
警察庁が4日に公表した「自転車ルールブック」をもとに、とくに、検挙された場合の流れや注意すべき違反行為について解説する。
これまでの自転車の検挙事例
自転車が交通違反で検挙されることはこれまでもあった。たとえば、酒酔い運転、酒気帯び運転、妨害運転(いわゆる「あおり運転」)、携帯電話使用等(交通の危険)だ。こうした違反に対しては、悪質で重大な危険をもたらすとして、「赤切符」が交付され、刑事手続きによる処理が行われていた。すなわち、警察による捜査⇒検察官への送致⇒検察官による起訴・不起訴の判断⇒(起訴された場合)裁判⇒判決という手順を踏むことになる。有罪となれば「前科」が付く。
ただ、これでは違反者と警察双方にとって時間的・手続き的な負担が大きい。また検察に送致されても不起訴となるケースも多く、違反者に対する責任追及が不十分であるとの指摘もあった。
青切符制度に潜む別の思惑
そこで赤切符に加え、新たに導入されるのが青切符制度だ。運転者が反則行為(比較的軽微な道路交通法違反行為)をした場合、一定期間内に反則金を納めると、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けないで事件が処理されるという制度で、赤切符のような時間的・手続き的な負担が少ない。すでに自動車では、「ネズミ捕り」(交通取締り)と称し、スピード違反など軽微な違反については青切符で対処することで警察の負担を減らしつつ、違反者に対する抑止力は保ち、かつ必要以上に前科者を出すことを抑制する”折衷案”として定着している。
この仕組みを自転車にスライドさせた形だ。
導入の背景には、近年の自転車関連の交通事故情勢の厳しさもある。警察庁のデータによると、自転車と自動車の事故は直近4年でも年間約5万件発生。
さらに、自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、約4分の3で自転車側に法令違反があることがわかっており、警察も関連の事故を減らすため、取り締まりを強化しているのだ。
基本は「指導警告」だが、「一発アウト」の反則行為も
青切符の対象となる主な反則行為は、携帯電話使用等(保持)、信号無視、歩道走行などがあり、反則金は3000円~1万2000円となっている。これらについては、原則、いきなり検挙とはならず、まずは指導警告がなされる。素直に従えば、おとがめはない。改正法施行後で注意すべきは、違反行為自体が悪質で危険なもの、または違反が招いた結果や行われ方が悪質で危険な場合だ。それらは即座に検挙の対象となる。これまでのように、道路秩序を乱す身勝手な走行は厳しく罰せられ、許されなくなる。
たとえば、ながらスマホ運転(通話、画面注視)、ブレーキのない自転車・ブレーキが故障した自転車を運転する行為、遮断機の下りた踏切への進入、スピードを出して歩道を通行し、歩行者を驚かせたり立ち止まらせたりする行為、信号無視で交差点に進入し、他の車両に急ブレーキをかけさせる行為などだ。
同時に複数の違反行為を行った場合(例:二人乗りをしながら赤信号を無視)や、警察官の指導警告に従わずに違反を継続した場合も即座に青切符の対象となる。
検挙された後の手続きは?
いわゆる青切符と納付書(警察庁『自転車ルールブック』より)
では、青切符対象の反則行為で検挙された場合、どうなるのか。手順は以下の通りだ。
1.青切符の交付
警察官が違反現場で違反者を呼び止め、違反の事実などを記載した「交通反則告知書」(青切符)と、反則金を納付するための「納付書」が交付される。
2.反則金の仮納付
違反者は、告知を受けた日の翌日から原則7日以内に、指定された銀行や郵便局の窓口で反則金を仮納付することができる。
3.反則金の納付(仮納付しなかった場合)
仮納付しなかった場合は、青切符に記載された指定の期日に交通反則通告センターに出頭し、反則金の通告書と納付書の交付を受ける。通告を受けた翌日から原則10日以内に記載された金額を納付すれば、刑事手続きに移行せず、起訴はない。
青切符を拒否した場合どうなる?
なかには「お金を払いたくない!」と、青切符の交付を受けても反則金の支払いを拒否する人もいるかもしれない。その場合はどうなるのか。事件は刑事手続きに移行することになる。
検察庁に送致され、その結果、起訴されると多くの場合、有罪となり前科が付く。反則金の納付書が自宅に郵送された場合でも、これを納付しなかったときは、青切符の受け取りを拒否したときと同様に刑事裁判の手続きがとられる。
自転車の違反行為で最悪のペナルティ
このように、これまでなら見逃されていたような違反行為が2026年4月以降、厳しく取り締まられる。悪質な場合は「前科」が付く可能性もあることを考えると、自転車といえど安全運転がいかに重要かがわかるだろう。さすがに運転免許の点数が付されることはないが、最悪のケースでは免停になる可能性はある。公安委員会が、自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認めるときだ。
具体的には、運転免許を有している者が、自転車でひき逃げ事件や死亡事故等の重大な交通事故を起こした場合や、酒酔い運転・酒気帯び運転をはじめとする特に悪質・危険な違反を犯した場合だ。
2024年12月には、北信越エリアで自転車の酒気帯び運転で検挙された男性が6か月未満の免許停止の行政処分を受けている。「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな」は、もはやクルマだけの話ではない。