「女性セブン」のスクープに激震が走っている。
中居正広氏(53)と元女性アナをめぐるトラブルから、フジテレビ局内の経営陣の人権意識の低さやハラスメントに寛容な風土が次々と明らかにされた第三者委員会の調査報告書。
その中で繰り返し指摘されていたのが「不適切な会合」の存在だ。自局の女子アナにセクハラまがいの行為が横行し、参加を拒めば人事や査定に不利益を被るケースもあったという。
その報告書に「有力番組出演者」として記されていた人物が、福山雅治氏(56)だったと「女性セブンプラス」が18日、配信した。(ライター・中原慶一)

「不適切な会合」は約20年前から

「会合」は2005年前後から年1~2回のペースで開かれ、大多亮(おおた とおる)専務(当時)と、少なくとも19名(退職した者も含む)の女子アナが参加。報告書には、女性アナから「不快な思いをした」という証言や「下ネタ的な発言があった」との指摘も盛り込まれていた。
「『有力番組出演者』については、調査報告書が公開された当初から憶測や予想が飛び交っていましたが、芸能メディアも確信に迫る情報はつかめずにいました。
それが、ここへ来て、この手のスキャンダルとは無縁のクリーンなイメージの福山氏の名前が飛び出したことから、業界内で大きな波紋が広がっています」(スポーツ紙芸能担当記者)
記事によれば、福山氏は第三者委員会のヒアリング要請には「多忙」を理由に断り、書面回答で「女性アナ同席の依頼はしたが性的発言は一切ない」と否定していたという。
しかし、今回、同誌が情報を掴んだことで、70分にわたる同誌の取材に事務所で応じ、「報告書を読んで悩み、考え続けていた。お詫びの仕方を模索していた」心境を吐露したという。
福山氏の今後について、「性加害疑惑」を問われた松本人志氏(61)や引退した中居正広氏(53)、あるいは、「重大なコンプライアンス違反」で活動停止に至ったTOKIOの国分太一氏(50)のように、表舞台から遠ざかるなどの可能性は考えられるのだろうか。
すでに、多くのメディアがその今後について報じているが、あるワイドショー関係者はこう語る。
「堂々と取材に応じた点は評価できますが、無傷では済まされないでしょう。『女子アナ会』が半ば公然の秘密だったことはフジ局内でも有名で、スポンサーや制作サイドは敏感に反応しています。

中居氏問題から始まった一連の調査で名前が出た以上、福山氏の『清潔イメージ』は揺らぐ。今後はドラマやCMのキャスティングにも影響しかねません。5年連続でトリを務めている、年末のNHK紅白歌合戦にも影響が出る可能性は否定できません」

旧時代のコンプライアンスの「ユルさ」を温存

同記事が指摘している「有力番組出演者」に関する記述は次のようなものだ。以下、第三者委の調査報告書から引用する。
〈当該会合に参加した女性社員及び女性アナウンサーからは、会合に参加した番組出演者との仕事が円滑に進んだ旨述べる者や、自身が参加した会合では特段ハラスメント的な言動もなかった旨述べる者がいる。一方で、当該会合における大多氏や当該番組出演者の会話がいわゆる下ネタ的な性的内容を含んだものであった旨述べる者も多数おり、不快であった旨述べる者もいた。〉
〈そのほか、役員らにおいても、たとえば、大多氏は、男性有力番組出演者とともに下ネ夕で盛り上がっていたという。大多氏は、参加した女性アナウンサーらが嫌がっていることは無かった旨の認識を述べるが、不快な思いをしていた旨述べる者もおり、また、客観的にはセクハラが成立し得る状況であり、女性アナウンサーらとしては、その場で苦情を申し立てるわけにもいかず調子を合わせて我慢していただけの可能性もある。〉
「飲み会」は2000年頃から開催されていたというから、かつてのコンプライアンスがユルい時代の出来事であったことは事実だろう。
「下ネタ」の程度がどのレベルのものであったかは預かり知らないが、現在は、こうした「セクハラ的な下ネタ」は社会通念上、到底、許されるものではない。それをよしとしてきたフジテレビの体質も一連の問題の温床となってきたことは否定できない。
福山氏はシンガーソングライター、俳優として一線を走り続けてきたトップスター。また、自身のラジオ番組などでたびたび繰り出す彼の下ネタが、男女問わず人気を得てきたことも事実である。
しかし、そうした彼のキャラも、「フジの暗部」との距離感をどう整理していくかが、今後の芸能活動において避けて通れない課題になりそうだ。

軽い気持ちで発した下ネタで「法的責任」を追及されることも?

今回の件はさておき、芸能人でもない私たちが気になるのは、一般論として、こうした女性(あるいは男性)を不快にさせるセクハラ的な「下ネタ」には、法的責任が発生する可能性があるか否かということだろう。
平たく言えば、たとえば「職場の飲み会」等で口を滑らせて「下ネタ」を発してしまった場合、それが「犯罪」になり得るのか、あるいは民事上の損害賠償請求の対象となり得るのか。
さる法律事務所関係者はこう話す。
「もちろん程度の問題にもよりますが、いわゆる下ネタ発言は民法上の『不法行為』に該当するほか、下ネタ発言を放置した会社にも法的責任が発生する場合があります。
前者は、悪質な下ネタ発言をした行為者に、被害者に精神的苦痛を与えたことについての不法行為が成立し、損害賠償責任を問われる可能性があります(民法709条、710条参照)。
後者については、事業主に労働契約上の安全配慮義務違反(労働契約法5条)、または使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任が発生する可能性があります。
『飲み会』の席でなくても、ふだんの業務中に下ネタ発言を行った場合も同様です。また、職場に18歳以下の人がいた場合、下ネタのやりとり自体が、都道府県の青少年保護育成条例違反となる可能性もあります」
なお、男女雇用機会均等法11条1項は、以下のように、事業主に対し、厳しい義務を課している。
「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」
個々の裁判例などの詳細はここでは省くが、職場で冗談のつもりで下ネタを飛ばしたりしていると、後に特大のしっぺ返しが来る可能性があることを、心得ておいたほうがよさそうだ。あるいは、フジテレビの例を見るまでもなく、職場としてそれを放置していた場合には、事業主が法的責任を問われる可能性もある。
まさに下ネタは「物言えば唇寒し」そのもの。
セクハラに直結する可能性は高いので、十分、注意しておきたい。


■ 中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。


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