クマに襲われケガ「見舞金」は出る? ランニング中の被害も発生…“人身事故”増加で日常が脅かされる中「補償制度」の現状は
秋田県北秋田市でランニング中だった60代の男性がクマに襲われ、顔にケガをした。報道によれば、24日午後4時20分ごろ、同市県道で、顔面から流血する男性を通行人が見つけ、消防に通報したという。
付近では7月末にも70代女性がクマに襲われている。
ネット上では、「もう普段の生活さえ脅かされている」と夏の夕方のランニング中の事故に不安を募らせる声や、秋田県民という人の「頻繁にクマを見かけるが通報しない人もおり、報道されている以上にクマが町に進出していると思う」といったコメントが寄せられていた。

2025年のクマ出没の傾向

専門職員を採用し、クマ対策に取り組む秋田県生活環境部自然保護課は、2025年のクマ出没傾向として、次のように予測し、注意を促している。
「今年度は春からクマの出没が多発しており、遭遇リスクが高い状態が継続していますが、この傾向は今後も続くことが予想されます。
また、今年度は小屋等への侵入、ニワトリや登熟前の農作物への食害、クマとの交通事故の多発など、令和5年度と類似した状況も各地で確認されています。
さらに、ブナの実が極めて少ない『大凶作』も予測されており、クマの行動範囲の拡大が懸念されます。
これらの状況から、今年度は令和5年度のような大量出没になるおそれがあります。季節を問わず、いつでも・どこでも・誰でもクマに会う可能性があります。基本の対策を徹底し、最高レベルの注意を払ってください」
2023年は秋田県で3663件のツキノワグマ出没があり、特に10月に突出して出没件数が増加した。その時と類似しているということから推察すると、これから2か月は要注意の時期といえる。
そうした中、60代男性が襲われた北秋田市もコースに入っている「秋田100キロチャレンジマラソン」が9月28日に開催を予定している。時期的に中止を不安視する声もあったが25日、同大会の公式Xは、「ランナーの皆さんへ」として、次のようなポストを投稿した。
ランナーの皆さんへ

北秋田市でランニング中の人が熊に襲われています。


大会まで1ヶ月程となり練習にも力が入っていると思います。走る場所にもよりますが「熊対策」は充分にして練習してください。

複数人での練習や、人の多い場所等も対策になると思います。#秋田100キロ
秋田100キロチャレンジマラソン(公式) (@akita100km) August 25, 2025
「北秋田市でランニング中の人が熊に襲われています。
大会まで1ヶ月程となり練習にも力が入っていると思います。走る場所にもよりますが『熊対策』は充分にして練習してください。
複数人での練習や、人の多い場所等も対策になると思います」
いまのところ大会は予定通り開催される見通しのようだが、過去には、クマの目撃情報頻発などで、中止となったマラソン大会もある。加えて、秋田県は8月に記録的大雨に見舞われ、コース沿線に避難指示が出たエリアもある。今後の状況次第では、予断を許さないといえるだろう。

クマ襲撃被害が起きた場合、責任の所在は法的にどうなる?

2025年は秋田県の注意喚起にもあるように「季節を問わず、いつでも・どこでも・誰でもクマに会う可能性がある」という危険な年。不幸にも、日常の生活の中などで、熊による襲撃被害にあった場合、法的に補償を受けられる公的な制度等はあるのか。
残念ながら、クマなどの野生動物による被害を直接的に補償する法律はないのが現状だ。ただし、自治体によっては、被害対象を絞るなどで、動物被害に対する補償をするケースもある。

たとえば兵庫県は、JAグループ兵庫の支援の下、兵庫県農業共済組合と連携し、野生動物(シカ・イノシシ)による農業被害にあった農家に補償金を支払う事業を実施している。
クマによる人身被害も多い秋田県は、野生鳥獣による人身被害を受けた県民に、見舞金を給付している。人身被害は1件につき10万円、重度被害は1件につき20万円、死亡の場合は1件につき30万円だ。
給付対象となるのは、以下の6つの要件をすべて満たす場合だ。
(1)秋田県内で発生した事故による被害であること
(2)被害者が秋田県民であること
(3)2024年4月以降のクマによる事故であること
(4)森林地域外での事故であること
(5)突発的で予知できない直接的な打撃やかみつきによる事故であること(30日以上の治療を用するもの)
(6)県がクマの事故と確認していること
この要件からわかるように、クマに襲われて補償されるのは原則、「予測できない状況」で発生した場合。だからこそ、いつどこでもクマに会う可能性がある現状で、あえてリスクを負ってでもイベント等に出向くなら、それなりの覚悟は必要だ。

クマ被害防ぐ基本の対策


クマ情報をマップ化し公開・メール配信するクマダス(秋田県公式サイト「美の国あきたネット」より)

秋田県自然保護課が公開しているクマによる事故を防ぐ【基本対策】のうち、日常で役立ちそうなものは次の通り。
  • 鈴やラジオ、スマホなどで音を立てて、人の存在をアピールしながら行動し、クマとの鉢合わせを避ける
  • クマを目撃したときは、市町村や警察に連絡するとともに、クマダス(※)を活用するなど地域で情報共有する
  • 車庫や物置の扉は普段から閉めておく(クマが侵入する可能性がある)
  • もし小屋等に侵入された場合は居座りの有無にかかわらず、速やかに市町村や警察に連絡する(小屋への侵入を放置すると、最終的に家屋への侵入に発展するおそれがあるため、迅速な捕獲等の対応が必要)
※クマの目撃情報や人身事故情報をマップ化して公開・メールで配信するシステム
クマによる被害が連日報道され、世論では駆除に対する極度の否定的論調も影を潜めつつある。だからといって、大量に駆除すれば「万事オッケー」では決してない。
むしろ、誰もがいつ被害にあうかわからない現状を自覚し、同時に自衛の意識を高める。リスクと背中合わせの状況のなかで、いかに“共存”の道を模索していくかが、増え続けるクマ問題との向き合い方といえるのかもしれない。
◇秋田県自然保護課の「ツキノワグマ情報」:https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/23295


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