ぎは少なめだ。
大阪府警の発表によると、開幕3か月間(4月13日~7月12日)で、会場や周辺の警戒を担う「会場警察隊」が扱った事件・事故は約900件。そのうち、「事件」は約170件だったという。
目立ったのは万引きで、1日には会場内のオフィシャルストアでグッズを万引きしたとして、東京都の無職少年らが窃盗容疑で逮捕。転売目的とみられている。
会場内には露店でのグッズ売り場やコンビニなどもあるが、どこもかなり混雑しており、紛れて窃盗をはたらく人間がいるとすれば検知しづらい状況だった。犯人がそうしたスキを突くのだとしたら極めて悪質だ。
万引きのほか、暴行や無銭飲食、ちかんや盗撮などもあったという。また、迷子や体調不良による「保護等」が約190件、来場者と警備員の口論などのトラブルが約100件だったという。


日傘は持参しなくても各所で貸し出している(弁護士JPニュース編集部)

特に暑さの厳しい夏シーズンにおける、万博会場はまさに灼熱地獄。埋立地ゆえに周辺に日差しをさえぎる建物がなく、直射日光が直撃するため、熱中症対策は必須だ。
会場では日傘が満遍なくいきわたるほどに各所で貸し出されており、日差し対策はなんとかなるが、並んででも複数館を巡回するつもりなら、空冷ベストなど冷却アイテムも必携だ。
今回の万博で最大の見どころといわれる木造の「大屋根リング」。これについても、開幕前はひずみがあるなど、ネガティブな意見もあったが、シンプルに壮観だった。ただ、一周約2キロを景色を楽しみながらゆっくり完歩したが、真夏の昼間だけは避けた方がいい。

大屋根リング上は全く日よけがなく、真夏に歩くのはほどほどにしておいたほうがよい(弁護士JPニュース編集部)

結局、空いているパビリオンに絞り、計6館、待ち時間全4.5時間、滞在時間約7時間で力尽きたが、及第点の満足度だった。なにより、開催前にネガティブな情報が飛び交っていたことなどは完全に頭から消失し、純粋に‟世界”を堪能できた。

1800万人突破で終盤戦へ

報道によれば、万博の入場券販売は8日時点で約1810万枚になったという。これは、目標とする黒字化の目安ラインを超えたことを意味する。事前の悪評を考えれば、快調といえる途中経過だろう。
すでに3度来場し、閉幕までにあと4回訪問するという前出のAさんが熱く語る。

「予約はほとんどとれない状況だが、会場の雰囲気を楽しむだけでも行く価値がある。目当てのパビリオンは開幕ダッシュでみるとして、閉幕まで楽しみつくします。気になるのは台風と終盤の駆け込み来場者による混雑かな」
閉幕まで残り2か月となり、終盤戦を迎える大阪・関西万博。誠実に対応すべき問題もあるようだが、ここまでは前評判を覆し、数字の上では成功への道へ順調に進んでいるといえそうだ。


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