蓮舫氏のX投稿「公選法違反」可能性は“低い”が…「選挙を軽くみていた」元議員秘書の弁護士があえて“批判”する理由
7月20日に施行された参議院議員選挙において比例代表選挙区で当選した蓮舫議員(立憲民主党)が、投開票日当日にXにてアカウント名「【れんほう】2枚目の投票用紙!」で投稿を行ったことが、「公職選挙法違反」にあたるのではないかとの「疑惑」が指摘されている。
産経新聞が当初、蓮舫氏が投開票当日にXのアカウント名を上記に変更したと誤って報じたこともあり(7月25日。
翌日に訂正、オンライン版では蓮舫氏への謝罪も掲載)、何が公職選挙法違反にあたり得るのかが曖昧なまま、蓮舫氏への非難の声が拡散されている。
また、オンライン署名サイトで蓮舫議員の当選無効を求める署名活動が行われ、8月15日時点で15万筆を超えている。
もちろん、署名がどれほど多く集まろうと、法的効力がないのはもちろん、違法か合法かの結論を左右することもない。とはいえ、実際に「公職選挙法違反」があったか否かは気になるところである。元議員秘書の経歴を有し、公職選挙法や政治資金規正法等の実務に詳しい三葛敦志(みかつら あつし)弁護士に聞いた。

問題は、投稿が「選挙運動」にあたるか

まず、本件について問題となる公職選挙法の規定を確認しておこう。同法129条は、参議院比例代表選挙の選挙運動の期間について、「名簿の届出」のあった日から選挙の期日(投開票日)の前日までと定めている。これにより、投開票日当日に選挙運動を行うことが禁じられているといえる。
では、当日に蓮舫氏が行った投稿は「選挙運動」にあたるか。三葛弁護士は、選挙運動とされる可能性は低いと説明する。
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【画像】蓮舫氏が当日朝に行った問題の投稿(直後にアカウント名変更)(Xより)

三葛弁護士:「まず、『おはようございます…』という文面には選挙をうかがわせる要素は一切ありません。したがって、問題となりうるのは『【れんほう】2枚目の投票用紙!』というアカウント名にあります。
このアカウント名からは、自分は比例代表選挙に立候補しており、2枚目の投票用紙、つまり比例代表選挙の投票用紙に、自身の名前を書いてほしいという意思が読み取れます。
したがって、アカウント名を設定する時点では、人の注意を引き付ける意図があったのは明らかといえます。
しかし、選挙当日の朝に、従前のハンドルネームを変更せずに一言あいさつの投稿をしただけでは、『選挙運動として投稿を行った』とまで言い切ることは困難です。
また、蓮舫氏本人がスマホ端末から投稿したと見受けられますが、スマホでXに投稿する場合、一般的に投稿画面には自身のハンドルネームが表示されません。したがって、ハンドルネームの認識が希薄だった可能性が高いと考えられます。
しかも、今回は指摘を受けすぐに削除しています。今回の投稿だけで直ちに公職選挙法違反とまで言い切ることができるかは疑問が残ります」
では、どのような場合に公職選挙法違反に該当し得るのか。
三葛弁護士:「たとえば、『【れんほう】2枚目の投票用紙!』のハンドルネームで、タイムラインに立て続けに投稿をしたら、それを認識したうえで多数の目に触れることを狙っての発信と受け止められ、『選挙運動』にあたると解される余地はあるでしょう」

あまりにも不注意で自覚が足りない

とはいえ、本件については「うっかりの度合いは強く、軽率きわまりない」と指摘する。
三葛弁護士:「私がもし投開票日の当日にこのような投稿を見たら、すぐ『これはまずい、消した方がいいですよ』とアドバイスしたはずです。
あくまでも、公職の候補者のアカウントであるという自覚は絶対に必要です。蓮舫氏の投稿は不注意かつ軽率な行為であり、選挙を軽くみていたと言われても仕方ありません。ベテランほど陥りやすいミスですが、気を引き締める必要があります。
今回は選挙運動にあたるとは言いにくいですが、将来、もう1回同じことをしたら、『うっかりしていた』で済まされる余地は狭まり、アウトになる可能性が高いと認識しておくべきです」
結局、今回の蓮舫氏の投稿は「公職選挙法違反には該当しないものの、不適切であり軽率」ということになりそうだ。

とはいえ、本件に限らず、SNS投稿は即時性があり、候補者がナマの見解等をすぐに投稿できるメリットがある一方で、意図せず法律違反を犯してしまうリスクも抱えている。
公職選挙の候補者のSNS運用で注意すべきポイントは何か。
三葛弁護士:「SNS運用を選対メンバーまたは専門のスタッフに委ねる方法、あるいは、本人がアカウントを更新する際にも、選対メンバー等でチェックする方法があります。
しかし、それをあまりに徹底すると、即時に自分の言葉で投稿できるというSNSの効用が失われることは否定できません。現場においては非常に難しい問題です。
少なくとも、投開票日当日は一切投稿しないと決めておくのが一番でしょう。当日の投稿は、効果が多少あるかもしれませんが、それよりも本件のように批判される可能性の方が高く、避けるべきです。
重ねて言いますが、蓮舫氏の行為はあまりにも不注意であり、候補者としての自覚が足りなかったと評さざるを得ません」
公職選挙法を犯して有罪判決が確定すれば、公民権停止の憂き目にあう。また、そうでなくても、単にあいさつをしただけなのに、公職選挙法違反と指摘され、炎上するリスクを抱え込むのは割に合わない。蓮舫氏にとっては、いささかなりともイメージダウンになったのは否めないが、今後の教訓として生かしてもらいたいところだ。


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