フジテレビの第三者委員会で報告された「不適切会合」に福山氏が出席していたとあって、ネット上は一時騒然となった。
しかし第三者委員会の報告書では、福山氏の実名は明かされておらず、黙っていることもできたはずだ。あえて週刊誌の取材に応えたことについて、危機管理に詳しい弁護士に話を聞いた。
フジテレビの「不適切な会合」とは?
中居正広氏の女性トラブルに端を発した「フジテレビ問題」をめぐり、公表されたフジテレビ第三者委員会の調査報告書。この中で繰り返し指摘されたのが、フジテレビが開いていた「取引先との不適切な会合」の存在だ。〈社長の隣に女性社員が座らされ、お酌をさせられる、女性アナウンサーが浴衣を着て参加するよう社内で指示されるなど、女性社員・女性アナウンサーが接待要員として同席させられたとしか評価できない会合が報告されている。〉(第三者委員会報告書より。以下、〈〉内同)
不参加を申し出た社員に対しては、上司から「ボーナス査定に影響する」と示唆されたり、役員から「席があると思うな」と発言されたりする例もあったという。
こうした会合のひとつを開いた人物として名指しされたのが、大多亮氏(元専務取締役)だった。大多氏の“会合”について、報告書は以下のように詳述している。
〈懇意にしている特定の男性有力番組出演者との会合に女性アナウンサーや女性社員を同席させていた事実が確認された。当該会合は遅くとも2005年前頃から年に1~2回程度開催されており、少なくとも19名の女性アナウンサー(退職した者も含む)が参加している〉
〈会合に参加した女性社員及び女性アナウンサーからは、会合に参加した番組出演者との仕事が円滑に進んだ旨述べる者や、自身が参加した会合では特段ハラスメント的な言動もなかった旨述べる者がいる。一方で、当該会合における大多氏や当該番組出演者の会話がいわゆる下ネタ的な性的内容を含んだものであった旨述べる者も多数おり、不快であった旨述べる者もいた〉
局内では大多氏と懇意にしている「男性有力番組出演者」が、『ひとつ屋根の下』や『ガリレオ』シリーズで長きにわたってタッグを組んでいた福山氏を指していることは周知の事実だったそうだ。
女性セブンが福山氏に質問状を送付すると、福山氏本人が「自分の言葉でお伝えします」と言い、対面取材が設けられたという。
なぜ福山氏は取材を受けたのか
なぜ福山氏は「黙っていること」よりも「取材を受けること」を選んだのだろうか。そして所属事務所も、なぜ福山氏の判断を許したのか。局内では周知の事実だったとしても、一般的には「女性セブン」のスクープが寝耳に水だったという人が多いだろう。
この福山氏と事務所の判断について、元特捜検事で企業等の危機管理に精通する日笠真木哉弁護士は、福山氏側の“計算”があった可能性を指摘する。
「今回の報道内容は、危機管理の観点から考えても、福山氏にとって大きな“リスク”ではありません。過去の飲み会の『下ネタ』で不快になった人がいるという問題は、たとえば中居氏や松本人志氏のトラブルとは根本的に異なります。
福山氏はラジオ番組でも下ネタを口にしており、世間も『あの福山さんに限って』とは受け止めない。実際のところ、福山氏が取材に答えず記事が出ていたとしても、社会の反応は大きく変わらなかったと思います」
だからこそ福山氏が取材に応える“判断”ができたというのが、日笠弁護士の見立てだ。
「これが仮に、一人の女性を執拗に誘っていたとか、既婚者でありながらホテルに誘ったという報道であれば、取材には応じなかったはずです。答えても答えなくてもリスクが大きく変わらない今回のケースでは、取材に好意的に応じることがむしろブランドイメージの向上につながる。そうした計算のもとでの判断だったと考えられます」(日笠弁護士)
福山氏は「女性セブン」の取材に対し、自身の発言で不快な思いをしていた人がいたことや、局内で人事やキャスティングに影響を与える有力人物だと感じられていたことについて「想像だにしていませんでした」と述べ、参加者らに陳謝している。
取材に答えて鎮静化は“レアケース”
8月末には、デビュー35周年の全国ドームツアーを無事に開幕させた福山氏。「有力番組出演者が福山氏だった」と報道された当初は大きな騒ぎとなったが、現在は批判もほとんど聞かれず、炎上の鎮静化に成功したと言えるだろう。
日笠弁護士は「結果論として、今回は取材に応じたから炎上が収まった可能性はある」としつつも、トラブルの“当事者”がむやみに取材に応じたり、会見を開いたりすることはリスクが大きいと話す。
「行政機関や上場企業は説明責任があるため別ですが、特に加害者とされる側が会見を開いたり、取材に答えたりすることは、何を言っても叩かれる“炎上状態”に薪をくべるようなもので、効果的な対応とは言えません。今回の福山氏の騒動はかなりのレアケースと考えておいたほうが良いと思います」(日笠弁護士)