7月15日、日本マクドナルドは8月9日から3日間限定でハッピーセット「ポケモン」の購入者に「ポケモンカード」を配布すると予告。
8月7日、日本マクドナルドは転売対策のため、フリマアプリ「メルカリ」との協力を発表。「情報共有を行い、発売前後の注意喚起や権利侵害品対策などの取り組みを実施」すると表明した。
ところがポケモンカード配布当日の8月9日、事前の対策もむなしくフリマサイトへの転売や食品の投棄が続出するなど混乱。日本マクドナルドは同日中にポケモンカード配布の早期終了を発表した。
8月11日、日本マクドナルドが謝罪と今後の対応について声明を発表し「購入数のより厳格な制限」などを提示。続いて14日にも、翌日からのハッピーセット「ポケモン」第2弾の発売を控え、17日までの3日間は「1グループ様1会計、3セットのご購入を上限」とすると発表したが、消費者からは「本気で対策する気があるのか」など批判の声が集まっている。
ハッピーセット高額転売、違法じゃない?
そもそも、ハッピーセットをおまけの転売目的で購入し、高額転売することに法的問題はないのだろうか。法律と市場の関係に詳しい杉山大介弁護士は「業(なりわい)として反復継続して行うなら古物営業の許可が必要になりますが、いわゆる『転売ヤー』は単発の案件に飛びつく素人が多いため、基本的に違法にはなりません」と説明する。「しかし毎度問題になってることを考慮すると、高額転売を連発している人については、見せしめ的にでも摘発しておいた方がよいのではないかとも思います。『業として』の要件を満たすことができれば、違法になってきますので」(同前)
さらに今回のハッピーセット「ポケモン」においては、路上に食品が大量に不法投棄されている様子もSNSで報告された。こうした行為については、廃棄物処理法違反で摘発する余地もあるという。
マクドナルドは「全然問題を理解していない」
日本マクドナルドは11日、14日の声明でいずれも転売対策として「購入数の制限」を打ち出したが、杉山弁護士はこれを「全然問題を理解していない対応」と指摘し、その理由を続ける。「数量が制限されることにより、かえって高額な取引が期待できるので、より多くの転売ヤーが目を付けます。
また、今回求められているのは、食べ物を捨てて付録だけ受け取るような買い方をさせるな、ということです。単に購入制限をするだけでは、数量が少なければ食品を道端に捨ててもよい、というメッセージにもなりかねません」(同前)
では今後、同社がとり得る有効な転売対策にはどのようなものがあるか。
「食べ終わって、その容器を返却するときに初めて付録がもらえるような仕組みは一案です。大手回転ずしチェーンの皿の返却方法などは、それをシステム化できているよい例でしょうね。
それでも転売ヤーは、中身を捨てて容器を持ってくるかもしれませんし、テイクアウトする人にはハッピーセットを売れなくなるという問題もあるかもしれません。
しかし、もはや転売対象になる商品は、手軽に気軽に買わせてはならないところまできているのだと思います。もし付録商法を続けるなら、数量を絞らず大量に出す。数量が絞られるなら、購入までのハードルを上げる。転売ヤーの跋扈(ばっこ)を防ぐには、そのどちらかを選んでしくみを設計していく以外に方法はないと思います」(同前)
現状の対策は「さらに現場のクルーの負担を増やすようなもの」
日本マクドナルドの対応をめぐっては、消費者からも疑問の声が噴出し、反感も広がっている。「ハッピーセットの付録転売はこれまでも問題になっているのに、何ら対策ができていない状態で、むしろ売り上げの増加を期待するかのように付録商法を繰り返して利益を上げようとし、自社の食品をゴミの山とさせた――。
そういう戦略を立てた本部側に問題があるのに、出てきている対策は、さらに現場のクルーの負担を増やすようなものであって、抜本的な解決にはなっていません。
結局、今回の騒動によって、日本マクドナルド内でも『問題の原因を作り出した人たち』が直接的には不利益を受けていないという点が、大きな反感を生んでいると考えます」
また、日本マクドナルドが対策としてメルカリとの連携を打ち出したことも「本質から外れている」という。
「フリマアプリ会社は、転売の上前を収入源として転売市場を確保してきた、いわば『転売ヤーの元締』のような存在です。本来は、仲良く対策を考える相手ではありません。
事前の協定の内容に反して転売行為が行われたのであれば、日本マクドナルドは遺憾の意を表明すべきです。あるいは、そこまで言えるほどの事前合意があったわけではないのなら、フリマアプリ会社との連携という手段には限界があると自覚し、上述したような実効性のある対策を講じるべきです」(同前)
8月16日、東京都内のマクドナルドを訪れると、冒頭の購入制限による混乱は起きていないようだった。メディアも、店舗で混乱が起きていない様子を伝えている。
だがこれを、日本マクドナルドが打ち出した転売対策の効果によるものと考える人が少ないことは、SNS等の反応からも如実に感じられる。同社には、本件を「成功体験」とせず、消費者の本音に真摯に向き合うことが求められているだろう。